ダブルボーイ
ダブルボーイ

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1 プロローグ 2 失恋気分 3 オプション込み 4 新しい香り 強すぎる恋 6 祝福できない
7温度差 8 嘘と裏切り 9 プロポーズ 10以心伝心 11 早すぎる出会い 12 エピローグ

●●●
7 温度差

 『佳織、すっげぇ会いたい!
今すぐ会いたい』
電話の向こうで、勇哉くんの甘えた声が私を眠りから起こした。
「え?今学校でしょ?」
『うん!でも会いたいもんは仕方ねぇだろ』
 ………若いなぁ。
会いたくても、こんな素直に言えないよ。
「じゃあ、今日も会う?」
ってここんとこ、毎日勇哉くんと会っている。
ちゃんとつきあいだしてから、勇哉くんは夕方になると部屋に遊びに来て
くれる。
もちろん、私の仕事があるから、あんまり一緒にいられる時間がないんだ
けど、それでも会いに来てくれる。
『なんだよソレ、仕方なくって感じじゃん。佳織はオレに会いたくない?』
少し拗ねた声色。
かわいいなぁ。
「会いたくないなんて言ってないよ」
『じゃあ会おう!今すぐ会おう!』
「え?だから学校は?」
電話だとわかっているのに、勢いよく言われてしまい、あわててベッドか
ら起きあがって体勢を整えてしまった。

 そのとたんに、ピンポ〜〜〜ンと、チャイムが鳴った。
「え?」
まさか、ねぇ。
『早くあけてよ』
嘘?
ホントに?

半信半疑な気持ちのままドアを開けると、制服姿の勇哉くんの笑顔があっ
た。
「うそ?!なんで??」
得意そうに満面の笑みで勇哉くんはそのまま部屋に入って来た。
「学校昼までだったんだ。デートしようぜ!デート♪
ほら、早く用意して!!」
………呆然としている私をせかしながら、勇哉くんは友達に電話をしてい
る。
こんな時間からデートなんて、どこに行くんだろうか?
 軽く化粧をして、服を着替えた。
「あ、ダメ!スカートじゃなくてGパンのがいい」
????
またまた着替えて、ジーンズにラフなカットソーを合わせて出かけること
になった。
「みんなでふれあい広場行こうって思ってるんだ」
手をつないで駅までの道を歩きながら、うれしそうな勇哉くんははしゃぐ
ようにしている。
「みんなでふれあい広場?」
「そ!なんか最近できたばかりらしくて、犬がたくさんいるんだって」
犬?
「って、犬とふれ合うの?」
私、動物苦手なんだよなぁ。
噛まれそうで怖い。
吠えられたりしたら、もう泣きそうなくらいに怖い。
「そう!小型犬はもちろんだけど大型犬のコーナーもあって、抱っこでき
るんだぜ!
すっごいかわいいよな!!」
………いや、小型犬でも怖いのに、大型犬になるともっと怖い。
かわいいなんて思わないって。
「他の場所にしない?」
せっかくのデートなのに、憂鬱になってしまうよ。
それなら、他の場所で楽しんだ方がいい!
「え?無理だって。
もうみんな行ってるし」
みんな?
みんなって………
「もしかして、『みんなでふれあい広場』じゃなくて、みんなで『ふれあ
い広場』へ行くって意味?」
勇哉くんは意味がわからないって感じに眉を寄せて私を見た。
 いや。
もういい。
私の勘違いだね。
デートって聞いたからてっきり二人きりだと思っていたけれど、そうだよ
ね。
高校生だもん、友達とだって遊びたいだろう。
そこに彼女も連れて行くってよくあると思う。



思うんだけど………何だか緊張しちゃう。
「弘幸くんと淳司くんは知ってるけど、他のメンバーもいるの?」
「ん?ああ、淳司の彼女と後同じクラスの女が何人か来るっつってた」
女の子も来るんだ。
みんな高校生なんだよね、ちょっとつらそう。
話題も合わないだろうし、若い子のノリに付いていけるかなぁ?
「高校生ばっかりか………」
言葉にするつもりはなかったのに、気が付いたら音になって出てしまって
いた。
 やば、勇哉くんに聞こえた、、、よね。
「大丈夫だって!佳織ってばそこらの女子高生よりかっわいいじゃん」
しっかり聞こえていたのだろう、勇哉くんは笑顔でそう言ってくれたけれ
ど、それは恋人の欲目ってもので、第一かわいいとかかわいくないって問
題じゃないんだよ。
私が学生の頃って、大学生を見れば「ババア」って思ってたくらいなんだ
から。。。
ああ、マジ憂鬱だし。

 いやぁな気持ちのままふれあい広場に到着すると、勇哉くんは友達に電
話をして、みんなが集まった。
 淳司くんの彼女はお嬢系なルックスなんだけど他の二人が、見るからに
ギャル系。
 う〜〜ん、私が学生の頃はここまでひどくなかったぞ?
と言いたくなるようなメイクに髪型。
チャラチャラしすぎて、ある意味男にひかれてしまいそうな感じ。
「えぇぇ、マジ勇哉の彼女年上なんだぁ?」
いや、人の顔見て第一声がソレかよ?
挨拶くらいしろっっ!
挨拶くらい!
「佳織ちゃん、久しぶり」
いつもの柔らかい笑顔で弘幸くんの挨拶。
そうよ、これよこれ!
挨拶って基本だっつうの!!
「久しぶり、相変わらずいい男だねぇ、弘幸くん」
 弘幸くんに挨拶を返すと聞こえるようにギャルAがギャルBに耳打ちし
た。
「ウチらにはシカトぶっこいてるくせに弘幸には笑顔だぜ、さっすが水商
売女って違うよな」
………。
いや、お前らが私に挨拶したか?
ってか、むかつくんすけど?
「ほらほら、お前も挨拶しろ」
淳司くんの隣で大人しくしていた女の子はペコリと小さく会釈をした。
私も彼女には笑顔で返すと、彼女は照れたような安心したような表情で淳
司くんを見つめている。
 うあぁ、なんか純愛って感じ?
初々しいカップルだな、うらやましい。
  それに比べてバカギャルめ!
お前ら、見習えよっっ!
ギャルの中には、『おお!かわいいじゃん』
とか、思える子もいるのに、彼女たちは見るからに悪意を覚えてしまう。
「じゃ、オレらは二人で回るから!」
と、淳司くんは彼女を連れてさっさとその場を離れてしまった。
 わかるぞ淳司くん!
あんなお嬢様ちっくな彼女だと、バカギャルに近づけたくないよなぁ。

って、そんな場合じゃねぇ!
残りは私と勇哉くんに弘幸くんとこのお二人様だけ………。
つうことは、仲良くみんなで回らなきゃならないんじゃ?
弘幸くんに二人をまかせて、私と勇哉くんは二人♪なんて調子いいこと、
出来ない、、よね………やっぱり。
「佳織ちゃんたちも行っていいよ」
と、私の心配を察してくれたのか弘幸くんはいつものように優しい提案を
してくれたので、大きくうなずこうとした私よりも先に、バカギャルAが
一言。
「え?別に一緒でもよくね?
ってか、私ら邪魔する気ないし」
…………。
 いや、君たちは存在自体が邪魔!!
ってか社会的にもきっと邪魔さぁぁぁ。
と叫びだしたい。
ああ、でも私、大人だからそんなことできないし………。
 だいたい、お前ら名前なんつうんだよっ?
自己紹介くらいしろ!
ああ、マジむかつく。
「オレは佳織と二人のがいい。
こいつら第一何でいるんだよ?」
この勇哉くんの一言で少し、イライラが収まったものの、さすがギャルパ
ワー全開の二人は逆ギレ。
「それはこっちのセリフだよ。
だいたい学校で一緒に行こうって言ったのに、なんで部外者がいるんだよ?
淳司の彼女にしても、そこの女にしても、何でいるんだよ?」
………今度は部外者扱いかよ?
「はぁ?お前らのが部外者だって。てか佳織はオレが誘ったんだ。とやか
く言うなっ」
勇哉くんは少し怒ったように私の手を引っ張り、スタスタと会場に入った。
 芝生でできたドッグラン会場に大きなテントが二つ。
一つは小型犬専用で、もう一つは大型犬に触れ合えるようになっているみ
たい。
もちろんテントは人気で、行列ができてる。
その行列に並ぶ。

 前進すれば犬がいて、後ろにはキャンキャンうるさいギャル。

「いいよ。
学校の友達なんでしょ?一緒に回ればいいじゃん、私は平気だから」
「だって、佳織のこと部外者って言ったやつらだぞ?
んなの友達でも何でもねぇや」
………。
それはとってもうれしいんだけど、やっぱ勇哉くんには学生生活がメイン
なんだし、角がたたない方がいいって。
「私のせいで勇哉くんの立場が悪くなるのヤだもん」
 きっと、こういうの墓穴って言うんだろう。
ホントはあのこたちと一緒にいる嫌だけど、勇哉くんの世界を壊すのはも
っといや。
私がもっと若ければ、そんな考えもなかったろうけど、大人になった証拠
かしら?
 あぁ、やだやだ!
最近性格が丸くなって来たよ、私。
日和見主義だわね。
「わかったよ!
おいっ!こっちだよ」
投げやりに返事をしながら、私たちより後ろに並んでいた弘幸くんたちに
声をかけると、三人でゾロゾロと割り込んできた。
 
  気まずそうな二人を見て、反省してるのかと思いきや、私と目が合うな
りきっちりガン飛ばしてくれる辺り、すげぇな。
まぁ、若さ故で、誰に喧嘩売ってるかわかってないんだろうなぁ。
 それよりも、今度は犬よ犬っっっ。
ドンドンと順番が回って、やっとテントの中。
 すごい匂いとワンワンと鳴いてる犬がたくさんいる。
人にすりよりながら、撫でてもらって気持ちよさそうにしてる犬も。

で、でも、怖いってば!!
 しかもなぜか大型犬の列に並んでたみたいで、私の腰までもありそうな
犬ばっか。
2足立ちすると、熊みたいに大きいじゃんかぁぁぁぁ。
 うわぁ、どこを見渡しても大きい犬ばかり。
楽しそうにしてる人たちがうらやましいくらいに、ドキドキしてるよ。
 さっきからジッと私を見ている茶色の犬がいるんですけど?
「ゆ、勇哉くん」
怖くて、勇哉くんに助けてもらおうと思ったのに、彼も他の人と同じく笑
顔で犬と戯れている。
 ああ、恐い。
お願いだから、近づかないでねっっっ。
 そんな願いも虚しく、ハウハウと変な息をしながら、その犬が近づいて
来た。
「………ゃ、その、、、え」
どうしようぅぅぅぅぅぅ。
「うあぁ、アイリッシュセッターじゃん。
かっけぇよな」
  ギャルAがうらやましいそうにこっちを見てる。

 いや、この犬とじゃれ合いたいなら、どうぞ!
 と言いいたいのに、犬が近づいて来るから恐くて言葉も出ない。
 目の前でハウハウしている大きな犬が、突然立ち上がった。
 「いやぁぁぁ」
犬がなんで立つのよ?
2足歩行しないでよっっ!!
マジ恐い。
小さな叫び声なんて、にぎわいで消えてしまって誰の耳にも届かず、私は
犬に抱きつかれる格好になってしまった。

 心臓がバクバクしている。
このまま食われちゃったらどうしよ……。

「佳織、もしかして……犬、苦手系?」
やっと私のピンチに気が付いて、勇哉くんが隣まで来てくれた。
質問する前に、この犬、どうにかしてよっっっ。
必死でうなずく私を笑いながら、勇哉くんは器用に大型犬を『お座り』さ
せて撫で撫でしている。
「ごめん、先に外に出てる」
ちょうど煙草も吸いたかったし、もうこんな犬・犬・犬って恐いテントの
中にいたくねぇぇぇ。
勇哉くんに大型犬をまかせて、私は逃げるようにテントの外に出て、少し
先にある喫煙所まで足を運んだ。
 はぁぁぁぁぁ、マジ疲れた。
仕事前に、こんなに精神力使って大丈夫だろうか?
 今日、酔わないようにしなきゃ。
煙草を吸うと、落ち着いて来た。
ゆらめく煙って、なんだか良く見ると綺麗だよなぁ。
目に入ると泣いちゃうくらいに痛いけど………。
 つまんないし、そろそろ仕事の準備もあるし、帰ろうかな?
 来るんじゃなかった。
高校生としての勇哉くんの世界は、私には入り込めない。
淳司くんや、弘幸くんは別としてどんな友達がいるのかわからないけれど、
私は彼の友人たちと仲良くなるのは無理かもしれない。
  ため息と一緒に煙りをはき出しながら、勇哉くんに電話をした。
「まだテントの中にいるの?」
小さな機械の向こう側から、犬の鳴き声に混じって、友達たちの声が聞こ
える。
みんなで楽しそうに犬とたわむれてるんだろうなぁ。
『うん、すっげぇかわいくってさ』
声から、勇哉くんがホントに犬が好きなのが伝わって来る。
「同伴約束してるから、そろそろ帰らないとやばいんだよね」
『え?マジで??』
なんて、嘘なんだけど………。
『わかった、オレもすぐ出るから、そこで待ってて』
「いいよ、せっかく来てるんだからみんなと一緒に楽しんでてよ」
一方的に電話を切って、私は一人で『ふれあい広場』を後にした。
電車に乗って、店のある繁華街でおりる。
夜と違う反面を見せるそこは、OLや、学生がたくさんいる。
昼でも夜でもにぎやかなのは変わらないけれど、私だけ場違いって感じ。
何だろ?
 自分でそう思ってるだけなんだろうけれど、周りを歩いてる人たちみた
いに純粋に笑えない。
愛想笑いとお世辞の世界にまみれ過ぎたかな?
 そろそろ、引退考えた方がいいかもしれない……。
自分で店を開くわけでもないなら、いい加減上がるべきなんだよね。
 いつまでも夜の世界にしがみついて、みっともないババアにはなりたく
ないし………。
ヤだなぁ。
 将来の心配する年齢になったなんて。
私もそろそろ年って事か………。
  そういえば、和美はどうするつもりなんだろ?
和美が店を出すなら、そこで雇ってもらうんだけどなぁ。
ちーママとかになったりして?
 う〜〜ん、そんな器じゃないか………。
なんて考えてると、以心伝心なのか和美から携帯が鳴った。
「今ね、和美の事考えてたら電話だもん、なんか愛し合ってるって感じだ
よね」
『何気持ち悪いこと言ってんのよ、めずらしくこんな時間に外にいるみた
いじゃん、一人?』
「うん、和美もおいでよ、一緒にお買い物でもしよ!」
毎日、出勤前にお互いに連絡を取り合って、今日は何時に入るかの確認を
している私たち。
なんだかこのままずっと一緒にいたいなぁ。
 でも、いつかは二人ともおばちゃんになって、お母さんになって、家族
を大切にする日が来るのかなぁ。
 

「勇哉くんとデート、楽しくなかったの?」
会うなり開口一番、和美の毒舌だった。
喫茶店でお茶を飲みながら、漠然とした将来を想像していた話をしたら、
いきなりの切り返し。
「なんで、そうなるわけ?」
「だって、佳織の場合デートの後って、のろけ話になるのに、ちっとも勇
哉くんの名前が出てこないし、おまけになんか憂鬱そうな顔してる」
 憂鬱そうな顔って………どんな顔よ?
幸せに決まってる!
 そりゃ、デートが楽しかったかと聞かれたら、ちょっとつまらなかった
けれど、でも憂鬱なわけないじゃん!!
「やっぱ、のろけてばかりだと悪いじゃん。
だから、遠慮してただけよ」
 そう。
遠慮してただけ。
「う〜ん、それならいいけどさ。
なんかつまんねぇって顔してるぞ、お嬢の今の顔!」
ご丁寧に鏡をポーチから取り出して、わざわざ私に確認させる和美。
 確かに、楽しそうな顔はしてないかも………。
「なんかさ、年齢ギャップを感じちゃったのかな。
私たちってさ、いつまでもお水やってられないし、勇哉くんはこれから将
来があるし、って考えてると、ちょっとブルー入ってたかも」
「ああ、そりゃそうよね。
逆に若さパワーを奪っちゃえば?
私も一生ホステスってわけにはいかないし、いい加減誰かに面倒見てもら
おうかな」
え?
ええ?
「和美、結婚する気になったの?」
あれだけ、独身主義を貫きそうな勢いだったのに。
「まっさか!
愛人よ愛人。結婚なんて絶対いや!
誰かに人世縛られるなんて、まっぴらよ」
………。
………。
いや、愛人でも多少は束縛されるとは思うんだけど?
 でも、和美だって色々と考えてるんだよね。
将来かぁ。
「いい加減マジメに考えなきゃいけないよね」
「まぁそうだけど、せっかくデートした日に考えることでもないじゃん。
 やっぱりなんか変だよ。
佳織っていつも誰かとつき合い始めた時って楽しそうにしてるのに、めず
らしいね」
 チラリとにらみながら、和美は珈琲を飲み干した。
 相変わらず鋭いよな、こいつ。
「さてと、買い物したいからつき合って!
出勤までまだ時間あるでしょ?」
もう、何も聞く気がないのだろう、和美はさっさとレジを済ませて、近く
にあるセレクトショップに寄った。
 お客様のプレゼントをまとめ買いするために………。
 そういえば私もそろそろストックがなくなってたんだよね。
香水やネクタイ、ライターなんかを選びながら、ショーケースをのぞき込
むために腰をかがめていると、急に視界が暗くなった。
 背後に誰か立っている?
え?
かなり近距離で、立ってるよ………。
ガラスに映る姿を目をこらして見つめると、京介らしき姿。
「ちょっと、驚かさないでくれる?
黙って後ろに立たれると恐いんですけど!」
振り向いてそういうと、仏頂面した京介がいた。
「何、佳織ちゃんもプレゼント選び?」
「………うん」
私の場合、相手を考えて買ってるんじゃなくて適当にロッカーにストック
を入れておいて、ランダムに配るって感じなんだけどね♪
 めんどくさいとか、時間がなかったりで、買い忘れるよりかはマシだし、
お客様に渡す時に「これ、似合うと思って」とにっこり笑顔をすればそれ
でOK!
和美はいちいちそのお客様のために買っている。
だから今日の買い物も、今日店に来てくれる誕生日間近な客へのプレゼン
トだろう。
「仕事熱心だね」
な、何だろう。
言ってることは普通なんだけど、何だか言い方にトゲを感じてしまう。
 あ、さっきから京介の笑顔を見てないんだ。
ずっとムスッとしたまま。
何?
「何か機嫌悪そうだね」
ま、私には関係ないけど。
 京介を指名してる女の子は大変だろうなぁ。
今日、店に行ったらちょっとつらそう。
指名しているホストが無意味に機嫌悪いと、なんか客である女の子の方が
必死になって盛り上げようとしちゃうんだよね。
 きっと、ホストクラブの七不思議の一つだよ。
なぜに、客が気を遣うの?
ってね♪

「………オレが機嫌悪いのは、佳織ちゃんのせいだよ」

関係ないと思っていた所に、ストレートに悪意ある言葉をもらってしまっ
た。
「なんでよ、私が京介に何かした?
もう、感じ悪過ぎだよ!」
久しぶりに会ったってのに、まったく!
それでもNO入りしているホストかよ?
不愉快だなぁ。
「何もしないからむかつく。
オレ、プレオープンの招待状出したよな?
何で来なかったんだよ」
  表情を崩すことなく、だけど、きっちりと言いたいことは言う京介。
 …………。
「忙しかったの」
もしかして、すごく怒ってる?
私が来店しないのが、どうして京介の機嫌を損ねたのかわからないけど、
とにかく本気で怒ってるのがわかった。
  なんだかわからないけど、早く退散した方がよさそうな気配を感じた。
「普通さ、友達が店出したら花くらい贈るだろ?
なのに、隆史の気持ちを知っていて、お祝いくらいしったって良かったん
じゃない?
セレモニーよりも大切な用事があったのか?
なんか、隆史がかわいそうだ!
 あいつ、佳織ちゃんのために勇哉の未収まで解決してたんだぜ」


え?



 一瞬、頭が真っ白になってしまった。
なんで隆史が、勇哉くんの未収を払ったの?
  確かにおかしいとは思っていた。
高額未収をして、姿を消した客がわざわざ後になって店にお金を払いに来
るなんて、かなり現実離れしてるなって違和感はあったけど………。
「隆史が払ったって、事?」
どうして?
どうして隆史が、勇哉くんの未収を立て替える必要があるのよ?
全然関係ないのに!
「そうだよ、ありえねぇよな。
だけどあいつはしたんだよっっ!
佳織ちゃんのために!!」
私のために?!
「だって………」
もしかして、いつだったかルージュの帰りに茶店で川上と会っていた時に
返したのだろうか?
 隆史はあのとき、川上に渡したいものがあっただけだと言ってなかった?
それが、勇哉くんの未収分だったっていうの?

 そんな………。

「そんな隆史の出店記念より、大切な用事があったんだろ?
忙しそうでうらやましいよ」

 もう、京介くんの言葉なんて私の耳には届いていなかった………。

グルグルと隆史の姿が、声が脳裏から離れない。
 なんで、隆史はそんなことをしたのよ?
関係ないのに、隆史は勇哉くんの未収なんて関係ないのに………。
 
 やだ、なんだか涙こぼれちゃう。
また、私泣き虫になってしまうよ………。
ダメ。
こんな所で泣いたりしちゃ……。


 わかっているのに、熱い液体が頬を伝っていく。
 そして、その滴は凍らせていた思いまで溶かしてしまう。
 隆史・隆史・隆史
私の中に確かに存在する隆史への思い



アンケート

誤字・脱字:





2004-2007©白雪姫-hime-