コットンボーイ
コットンボーイ

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1 プロローグ 2 初舞台だぜ! 3 涙と笑顔 4 速攻ゲット 5 ルームメイト 6 告白
7 訪問者 8 再会 9 2番目同士 10 涙のわけはいつも 11ホスト 12 復活 1エピローグ

●●●
6 告白

 オレの腕の中で、彼女は乱れるわけでもなく、ただ抱かれていた。
終わるのを待っているだけのように、演技丸出しの態度で、冷静なまま。

 抱いてるオレの方が虚しくなるような、そんな感覚にとらわれながらも、
彼女を抱きしめた。
気が付くと、彼女の瞳からは涙がこぼれている。
男に組み敷かれながら、泣き続ける女ってのは、初めて見た。
何があったのだろうか?
何が、彼女にこんな態度を取らせたのだろう。

 顔を会わせたくなかったのか、その日彼女はオレが起きる前に部屋を出
ていた。
なんだかすごい罪悪感だけが残っている。
もちろん誘ってきたのは佳織ちゃんだったけれど、挑発に乗ってしまった
オレが悪い。
 せっかく一緒に住むようになって、少しだけどホストと客の距離から友
達へと縮んだと思っていたのに、何をやってるんだかなぁ。
はぁ。
 オレって、バカかも。
憂鬱な気分のまま出勤しても、やっぱりまともに接客なんかできずに、マ
スターに呼び出され怒られてばかりだった。
 やってらんねぇ!
絶対オレ的仏滅だぜ、今日。
注意も終わって、ロッカールームから出ると、来店してきたばかりの客と
ぶつかった。
「わっ、ビックリした」
その声は、よく知ってる佳織ちゃん声。
 オレの方がビックリだよっ!
なんで店に来るんだ?
顔を会わせたくないんじゃないのか?
「直樹だったんだ?
昨日のお礼に来たよ、今日から直樹の客になるからよろしく!」
ニコニコと何事もなかったように笑顔で、さっさとテーブルに着くと、勝
手にボーイにボトルを注文している。
「………いらっしゃいませ」
わからない、ちっともわからない。
彼女の考えも、行動も意味不明だ。
「なんであんな所から出て来たの?
驚いちゃったじゃない」
驚いたのはコッチの方だ。
どの面下げて、会いに来たんだよ、ったく。
オレは彼女のせいで悩んでたってのに。
「………」
黙るオレに、彼女の笑顔が一瞬消えて、何かを言いかけたとたんに、ボト
ルコールが炸裂した。
「ニューボトル入りまぁす」
大声でコールされながら、登場したのはカミュバカラ。
 もちろんブランデー自体いいものなんだけど、入れ物のバカラデカンタ
ーがとても綺麗なボトル。定価は知らないけれど、この店では8万円の代
物だ。
「こんな高いボトル下ろさなくていいのに」
昨日の詫びのつもりなんだろうか?
いつも彼女が飲んでる3万円のコルンドンブルーと違って、ブランデー独
特の香りのする酒だ。
元々ビールや焼酎が好きみたいなのに、わざわざオレのためにおろしてく
れたんだろう。
「昨日はごめんなさい。酔ってた勢いって事で忘れて欲しいの」
…………。
そのタメに、このボトルっすか?
金銭感覚ずれちゃいねぇか?
「それは別にいいけど………」
なんだか圧倒されてしまう。
グチグチ悩んでたオレの方がバカみたいに女々しくて、彼女の方が何だか
さっぱりと割り切った表情で水割りを手に掲げた。
「じゃあ、仲直りの乾杯しよ」
言われるままに、乾杯。
初めてオレ指名のオレの客がおろしたボトルなのに、素直に喜べない自分
がいる。
昨日佳織ちゃんを抱いた代金なのか?
コレが、ホストの枕営業ってやつなのか?
よくわからないけれど、いい思いばっかりさせてもらってる気になる。
 ホストっていい仕事だよな。
女抱いて、金払ってもらって。
楽に稼げるじゃん。
 だけど、どこか淋しい。
別に、ボトルをおろしてもらいたくて抱いたわけじゃないのに………。
「へぇ、珍しいボトル入れたじゃん、佳織」
マスターはさっきまでオレを怒っていたのに、もうホストの表情で笑顔を
作って席に着いた。
「ま、ね!ルージュでの初指名記念で特別♪ブランデー好きじゃないから、
そんなにいいのおろしたくないんだよね、ホントは」
そうだ、彼女は自分は滅多にブランデーを飲まないのにコルドンブルーを
下ろしている。
 他にもVSOPとかもっと値段の低いボトルがあるにもかかわらず。
 なんでだろう?
見栄?
でも、見栄のタメにそこまで無駄金払えないよな、3回に1度の割合でボ
トルは下ろすペースなんだから………。
「じゃあ、今日はご機嫌なんだ?」
マスターの質問に、佳織ちゃんは曖昧に笑顔で答えている。
「えへへ」
なぜだろう。
ココは、女の子がストレスを発散させるためにある場所なのに、彼女はい
つも気を遣っていた気がする。
別にホストを口説くわけでもないし、一体、何が目的なんだろうか?
 2時間くらい飲むと彼女は帰ってしまった。
今日のオレの売り上げは過去最高。って全部佳織ちゃんのおかげなんだけ
ど………。

  「ただいま」
ガチャリとドアを開けて、真っ暗な部屋に足を踏み入れると誰の存在も感
じないヒンヤリとした空気を感じた。

 あれ?
佳織ちゃんは帰ってないのかな?
数時間も前にチェックしていたから、てっきりそのまま帰宅したと思って
いた。
  明け方まで、どこで遊んでるのだろうか?
それとも今日は帰らないつもりなのか?
昨日の今日で、さすがに二人きりは息が詰まりそうだったから、ちょっと
安心してしまう。
 酔った勢いだったと彼女は言ったけど、オレは忘れるなんてできない。
そんな簡単に男と女が寝るなんて、あり得ない。
 もしかして、忘れて欲しくてボトルを下ろしたのだろうか??
 彼女の考えがさっぱりわからない。
今までオレの周りにいた女は、素直に感情表現していたし、京介さんが言
うように、顔に出る事も多かった。
でも、佳織ちゃんの考えはホントにわからない。
夕べだってそうだ。
オレに抱かれたかったわけでも、ましてやエッチがしたいだけでもなかっ
たのに、誘ってきたのは向こう。
 都会の喧騒の中で育ったからなのか?
これが、地方との違いなんだろうか?
もしかしたら、子どもの頃から感情を隠して人と付き合っていたとしたら、
まともに信頼できる友達なんていやしなんじゃないのか?
  理解不能な思考回路。
佳織ちゃんはどんな思いで、どんな考えで行動してるのだろうか?
知りたくて仕方がない。
気が付けば、いつも彼女の事を考えている自分がいる。
気になって気になって仕方がないのは、やっぱり彼女を好きなんだろうか?
恋愛感情なのかわからないけれど、いつでも彼女を考えてしまうのは確か
だ。
オレの中で、とても大きな割合を占領している。
 疲れた体を休ませるためにベッドに沈みながら、オレは悩んでいた。
彼女にとってオレはどんな存在かじゃなく、オレにとって彼女はどんな存
在なのだろうか?
 もう2度と恋愛なんてしたくない。
会うことはできなくても、娘の千尋がいるんだから、千尋に恥じるような
真似だけはしないと決めた。
男である前に、オレは父親なんだ。
なのに、こんなに一人の女が気になって仕方がないのはなぜ? 

 大きな瞳から零れる涙は誰のタメなんだろうか?
いつも笑顔でいるその陰で、何に傷ついているのだろう。
オレが、彼女の傷を癒すことはできないのだろうか? 
  いつも思い浮かべるのは泣き顔ばかりなのに、ホントの佳織ちゃんはオ
レの前では笑顔ばかり。
気にならない方がおかしいよな………。

「ただいま」
ガチャリとドアが開いて、遠慮がちの小さな声が部屋に届いた。
「おかえり」
自分の部屋から出て、佳織ちゃんを出迎えると、やっぱり彼女は笑顔にな
った。
「まだ起きてたの?」
「ああ…」
いつものように、冷蔵庫の中からビールを取り出すと、オレにも1本くれ
た。
 まだ、飲むのかよ?
店でも結構飲んでいたのに………。
「心配しなくても大丈夫だよ、昨日みたいな事は2度としないから。ホン
トごめんね」
「なんで謝るの?」
どう考えても男のオレの方が得したわけなのに、謝られても困る。
どちらかと言えば、据え膳といえど、喰ってしまったオレに非があるよう
に思うのに。
「………いや、ほら無理に枕営業させちゃって悪かったなぁと反省してる
んだよ、これでも一応」
枕営業?
この一言で、気が付いてしまった。
ホストとして抱いたんじゃなく、一人の男として、抱いていて自分に。
 どんな言い訳を並べてみても、オレは佳織ちゃんを女としてしか見てい
なくて、挑発に乗ったのも、やっぱり抱きたいという欲望が勝ったからだ。
 それなのに営業と思われるなんて最悪だ。
「枕営業するような男に見えるんだ………佳織ちゃんには」
ショックだ。
どれだけ指名がなくても、体を使って客引きしようなんて思った事は一度
もない。
売春みたいな真似が、人の親である自分にできるわけがないんだ!
「………普通でしょ、ホストで枕してないヤツなんていない。表ではどう
言ってたとしても、寝なきゃ客は金払わないんだもん。
ソレが現実。
直樹が枕ホストを軽蔑してるのはわかったけど、そんなんじゃいつまでも
下っ端のまんまだよ?もちろん、どんな客にでもいっちゃうような特攻に
なれと思わないけど、もうちょっと砕けてもいいんじゃない?」
「違う!」
いや、そうなんだけど………オレが言いたいのはそんなんじゃなくて、
もっとこう違うんだ!
「そう?」
「他の誰にどう思われてもいい。でも、佳織ちゃんにだけは営業だと思わ
れたくなかった!!
ちゃんと、友達しようって言ったじゃないか、ホストとその客みたいな関
係じゃなく、西薗直樹と、杉山佳織って言う人間のつき合いがしたいんだ」
どうしてわかってくれないんだろう?
 オレはいつだって彼女にはホストとして接していない。
なのに、ちっとも伝わらない。
「熱いなぁ、酔ってる?」
ケラケラと声をたてて笑いながら、冗談にしようとしているのだろうか?
酔った勢いなんかじゃない。
本気で、一人の人間として対等に信頼関係で結ばれたいだけだと、どうす
ればわかってもらえるのだろう。
「またはぐらかすのか?
人が真剣に言ってるのに、冗談にしたいのか?」
いつもそうやって、スルーされて来た。
どんなに真面目に話したいと思っていても、いつだって笑いながら冗談に
変えてしまう。
でも、もう限界だ。
いつまでも一方通行なままじゃ、距離は縮まらない。
「男と女が何を語り合うっての?
バカバカしい、どうせヤルかヤらないかだけだよ」
佳織ちゃんは目つきを鋭くさせて、ピシャリと言い放った。
ソレは自分に言い聞かせてるようにも見えて、そんな彼女がさらに愛おし
く思えてしまう。
もっと、ちゃんと男と付き合うべきだ。
「男女の友情だってあるよ」
恋人としてじゃなく、ちゃんと一人の人間として、男とか女とか関係なく
付き合っていけるのに、彼女は知らないのだろう。
「あはは」
佳織ちゃんは大きくお腹を押さえるようにしながら笑い転げている。
また、ジョークにしようとしているのだろうか??
 彼女の様子をジッと見ていると、笑い終えた途端、オレを睨みつけて、
一言一句はっきりと叫んだ。
「偽・善・者」
はぁ?
なんでオレが偽善者なんだよっ。
ただ、人間そう捨てたモンじゃないってわかってもらいたいだけなのに、
どうしてそんな風に言われなきゃならないんだ?
「感じ悪いな、佳織ちゃんって」
「私も一つ教えてあげるよ、人間ってホントの事言われると怒るんだって。
直樹はなんで今怒ってるの?私の言葉が真実だったからでしょ」


 性格、かなり悪いんじゃないのか。
いつもの笑顔はオブラートで、中身はとんでもなく苦い味がするから包み
込まなきゃならないんだ、きっと。
 どうしてこうも攻撃的な喋り方になるんだろう。
「何も言い返せないの?当たってるんだ。
ばっかじゃない、男女の友情とかいうヤツに限って、恋人も友達もどっち
も大切とか思ってるんだ。矛盾してることに気づきもせずに」
矛盾?
「恋人も大切だけど、友達もやっぱり同じくらいに大切に思うのは、ちっ
ともおかしくないじゃないか、よっぽど佳織ちゃんの方が屈折してると思
うよ」
オレの言葉に彼女は再び高笑いをした。
「あはは。あのね、男女の友情が成立してるんでしょ?だったら彼女と女
友達は同列なんだ。同じくらい大切。その他大勢の女共と、恋人も一緒だ
なんて、おかしくない?
私だったらそんな彼氏いらないっ!
他の何もかも捨てて、私だけを大切にできないような彼氏なんていらない!
第一ホストが、何甘いこと言ってんだか!
そんなセリフじゃ、誰も騙せない、ままごとじゃあるまいし、何が友達よ?
笑わせないでよ、所詮ホストなんて女に金払ってもらって稼ぐしかできな
いくせに!!」
まるで吐き捨てるような言い方だった。
泣きそうな顔で叫ぶ彼女に、やっぱり痛々しさを感じてしまって、さっき
の雑言も聞き流せてしまう程、引き寄せられる自分がいる。
 何を抱えてるんだろう?
どんな癒せない傷を作ってしまったんだろう?
彼女の傷口はあまりにも深くて、触れようと思っても触れられないのに、
知らない間にオレは触れてしまったのかもしれない。
だから、こんなに感情的になってるんだきっと。
「今はホストじゃない、よ」
そう言って抱きしめてあげたいのに、体が動かない。
彼女から発散されている近づくなオーラがひしひしと肌に刺さるから……
…。
「嘘ばっかり、ホストはいつでもどこでもホストだよ」
顔を背けて、つまらなさそうにビールをあおるように飲み干して、佳織ち
ゃんはまた冷蔵庫からビール缶を取り出した。
「………飲み過ぎだよ、もうやめた方がいい」
プルタブを空けようとしている指先に触れて、動作を止めると、佳織ちゃ
んは大きな瞳を冷たく輝かせてオレを睨んだ。
「私に構わないでっ」
オレの手を振り払って、勢いよくビールを体内に注いでいる。
 何かがおかしい。
いつもの彼女じゃない。
こんな感情的になるのも、攻撃的なのも、いつもの彼女からは想像できな
い。
「何か、あった?」
どうせはぐらかされるのに、聞かずにはいられない。
昨日の誘惑だって、彼女らしくなかった。
普通に会話してるつもりなのに、急に感情的になって訳が分からなくなっ
てしまう。
「別に」
予想通りの答え。
でも、やっぱりどこかが違う。
ココで引き下がったら、いつもと同じで彼女の心の中に入り込めない。
「昨日だって変だったろ?
オレには聞く権利あると思うけど」
どんな形にせよ、オレは彼女の希望通りに抱いたんだ。
 関係ないわけじゃない。
「………どんな権利があるの?枕営業のお礼はちゃんとお店でしたはずよ」
「…………営業じゃないって言ったろ!
ちゃんと言えよ、理由を」
逃げちゃいけない。
きっと、今すごく大切な所だと思う。
ココで諦めたら、また彼女との距離は縮まらない。
「別に、ただやりたかっただけ」
睨みに凄味を増して、赤いルージュが塗られた唇は魅惑的に微笑んでいる。
まるで、禁断の実に魅せられたアダムのように、オレはゴクリとツバを飲
んだ。
 やりたかったわけじゃないのはわかっているのに、今、目の前にいる女
はあまりにも艶っぽくて、誘っているようにすら思ってしまう。
「へぇ、やりたかった割にはちっとも楽しそうじゃなかったよな」
「そう、じゃあまた試してみる?」
罠にはまったのはオレなのか?
彼女の巧みな話術から、オレは抜けられないのだろうか?
  心臓がバクバクしている。
こんなスリルは味わった事がない。
艶めかしい言葉と表情。
その裏に隠された気持ちを知りたいはずなのに、誘いに乗ってしまいそう
な弱いオレ。
「どうする?」
いつもの笑顔からは想像もできないようななまめかしさ。
上目遣いで見つめられて、グロスで光唇に、心ごと食べられてしまいたい
衝動。
  ギリギリの理性がプツリと切れてしまいそうになるのを必死で堪えた。
「ダメだ」
「さっき男女の友情は成立しないってアレ、撤回するね。ヤリ友ってのは
男女で成立するもの。ただし、直樹みたいな優等生には無理だろうけど」
クスクスと小気味よさそうに毒づく佳織ちゃんに、やっぱりドキドキする。
小悪魔てき要素だろうか?
近づきたいのに、近づくのが怖い。
ホントはとっくに、惹かれていたのだろう。
認めたくなかったけれど、オレは彼女が好きだ。
もちろん、恋愛感情の好き。
言い訳できないくらい、ときめいているのに、もう、認めなきゃならない。
「そんな体だけのつき合いで満足するのか?」
抱きたくて、彼女が欲しくて仕方がない。
でも、オレがなりたいのはヤリ友なんかじゃなくて、恋人。
「さっきから何を言わせたいの?
真面目に男女交際しています♪ってかわいらしい言葉を言えば満足するの?
たいがいうざいよ、直樹」
イライラし出したのか、またビールで喉を潤しながら、タバコに火をつけ
ている。
黒基調にされたネイル使用の指先に挟まれたラッキーストライクはくねる
ような煙を吐き出していた。
「オレ、佳織ちゃんが好きだ」
もう、どんな誤魔化しも通用しない。
俺自身が気付いてしまったんだから、仕方がない。
「それはどうもありがとう」
人の真剣な告白にすら、白けきった答えを返す彼女。
どうして、そんなに人を寄せ付けないんだ?
人なつっこい笑顔で、愛想を振りまいているくせに、心の中の奥深い部分
には触れさせようとしない彼女に近づきたい。
 回りくどい方法なんかじゃ無理だから、正攻法で行ったのに、それすら
も脚下されてしまった気分。
「オレは本気だよ」
「………で、どうしたいの?付き合いたいの?友達になりたいんじゃなか
った?」
めんどうくさそうに、タバコの煙を吐き出して、オレの目を見ようともし
てくれない。
「わからない」
自分でもどうしたいのか、わからない。
付き合いたいわけじゃない。
でも、彼女を救いたいんだ、オレの力で。
こんなにもなげやりな恋愛ばかりを繰り返している彼女を、振り向かせた
いのだろうか?
「何それ、バカにしてる?」
「違う!ただ、他の男と付き合ったりしてるのを見るとイヤだし、誰でも
いいからって男に抱かれるくらないなら、オレにしとけよって思うんだ」
「………今日はもう酔ってるから、今度ちゃんと話そうよ」
ビール片手に、それだけの言葉を残して、彼女は部屋に入った。
 そんな後ろ姿を見つめながら、オレは怒濤のように襲ってくる後悔を感
じた。
つい勢いで告白してしまった。
 頭で考えるよりも先に、言葉になってしまっていたんだ。
恋愛なんて2度としないと決めていたのに…………。
彼女はオレの告白にどんな返事をくれるのだろうか?
拓人の時みたいに、軽い感じに受け取られていたらいやだなぁ。
でも、フラれるのも辛い。
 やっぱり、好きだなんて言うべきじゃなかった。
どんな答えをもらっても、オレは困る。
千尋がいるのに、誰かと付き合うなんてできない。
バカだよな、後先考えずに何をやってるんだか。







2004-2005©白雪姫-hime-