| :: MENU :: | |||||
| 1 プロローグ | 2 初舞台だぜ! | 3 涙と笑顔 | 4 速攻ゲット | 5 ルームメイト | 6 告白 |
| 7 訪問者 |
8 再会 |
9 2番目同士 |
10 涙のわけはいつも |
11ホスト |
12 復活 |
1エピローグ | | |||||
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その日の夜、佳織ちゃんはオレを指名してくれた。 「今朝はごめんね。かなり恥ずかしい所見られちゃった」 エヘヘと、佳織ちゃんはブラウンに塗れた唇から小さな舌をのぞかせた。 あんなに悲しみにうちひしがれていたのに、また、強がりをしているのだ ろうか? 彼女は、もう平気と言わんばかりに、笑顔を見せる。 「……気にしてないよ」 それ以上、どう言葉にすればいいのかわからなかった。 深くつっこんでも悪いだろうし、軽くかわしてしまうような事でもなさ そうだし…。 「良かった!」 少し緊張していたのだろうか、彼女は安堵のため息をついた。 全然、そんな素振りも感じなかったし、状況判断からして、強がりだろう と思っていただけだったけど、このため息で、わかった。 彼女は、ホントに強がってるだけなんだと。 それにしても、その笑顔にはかなり騙されそうだ。 「なあ、今日店終わったら、会わない?」 もっと、彼女を知りたい。 色々な事をすべて笑顔で隠してしまう、そんな彼女の力になってあげたい。 なのに、彼女はあっさりと断った。 「ごめんね、店以外でホストには会いたくないの…。 ほら、私ってばおバカさんだから、すぐに勘違いしちゃうのよ。 そうならない為にも、店外では会わない方がいいと思って」 営業と、プライベートの区別がつかなくなるって意味なんだろうか? とりあえず、あんまり深く関わりたくないって事だけはわかった。 「じゃあ、今日はとことん飲みますか?」 「うん!」 彼女は満足そうに大きくうなずいた。 一時だけでも、彼女がイヤな事を忘れられるなら、オレはどんな協力だっ てしよう。 店内で出来ることなんて、タカがしれてる。 その分、たくさん彼女をホントの笑顔でよろこばせてあげたい。 おれは、このとき、自分の営業方法を見つけたのかもしれない。 別に、恋愛関係にならなくても、男と女は一緒に楽しみを感じる事ができ る。 特に恋愛に疲れた時なんかは異性の友達の方が、相談しやすいみたいだ。 だから、オレは常にそうあるように接客するようになっていった。 「はぁ、終わった!!」 また、チェンジがイベントで踊れるようになっていた。 けれど、結果は同じ。 笑われておしまい。 みんな真剣にしているのにそれでもミスを連発して、ソレが客に受け ている。 ある意味、すごい人気あるみたいなのはわかるけど、踊ってる本人とし ては、かなり複雑だった。 まるで、漫才やコンサートなんかの前座みたいに、チェンジの次のチーム が踊り出すと、客達は、一様に真剣に見つめている。 「やっぱり、ミクロは凄いよなぁ」 同じ事を思ったのか、健児がミクロのダンスを見ながら、つぶやいてる。 「こいつら、2年くらいでこの人気だぜ? チェンジはオレが入る前からやってるからもう、4年くらいかな?それな のに、今だにコミックダンス(ある意味)チームだもんなぁ」 「他のチームはあんまり気にしないようにしよう」 そう言いながらも俺自身、ミクロのパフォーマンスから目が離れなかった。 素早い動きに、リズミカルな揺れ。 何処を取っても、完璧に魅せるダンス。 「そうだよなぁ。見れば見るだけ、落ち込みそうだよな。さっさと打ち上 げに行こうか!」 舞台裏から、フロアに出ると今日も佳織ちゃんは来ていた。 みんなが舞台に注目してる中、彼女とその友達だけはビールを片手に談笑 していた。 「あっ!二人組。今日も来てたんだ」 「声かけてくれば?」 「なんて?!」 「打ち上げだけど、一緒にどうですか?って」 半分冗談で、少し期待混じりに言った。 佳織ちゃんと、店以外で会ってみたいと思っていたから……。 健児は向こう見ずなのか、その場にいた他のメンバーの拓人を連れて、 本当にナンパしに行ってしまった。 マジかよ?! どうせ、シカトされるだけだろ? 遠巻きに見ていたおれの予想を反して、佳織ちゃんは笑顔を見せた。 「ホントに?じゃあ、早速行こう!!」 拓人は佳織ちゃんの手をつなぎ、フロアを後にした。 ナンパはよくてホストはダメって、なぜだ?! 複雑な気持ちのまま、オレは健児たちより遅れて打ち上げ会場の居酒屋に 入った。 「あれ、直樹くん?」 佳織ちゃんはオレに気がつくと、不思議そうな顔をしていた。 「うん。チェンジのメンバーなんだ」 「へえ、そう。」 別に、興味なさそうに彼女はうなずいた。 なぜだろう、胸がチクリと痛い。 「佳織ちゃん!直樹の知り合いだったの?」 拓人が、少し拗ねたような表情で佳織ちゃんに詰め寄る。 「う〜ん、知り合いってか顔見知り程度かな? 何?気になるの?」 店で見るような作り笑顔じゃなく、そしてもちろん泣き顔でもない彼女 の表情。 こんな女の顔は、店でたくさん見て来た。 駆け引き開始の顔だ。 男と女の、駆け引き。 「気になるだろ、普通」 拓人は見事に佳織ちゃんの駆け引きにはまるのだろうか? 面白そう。 「じゃあ、私も気になる!拓人くんはどこに住んでるの?」 二人は、お互いに自己紹介を始めた。 オチるのは時間の問題に見えた。 地方から出てきてダンスばかりの毎日で、女の子と喋る機会もほとんど ない拓人に、ずっと都会にいて夜の仕事、恋愛の駆け引きを仕事にして いる彼女が、拓人ごとき落とすのにそうかかるとは思えない。 おれの予想通りに拓人は一件目の居酒屋を出る頃には、すっかり佳織ち ゃんの側から離れようとしなかった。 「佳織ちゃんって、彼氏いるの? いなかったら、オレとつき合ってよ」 あまりに急展開な発言に、聞いてたオレの方が驚いてしまった。 会って、即日かよ?? 佳織ちゃんがどう返事をするか、オレはドキドキしながら二人の会話に 注意を払ってしまう。 「……彼氏はいないけど、好きな男はいるよ。それでもいいならつき 合うよ♪」 好きな男がいるなら、他の男とつき合ったりしないだろ? ああ、それなのに拓人のヤツは舞い上がってしまっている…。 「マジっすか? うわ!うれしい!コッチ来てからの初の彼女じゃん!しかもこんなにかわ いいし」 鼻の下を伸ばしきって、よろこんでいる。 自分以外の男を好きだという彼女ができて、うれしいのか? おいっ! 違うだろ? なんか、ムカムカする。 なんで、そんなに簡単なんだよ? だいたいつき合うって、全然お互いの事とか知らないんじゃないのかっ? 「あはは!そうなんだ? 私も1週間ブリの彼氏だ!」 オレのいらだちも知らない佳織ちゃんは、ニコニコと拓人の腕に自分の腕 を絡める。 「え?1週間前まで彼氏いたの?」 「うん、ミクロって知ってる?今日チェンジの後に踊ってたチームなんだ けど、そのメンバーとつき合ってたの」 ……サイクル、早くないかい?佳織ちゃん。 しかもミクロのメンバーっって、みんなすごくダンスも上手いし、オシャ レな男揃い。 その後に、拓人かよ? 別れて1週間で新しい男作るのかよ? 今日会ったばかりの男と、そんな簡単につき合ってもいいのかよ? かなり、ソレってやばいだろ? いくつもの、嫉妬に似た疑問がオレの頭に浮かんでは居着いてしまう。 「へぇ、ミクロのメンバーとつき合ってたんだ?もしかして、佳織ちゃん ってダンサーが好きとか?」 「まっさか!別に好きとか嫌いとかって関係ないよ。ただなんとなく気が あったからつき合ってただけだもん」 「そうなんだぁ」 暢気な会話してんじゃねぇっよ! ソレって、拓人ともなんとなくつき合う事になったって言ってるようなモ ンだろ? 納得してどうするよ! ああ、ダメだ。 なんか、完全にオレ、ヤバクない? まるで、拓人に嫉妬してるみたいな気がしてきた…。 あり得ない。 拓人に嫉妬するって事は、佳織ちゃんを好きって意味だよな? あり得ない。 あってはいけない。 ………。 なぜなら、オレは恋愛をするために上京して来たわけでも、ホストになる ために上京してきたわけでもないんだ。 それに、もう恋愛なんて懲り懲りなんだ。 元嫁だって、つき合いだした頃や新婚当初はかわいい女だった。 なのに、あんなに経済感覚がズレていて、あげくにオレの稼ぎが悪いから と毎日毎晩ケンカにするようになってしまった。 女なんて、結婚してしまうと変わってしまう。 もう、女なんて当分いらない。 自分を言い聞かすように、オレは何度も頭の中で否定した。 佳織ちゃんの存在を、女として認めている事実に……。 「おはよう、直樹。オレ今日から寮出る事にしたんだ」 昼頃騒がしさに目が覚めると、荷造りをしている克と目があった。 最近指名が順調に増えていて、いずれは自分で部屋を借りるだろうと言 っていたけど、まさかこんなすぐとは思っていなかった。 「そっか、どこに引っ越すの?淋しくなるよな…」 「…この近くだよ」 何か歯切れ悪そうに、籠もった言い方をする克。 別に、言いたくなければ言わなくてもいい。 「また、一緒に飯でも食おうな」 「……ああ」 ま、別に寮を出たからって2度と会えないわけじゃないし、そんな深く考 える必要もないだろうに、克の様子は明らかにどこかおかしかった。 オレと、目を合わさない。 それに、はっきりと返事をしない。 なぜ? その疑問は出勤するとすぐにわかった。 「克が辞めた?」 「ああ、多分違う店に行ったと思うけど?」 淡々と先輩ホストはそう言うと、さっさと掃除を始めてしまった。 なぜ? レギュラー出勤していて本職なのに、そんな簡単に辞めたりしていいの か? そりゃ、辞表とかは書かないだろうと思うけど、そんな簡単でいいのかよ? それになんでひと言もなく、辞めるんだよ? 今朝のが別れだったのか? 酷く、裏切られた気分になってしまう。 「この業界で、まともに友達を作ろうなんて考えが甘いんだよ。みんな隙 があれば、誰の客でも平気で取るんだよ! 甘い考えはいい加減捨てろよ」 落ち込んでいる所に、塩をすり込むような発言を平気でしてくれるのは、 京介さんしかいない……。 「あなたはじゃあ、友達はいないのか?」 「バカか、お前?友達はいるよ。でも、利害関係・金銭が絡むような関係 にあるヤツとまともにツレになれるかって言ってんだよ。 いつ寝首をかかれるかわからないような人間を友達だなんて思えないね、 オレは」 …………利害関係。 でも、オレは克の客を取ろうなんて思った事は一度もないぞ。 「人の客なんて取ったって、そんなすぐに指名替えするような客なら、自 分だってすぐに変更されるもんだろ?そんな無駄な努力してまで、交友関 係にヒビを入れたいなんてオレは思わない」 「…そうだよな。コロコロ指名変えるヤツは誰を指名しても同じだよ。 でも、克は自分以外に変更しないような方法で他のホストの客を奪ったん だよ。だからルージュにいづらくなっただけだ」 指名変更をしない方法? そんな方法があったら、オレだって知りたい。 「一体、克は何をした?」 オレの問いかけに、京介さんはため息を一つついた。 「別に普通だよ。枕営業。 ただし!今まで指名してるホストに相手にされなかったような客を狙って ね。 バカだよなぁ、なんで指名されてたホストが枕しなかったか考えれば簡単 に答えがわかるのに」 そう言うと、京介さんは意地悪そうに唇のハシだけをあげて、笑った。 まるで、克のやった行為が無駄になるみたいな口ぶり。 ………自分で考えろって意味だよな。 なんで、今までのホストが枕営業しなかったか……。 ………。 ………。 結論、そんな事、わかんねぇよ! だいたい、なんで京介さんはオレをいじるんだろう? イヤなら話しかけなければいいのに。 その夜、佳織ちゃんが店に来た。 「こんばんは!!」 夜中の2時半。 仕事が終わって、どこかで飲んでから来たのだろう、かなり酔っている様 子。 しかも、一緒に和美ちゃん(いつも一緒にいた片割れ)も連れて来ていた。 「ホントに、ホストしてたんだ?」 和美ちゃんはこないだ居酒屋で一緒だった時、オレがホストしてるって言っても、 なぜか全然信用してくれてなかった。 「ああ、この前も言ったじゃんか」 「でも、なんかこうホストって雰囲気がないんだよねぇ」 どんな雰囲気だよ?! と、つっこみたい気持ちを抑えた。 「佳織ちゃんこんなトコ飲みに来て、拓人に怒られないの?」 この一言がどうやら今日の禁句だったらしく、和美ちゃんは大きなため 息をついた。 「客のプライベートは聞かないのが、ルールでしょ?」 え? 「あはは!フラレちゃったのよ、私」 佳織ちゃんはクスクスと笑いながら、言う。 「え?マジで?」 だって付き合いだしてから、まだ1週間も過ぎていないぞ? かなり展開早いじゃないか……。 「なんで?理由は聞いたの? 拓人って、そんな男じゃないと思ってたのに」 なんか今日は、裏切られてばっかりだな。 克といい、拓人といい。 「ああ、違う違う!多分拓人くんは悪くないと思うよ」 和美ちゃんは、まどろっこしそうに佳織ちゃんを見た。 「はいはい、私が悪いんだよね! さっきから説教ばかりされてるんだよ、私。 かわいそうだよねぇ、男にフられて、あげく友達には説教って」 確かに失恋したってのに、そんなに悲しそうには見えないけど……。 「当たり前でしょ。拓人くんが実は以前から佳織を狙っていたって愛の告 白をしたのに、この女は笑い飛ばしたりするし、仕事のせいでデートだっ て出来ない状態ばかり。 普通つき合いだしって、ラブラブな時期でしょ?それなのに、別に今しな くてもいいような同伴をしたりして、全然時間を作ろうとしないんだよ。 いくら拓人くんでも、もう要らないって考えて当たり前でしょ」 仕事で、デートができないのは仕方ないんじゃないだろうか? それに拓人だって働いてるんだから、それくらいはわかるだろう? オレは、言葉に表せない感情に弄ばれていた。 拓人に対してすごく、むかつく。 彼女の仕事を納得してつき合ったんなら、最後まで理解してやるべきじゃ ないのか? それに1週間くらい会えなくても、平気だろ? 学生じゃないんだから、時間のすれ違いなんて当たり前なんだし。 でも、このイライラした、モヤモヤした気持ちはすぐに収まってしまった。 数日後に、佳織ちゃんにはまた新しい彼氏ができたからだ。 どこのどんなヤツか知らないけど、佳織ちゃんが楽しそうに電話で話して る姿を見た。 そしてまた失恋して、また新しい彼氏を作るの繰り返しをオレは3ヶ月 の間に何度も見た。 まるでバレーのローテーションよろしく、かなり効率よく彼女には男がで きる。 そのたび、オレはキリキリと胸が痛かった。 それなのに、彼女の中ではオレはホストとしてしか存在してなくて、平気 でオレにどうせすぐ別れるだろう男の恋愛相談をしてくる。 別れた後はやけ酒を飲んで、すごく酔って帰る。 どうして、彼女はそんな生活を続けているんだろうか? オレには、皆目検討もつかない。 直樹の人気はほとんど上がらない(;^_^A アセアセ… 勇哉と隆史の人気と比較するとすっごい悲しい事になっているの クリスマスまでには、少しでも人気が追いつけばいいんだけど・・・。 定期連載じゃないからかな?それともただ魅力がないだけ?? あぁ、がんばれ直樹!! |