「新しい部屋見つかったから、次の日曜に引越しするね」
オレの告白に何の返事もないまま、すれ違いの日々だけが過ぎて、ある日、
晴れやかな笑顔で佳織ちゃんはそう言った。
「ソレが返事?」
この部屋を出る。
オレの気持ちを知っていて、出るってのは、NOってことだ。
「…………どういう意味?」
また、何も無かった事にするつもりだろうか?
オレだってその方が有り難いのに、淋しい。
どんな返事をもらっても、困るのに、告白を無視されるのはやっぱりショ
ックだ。
「なんでシカトなんだよ、ちゃんと告白に返事しろよ」
「………ごめん、直樹とはつき合えない」
伏し目がちに、頬にまつげの陰を落として小さな声の彼女。
「拓人はよくて、なんでオレはダメなんだ?」
何を聞いてるんだ!
つき合えないくせに、ふられて情けない質問なんかしてる………。
「拓人の時はお互いに軽い気持ちだと思った。私には好きな人がいるし、
ソレでもいいならって………。でも、直樹とは遊びでつき合えないでしょ?
直樹はきちんと私を見ようとしてくれてるから、軽い気持ちではつき合え
ないよ」
いつになく真面目に話をしてくれている。
それだけでも、オレの告白をきちんと考えてくれたのが伝わる。
「そっか。好きな人とはつき合えないの?」
なんだかフラれたってのに、妙に晴れやかな気分だ。
簡単にOKの返事をもらえるよりも、こうやってちゃんと考えてくれたっ
て事がうれしい。
軽い気持ちではつき合えない。
彼女の口からそんな言葉を聞けるなんて、信じられないくらい、うれしい。
「………つき合えないよ」
すごく悲しそうに、今にも泣きそうな顔で言ってる彼女を見ると、やっぱ
り抱きしめたくなってしまう。
どんな恋愛をしてるんだろう?
いつも、簡単に付き合って、簡単に別れる恋愛を繰り返していながら、心
の中に秘めた恋心はどんなモノなんだ?
「なんで?片思い、なの?」
「………ホストだよ?隆史と付き合ってもいつも不安で仕方なかった。今
どんな女に接客してるんだろ?どんな言葉をささやいてるんだろうって、
想像するだけで吐きそうになるくらい、辛かった。でも、我慢してた、隆
史が好きだから、側にいたかったから………」
めずらしく、本音を打ち明けてくれている。
どんな心境の変化が彼女にあったのかわからないけれど、うれしい。
「この前、ケンカしてた男前だろ?覚えてるよ」
克が、スーパーホストと言っていた。
きっと、客の人数も凄いんだろう。恋人と過ごす時間もあんまり取れない
くらいに、忙しいはずだ。
「ホントは、私が大嫌いな女に愛想笑いをして、接客してる隆史を見て別
れたの。でも、きっとソレはきっかけだったと思う。ずっとずっとたくさ
んいる客に嫉妬し続けて、苦しかったから、些細なきっかけで爆発しちゃ
ったんだろうね。だから、隆史がホストしてる限り、私はつき合えない」
目にうっすら涙をためている佳織ちゃんを見て、今でもどれだけ彼を思っ
ているかを確認させられてしまった。
「そんなに好きなら、側にいればいいのに」
「………好きすぎて独占したくて、気が狂いそうになるの。
一緒にいる時だけ安心できて、離れてしまうと淋しくて淋しくて泣きたく
なっちゃう。
恋人じゃなければ、会えなくて当たり前だし、納得できるけど、恋人にな
ると、ドンドン欲求だけがふくらんでしまって、自分で自分の首を絞めて
身動き取れなくなってしまう。隆史がいないと生きていけない程、恋に溺
れてしまうから」
見せつけられる隆史への激しい思い。
これだけ好きな男がいるなら、オレなんて敵うわけがない。
でも、佳織ちゃんはこのままじゃいけないんだ。
手当たり次第で適当に付き合っていても、何も成長しない。
そう言いたいのに、目を潤ませて必死で涙を堪えている彼女に追い打ち
をかけるような言葉は出てこなかった。
今までオレが見てきた恋愛よりも激しく、誰よりも強く隆史を愛してい
る佳織ちゃん。
これほど、純粋に誰かを愛することができるのに、なぜ、他の男と付き合
ったりするんだろうか。
「彼以外の男は、佳織ちゃんにとっては何?
ただの身代わりなのか?」
「………違う、つもりなんだけど、結果的にはそうなっちゃうんだ。
付き合う時はね、今度こそ好きになれるかな?隆史を忘れられるかな?っ
て思うんだけど、やっぱり無理なんだよね………、でも、淋しくて、誰か
側にいてもらいたくなっちゃうし、愛してるとか好きだよって言われると、
必要とされてるんだってうれしいから、すぐに付き合っちゃうの。
自分でもちゃんとわかってるよ、今のままじゃいけないって。だから最
近は誰とも付き合っていない」
彼女の言う通り、確かにここ数週間は別れ話を聞いていない。
でも、誰とも付き合っていないのは知らなかった。
「だから、淋しかった?」
淋しくて、オレに抱かれたのだろうか?
ホントは誰でも良かったんだろう、隆史以外なら、彼女にとって誰も彼も
同じなんだろうから。
「………隆史からメールや電話があると、会いたい思いがふくらんで、我
慢できなくなっちゃう。何もかも投げ出して、胸に飛び込みたくるなるの、
でも、それじゃあ過去の繰り返しになってしまうから、必死で我慢して
る。ギリギリ我慢するんだけど、一人じゃ支えきれなくてつい、誰かを頼
ってしまうの。弱いよね、私って」
「………オレを頼ってよ。今度からそんな時は他の男じゃなくて、オレに
しとけよ」
誰にだって、一人で抱えるにはつらい事ってある。
その度に、逃げてちゃいけないのはわかるけど、それでも彼女は他の男に
一時の安らぎを求めてしまっていたんだ。
「………そんな優しいセリフ、グラッときちゃう」
この前と違って、いつものような笑顔で彼女は微笑んだ。
「今日は、素直なんだな」
「………直樹に告白されて、コレでも反省してるんです」
ニコニコと、無邪気な笑顔に見えるけれど、彼女の表情には重いものが隠
されている。
いつも笑っているのは、気を抜くと泣いてしまいそうになるからだ。
やっとわかった、彼女はいつも隆史を思っている。
どんな時も、何を見ても気持ちが隆史へとリンクしてしまうんだ。
だから、時折見せる切ない表情や、意味不明な会話展開になってしまう。
オレは、直面している彼女しか見ていなかった。
その奥には何があるのか、知りたいと思っただけで、考えてあげれなかっ
た。
もっと、ちゃんと彼女を見ていれば良かったのに………。
「オレもさ、勢いに乗って告白して反省してる。思ったことをすぐに口に
出すのはホストとして失格だって、京介さんに言われた」
「キッツイよね、京介の言葉って」
うんうん、とうなずきながら、佳織ちゃんは出勤用意を始める。
手際よく下地を塗り、ファンデーションを重ねながら、驚く程に化けてい
く。
ノーメイクの時は、年相応のかわいらしい顔なのに、化粧するだけでプロ
のホステスの顔になるんだから、不思議だ。
「直樹は用意しなくていいの?」
「オレはまだ大丈夫」
もう少し、ゆっくりできるだろうとテレビを付けて、情報番組を見ている
とインターホンが鳴った。
「誰だろ?」
鏡越しに、佳織ちゃんと会話をしながら、オレはとりあえずドアを開けた。
「久しぶりだね!」
!!!!!
パステルカラーのAラインワンピースを着た女が立っていた。
「中に入っていい?」
答えも聞かずにズカズカと入って来ると、佳織ちゃんがいる事に気付いて、
女はオレを振り返って嫌味な笑顔を作った。
「何の用事だよ?千尋はどうした?」
何で、ココに元嫁がいるんだ?
住所は教えていないはずだし、まだ幼い千尋を一人おいて、来たのだろう
か?
「千尋は実家。それより、彼女は知ってるの?直樹がバツイチだって」
佳織ちゃんは背中を向けたまま化粧を続けている。
「彼女は関係ない」
こんな形でバラすつもりじゃなかった。
別に付き合ってるわけでもないから、いちいち報告する必要もないと思っ
ていたけど、なんで優子に暴露されなきゃならないんだ?
「なんだ、残念。私も再婚するから、直樹にも相手がいた方が良かったの
にな」
さ、再婚???
優子は普通に言ってるけど、子持ち女の再婚って、もっと慎重に進めるも
のじゃないのか?
「千尋はどうなるんだ?」
「千尋もなついてるよ、もうパパって呼んでるし」
パパ…………。
オレのかわいい千尋が、オレ以外の男をパパと呼んでいる?
まだ、幼いから新しいパパだけが千尋の中では父親になってしまう。
きっと、オレの事なんて忘れてしまうだろう。
ソレが千尋にとっての幸せにつながるにしても、何だか悲しい。
「だからもう養育費はいらないって、報告に来たの。手紙でも良かったけ
ど、お金の事だし、ちゃんとしとかなきゃと思ってさ」
淡々と喋り続ける優子を目の前にしながら、オレの頭は千尋でいっぱいだ
った。
産まれた時はホントに小さくて、2500グラム未満の未熟児だったから、
保育器に入っていて、ガラス越しに見た赤い顔はかわいいと言い難かった
けれど、ソッともみじのように小さな手に触れると、ギュッと人差し指を
握りしめたんだ。
ああ、生きてるんだ。
人間なんだ、オレの子ども。
感動した。
初めて笑顔を見た時は、オレまでつられて笑ってしまった。
ハイハイ姿も、おしめをつけた大きなお尻を振りながらも必死な姿がかわ
いかった。
ミルクだってあげた。
おしめだって換えた。
夜泣きすると、眠るまで抱きしめてあげた。
オレの小さなかわいい娘。
もう2度と会えないと言われたけれど、会いたい。
戸籍上、親子じゃなくなってしまったけれど、オレにとっては今でもかわ
いい娘。
「会わせてくれない、か」
最後に、一度だけ。
どうしても、会いたい。
だけど、その思いも虚しく、優子は片方の眉毛を上げて不機嫌な表情にな
った。
「はぁ?無理に決まってるじゃない。
そう約束したでしょ」
「わかってる!わかってるけど、一度だけ、お前が再婚する前に一度だけ
会わせて欲しい」
お願いだ。
恋をしたからいけないのか?
もう2度と恋をしないと決めていたのに、佳織ちゃんを好きになってしま
ったから、罰があたったのか?
これ以上、オレと千尋のつながりを破壊しないでくれっ。
「ダメよ、やっと直樹の事も忘れかけて、今の相手になついてるのに、会
わせられない」
無情にも、頑なに会わせるつもりのない優子。
無理だとわかっていても、どうしても一目でいい、千尋に会いたい。
誰か知らない男の娘になる前に、まだ、オレの娘である時に一度だけ!!
「頼む………」
力なく、そう言うしかできない無力な自分が情けない。
千尋にとっても、新しい父親に馴染むのに必死な今、オレと会うのは混
乱させるだけだと簡単に予想できるのに、それでも会いたい。
千尋のためにも会うべきじゃない、だけど、この気持ちはどうやっても消
せない。
今まで、何度も会いたいと思った。
電話をかけて、声だけでも、と。
でも、千尋のために我慢していたんだ。
「無理よ、そのことも含めて、ちゃんと約束したいの。
もう、養育費を送らなくていいから、千尋にも2度と会わないと再び約束
してもらいたいの」
2度と、会わない。
確かに、そう約束した。
それでも、やっぱり親子なんだ。
千尋はオレの娘なんだ。
他の男に千尋を奪われるなんて、考えてもいなかった………いや、優子の
性格からして予想できたはずなのに、あえて、避けていたのかもしれない。
まさか、こんなに早く優子が再婚するなんて………。
「約束はする、でも、その前に一度だけ会わせてくれ!一目でいいから!」
もう、会えないのか?
ホントに無理なのか?
「無理だって言ってるじゃない!
もう、千尋だって今更直樹に会えば戸惑うだけよ、わかるでしょ?
話はそれだけよ、もうホテルに帰るから」
わかっている、それでも遠くからでもいい、千尋に気付かれないようにで
もいいから、アイツの姿が見たい。
だけど優子は言いたいことだけ言って、さっさと帰ってしまった。
「直樹………」
今まで黙って背中を向けて化粧をしていた佳織ちゃんがオレの隣に座り、
肩に手を置いた。
ふんわりと温もりが肩に広がる。
「オレこそ、みっともない所見られたよな………」
たった一つ、どうしても手に入れたいのは佳織ちゃんなんかじゃなくて、
千尋だ。
あいつの笑顔が、アイツの存在がオレのすべてなのに、恋をした報いなの
か?
「喋らなくていいよ、このままココにいるだけだから」
佳織ちゃんは、オレの肩を自分の方に抱き寄せながら、ソファに深く腰か
け直した。
「……千尋………」
オレの大切な娘。
一緒にくらしていた時の様々な記憶が鮮やかな映像となって蘇る。
オレは涙が止まらなくなっってしまった。
どうしても優子を許せなかった。
千尋のためのお金を自分のために使った女、母親失格だとすら思った。元
々ケンカが絶えなかったし、お互い愛情なんてカケラも無くなっていた。
それでも、こんな思いをするくらいならあのまま結婚生活を続けていた方
がマシだった!
「どうすれば良かった?
仮面夫婦でも離婚しなかったら、千尋と離れずにすんだんだ!」
なのに、オレは離婚を選んだ。
あれ以上、優子と生活していけないと思ったから………。
「さぁ、どうだろうね。
でも私は両親の不仲を見て育つくらいなら、さっさと離婚して欲しいと思
うような子どもだったよ」
佳織ちゃんの言う通り、あの時はそう思った。
ケンカして、険悪な両親の元で育つよりか、離婚して母親の元で育つ方が
千尋にとって幸せだと………。
「会いたいんだ、千尋………」
もう、どうすればいいのかわからない。
ただ、千尋に会いたい。
その思い以外、何も心にはなかった。
だから、佳織ちゃんがずっとオレを支えるように抱きしめていてくれた事
すら、気づかずに渇望する思いの波に飲み込まれていた。
ひとしきり泣いて、放心状態の頭をはっきりさせるためにシャワーを浴び
ようと席を立ったとき、隣で眠る佳織ちゃんに気が付いた。
今までずっと、側で見守ってくれていたんだ?
何を喋るでもなく、ただ、オレの隣にいてくれた。
泣き崩れるオレを包み込むように抱きしめてくれていたのも、優しく頭を
撫でていてくれたのも佳織ちゃんだったんだ。
眠いだろう、まどろみと戦いながらも、佳織ちゃんは心配そうにオレを見
つめている。
真っ直ぐと、視線が心臓に直撃している。
「大丈夫?」
「…………ああ」
空元気。
いつもなら、彼女こそが偽りの笑顔を振りまいているのに、今回はオレの
方が笑顔になる。
笑っていなきゃ、また泣いてしまいそうで、怖い。
作り物の笑顔でも、いつか本物になりそうで、無理矢理に笑ってしま
う。
もちろん、心配かけたくないって思いもあるけれど………。
「今日はずっと一緒にいようね」
彼女は自分の部屋じゃなく、オレのベッドへと向かうとそのまま、再び眠
りにつこうとしている。
もう、出勤するような時間じゃない。
オレの心が悲しみに取り込まれている間に、時間は過ぎて、もう夜中だ。
休ませてしまった。
だけどもし、一人だったらこんなに早く意識を取り戻せなかった。
千尋に会えない悲しみに打ちひしがれて、とてもまともな状態じゃなかっ
ただろう。
強調するでもなく、ただ、ただ側に居てくれた佳織ちゃん。
なぐさめるでも、応援するでもなく、静かに優しく見守ってくれる。
心配そうにオレを見つめ、撫でてくれる指先が、ジワジワとオレを夢の世
界へと引き寄せてくれたんだ。
暗闇の中、一縷の光みたいに、まるで蜘蛛の糸みたいに細く小さな光だ
ったけれど、オレにはとてもありがたかった。
もう、好きとか嫌いとか、女とか男とかそんなのどうでもよく、ただ、傷
ついたオレの側にいてくれた、それだけで、オレは救われた。
「隣、寝てもいい?」
「うん、おいで」
二つ並んだ枕の開いてる方をポンポンと叩きながら微笑んでいる。
まるで、聖母のように慈愛に満ちた表情。
寝転がると、彼女はオレを抱きしめるようにくるまった。
きっと、この世の中にマリア様がいるなら、彼女みたいな女を言うんだ。
少なくても今のオレにとっては、彼女はあまりにも神聖な母親のように
甘い優しい世界へと誘ってくれる。
3日もオレはとりとめもなく溢れる涙と、悲しみに追い込まれて自堕落
な生活を繰り返した。
佳織ちゃんはそんな人間を放棄したようなオレの世話するために、仕事を
休んでくれた。
ご飯を作って食べさせてくれたり、一緒にお風呂に入ってくれたり、とホ
ントに子どもの世話をする親のように………。
そして再び優子が現れて、オレを現実へと引き戻した。
「直樹、お客様だけど、大丈夫?」
チャイムが鳴って、二人だけの空間に亀裂を入れるように、温かいまどろ
みを破った優子は、ズカズカと心の奥まで入り込んで、ボロ雑巾のように
引き裂いてくれた。
「今日帰郷するから2度と会うこともないと思うけど、元気でね」
たったそれだけを言うために、わざわざココへ寄ったのだろうか?
バタンとドアが閉まって、優子は姿を消した。
2度と会うことがない。
もちろん優子にはできれば会いたくないけれど、千尋との縁を完全に切ら
れてしまった。 玄関で呆然と立ちつくすオレを後ろから抱きしめるよう
に、佳織ちゃんは言葉をかけてくれる。
「会えるかも、しれないよ」
え?
「もう一度、優子さんを呼び戻してきて」
まるで魔法の呪文。
佳織ちゃんはオレの背中を押すように、ドアを開けた。
まだエレベータを待っている優子を、部屋へと戻し、3人でテーブルを囲
んでソファに座った。
どうやったら、千尋に会えるんだ?
何でもいい!
もう一度会えるなら、何でもしよう。
「何?もう話はないんだけど。
飛行機の時間もあるし、サッサとしてくれない?」
眉間にシワをよせて、不愉快を思い切り顔に表現している優子と違って、
佳織ちゃんは凛とした表情でキッチンに立ち、紅茶を入れ始めた。
「ぶしつけだけど、離婚してどれくらい過ぎました?」
佳織ちゃんは、何をしようとしているんだろうか?
オレと優子の過去を暴露させたい、訳じゃないだろうし。
「はぁ?もうすぐで7ヶ月くらいかな。
でも、ソレが何よ?あなたには関係ないでしょ!それともやっぱり直樹の
彼女なの?」
返事の変わりに、コトンと白いテーブルにティカップが置かれると、佳織
ちゃんは当たり前のようにオレの隣に座った。
「女性が離婚した場合、再婚するまでに半年は期間を空けないといけない
のを知ってる?
まぁ、知ってるから今再婚話なんでしょうけど」
そうなのか?
男は翌日にでもできるのに、女は無理なのか??
「………ソレが?」
優雅な手つきで紅茶を一口飲むと、佳織ちゃんはニッコリと微笑んだ。
まるで、オレを誘惑した時みたいに、悪事をたくらむ笑顔。
これから、何が始まるんだろうか?
佳織ちゃんは、どんな手口でオレと千尋を会わせてくれるのだろうか?
だけど、この悪魔のような色気を漂わせた彼女の笑顔に、オレは確信した。
千尋に会える。
佳織ちゃんがこんな顔をするからには、優子はまんまと丸め込まれてしま
うだろうから………。
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