デンジャーボーイ

:: MENU ::  
1 プロローグ 2 ナンパな出会い 3 二人きり 4 香水 5 いじめ 6 ついにブチ切れ?!
7 優しい彼氏 8 疑惑の香り 9 お金持ち 10 結婚 11 再び登場?? 12 エピローグ

●●●
2 ナンパな出会い

んー、今日もうるわしい! 
 「佳織、門の所になんかゴージャシーなおばさんが探してたよ」 
掃除をさぼって、教室の窓から密かに大好きな笹岡隆志様を見ていた私
に、クラスメートが声をかけた。 
ゴージャシーなおばさん? 
誰だろう? 
お母さんは全然普通のオバハンだし、そんな知り合いはいないけど 
な……。 
とりあえず、門まで行ってその人を見た。 
探すまでもなく、遠目でもわかる高貴な人だ。ゴージャシーという言葉 
からケバケバしいおばさんを想像していたけど、ただのセレブなおばさ
んじゃん。 
「あなたが、佳織さん?」 
おばさんは私に気づいて声をかけてきた。 
上品な見かけと違って、迫力のあるその声は私を威嚇した。 
「は…い」 
「そう、別にこれと言って用事はないんですよ。ただ、美佐緒さんの娘
さんがどんな方かと思って」 
美佐緒さん?母の知り合い? 
「わからないかしら?美佐緒さんがお付き合いしている男の妻ですの」 
新しい男か?? 
「それが?母と私は無関係だから用事ないんだったらさよなら」 
セレブなババアに会釈もせずに私は背を向けた。 
確かに母には新しい男がいてもおかしくはないけれど、そんなの今に始ま
った事じゃなくて、私が幼い頃に離婚してから、今回で三人目くらいじ
ゃないかしら? 
二人目の時は私を養女にしたいとまで言った将を射んとすればまず馬を
射よ根性丸出しの男だった。それがイヤで、私は家出すらしたのだ。そ
れ以来母親とはほとんど口をきくこともなく、私はバーちゃんと一緒に
生活するようにしたのだ。それからもう2年も過ぎているのに、今さら
あんな母親の事を言われても知らないっつうの! 
あぁぁ、むかつくな。 
「誰?あのマダム」 
私を待っていたのか、小学校からの友達の相沢和美が声をかけた。 
「さあ、知らない」 
「そ……」 
和美ん家もなかなか複雑な家庭環境らしくて、母親の再婚で義父と一緒
に生活するのがたまらなくイヤらしい。 
「今日、バイトでしょ?6時くらいから待ち合わせしようぜ!」 
夜、家にいるのがイヤらしく、和美は水商売のバイトをしていた。私は
お金が欲しくて、でもエンコーしようとは思えなくて、和美と同じ店で
雇ってもらうことになったのだ。 
「でも、週末だし店終わってから繰り出さない?それだったら、仕事
はギリギリに入った方が疲れないと思うけど……」 
そう、今日は週末。繁華街は活気があって、イヤな事を忘れさせてくれ
る。 
家の中で過ごすにはもったいないくらいの、開放感。 
「わかった、じゃあそうしよう」 
私はばあさん家に帰るため、和美より一つ隣の駅で電車を降りた。 
家に入るなり、制服を脱いで、化粧をさらに上塗りした。 
くっきりとアイラインを入れて、マスカラを重ねる。 
赤い口紅で上からグロス。 
我ながら高校生には見えない顔が出来上がった! 
後はスーツを着込んで、ヘアメイク。 
肩まで伸びたセミロングをぐるんぐるんにゴージャス巻き。 
最後の仕上げはシャネルのアリュールを2,3回スプレーして完成! 
ホステス佳織の出来上がり! 
そろそろ、時間かな?腕時計に目をやるとギリギリ間に合いそうな時間
だった。 
やべっ!遊ぶ事を考えて気合い入れすぎたのかな?こんな時間なんて。 
「ばーちゃん、遊びに行って来るから飯食ってて!ちなみに午前様だか
ら先に寝ててね」 
ばーちゃんの返事も聞かずに私は家を出た。さすがに、年寄りにはバイ
トの事は言えずにいる。あの人は孫の私をかわいがってくれてるけれ
ど、やっぱり昔の人間だけあって、かなり口うるさい。いちいち聞いて
らんないし、向こうも最近は私の事を諦めたのだろうか?あんまりうる
さく言わなくなったけど、不必要に心配かける事もないもんね。 



「今日はまた一段と化けたねぇ」 
和美に会うなり、彼女もまた、かなり気合いが入ってた。 
「週末は店忙しいからね。なかなかメイク直しもできないし、初めから
これくらいじゃないとおっつかないっしょ?」 
二人で仲良く出勤を果たすと、もう店は開店していた。 
「おはよう、今日はなんだか早い時間から込んでるから、あなた達もが
んばってね」 
NO1のお姉様が挨拶もそこそこに客席に戻った。 
やだな…、忙しいの。 
楽して稼ぎたいのに……。 
「やあ、佳織ちゃん久しぶり」 
客席につくとなじみ客の大野さんが私を隣に座るようにうながした。 
このおじさんは、かなり紳士的なオヤジで、客の中では上ランク! 
おかげで、今日の仕事は速く終わったように感じた。 
やっぱ仕事と言っても客商売は人間相手だから、その客によって、接客
する方もだいぶん違ってしまう。ひいきするとかじゃなく、感じ方が楽
になる。エロオヤジに接客している時なんかたったの10分でもすごく
長く感じてしまうけれど、いい人なら1時間も早く感じる。 
だから、なるべく自分にとって楽なお客に来てもらいたくて、電話や同
伴の率も高くなってしまうのは仕方ないと思うの。 
ま、好き嫌いを表に出しちゃいけないから、たんなる言い訳にすぎない
理屈だけどね。 
「和美ちゃん、佳織ちゃんお疲れ様。今日は忙しかったけれど、明日も
大丈夫? 
二日酔いで来れないとか言わないでね。あなた達に休まれるとお店もつ
らいのよ。 
本当なら毎日出勤してもらいたいんだけど、大学の方も大変だろうから
我慢してるくらいなんだよ」 
ママと言ってもまだ若い27歳の景子さんは、私たちが大学生だと思っ
て雇ってくれた。もしかしたら気づいてるかもしれないけれど、とりあ
えず、私たちの雇い主。 
ご機嫌を損ねない程度に、笑顔で答えた。 
「大丈夫ですよ。明日も土曜日で忙しいといいですね。ちゃんと出勤し
ますよ。 
今日はお疲れ様でした」 
適当に挨拶を済ませて、早速トイレでメイク直し! 
「ねえ和美、ちょっとこの格好じゃおミズ丸出しだから、遊びに行けな
いよね? 
着替えとか持って来たりしてる?」 
私の問いかけに和美は鏡を見ながらマスカラと格闘しつつ答えた。 
「んにゃ、用意してない。別にいいんじゃない?クラブに行くわけじゃ
ないし、適当にメシ食ってカラオケでも。クラブに行きたいなら、明日
にすれば?それなら私服も持って出勤すればいいだろうし」 
「そうよね。今日は別にたいしたイベントやってるわけでもないから、
適当にブラブラしよっか。とりあえずお腹空いたけど、何食べる?」 
「今日来てた客が、寿司食いに行くって言ってたから、寿司屋以外なら
どこでもいい。仕事終わってまで会いたくないし」 
なるほど、そりゃそうよね。 
アフター断って、店で鉢合わせたらヤだわ。 
「とにかく店出てから、考えよっか。歩いてたら匂いにつられて何かい
い店発見できるかもしれないしね」 
現在の時間は1時前。いくら繁華街で週末と言っても開いてる店はゴー
ルデンタイムに比べるとかなり少ない。 
飲み屋とか、チェーンの居酒屋ならたくさんあるけど、どうせなら小洒
落た店で晩餐したいし……。 
うろうろと、感じよさそうな店を物色しながら歩いてると、前方にナン
パ少年発見。 
「次の角で曲がろっか」 
ナンパやキャッチを見つけるたびに方向転換してるから、よけいに時間
だけが過ぎてしまうじゃねーか。 
「なんで私たちがあいつらに遠慮しなきゃならないだ?なんかむかつく
からやっぱり突破しよう」 
さっきとは別の意見で、前進あるのみ! 
「どっちでもいいよ。まっすぐでいいの?」 
お仕事疲れか、和美はかなりだるそうに歩いてる。 
「うん」 
ホストのキャッチもむかつくし、しょうもないナンパも今さら流行んな
いっつうの! 
ふんっ! 
勢いよく前進してる私たちに、ナンパ少年は気づいて近づいて来た。 
「お姉さん、一緒に飲みに行かない?」 
なーんで、ただで営業しなきゃいけないのよ? 
私たちと飲みたきゃ、金払えってえの。 
シカトして、行こうとしたら、その少年が和美の腕を掴んだ。 
いるのよねあつかましいって言うかしつこいってえの? 
コレがキャッチなら、法律違反で訴えるぞって脅せるけど、ナンパなら
なおタチが悪い。 
「ちょうどツレもいるし、2対2でいいと思うんだけど無視しないで
さ」 
「ごっ」 
ごんめんなさいと断ろうとした時、和美の言葉と重なった。 
「いいわよ。ただし飲みに行く前にご飯食べたいの」 
なんで?! 
OKの返事をした和美を驚いて凝視すると、彼女は小悪魔的な笑みを見
せた。 
なに? 
和美の視線の先をなぞるように追いかけると……。 
「笹岡隆志!」 
 同じ学校の超人気者。彼の周りはいつもハーレムなのに、なんで彼が
ナンパ? 
「知り合い?あいつが俺のツレなんだ。メシ行こうぜ」 
ナンパ少年が、笹岡隆志に向かって手を振ると、彼は腰掛けていた階段
を飛び降りて、私の目の前に来た。 
 こんな間近で見るのは初めてだけど、ホントにかっこいい! 
逆三角形の輪郭の中にくっきりとした二重のキツネ目が前髪の下から覗
いている。 
高すぎず低すぎない鼻に、形のいい薄い唇! 
どこもかしこも整いすぎなくらいに整った、正真正銘の男前! 
芸能人も真っ青になっちゃうんじゃないかしら? 

「隆史の知り合い?」 
ナンパ少年は笹岡隆志に私をチラリと見ながら聞いた。 
その瞬間、笹岡隆志はジッと私を見た。 
その目の色っぽい事! 
そりゃ、もうメロメロになっちまう。 
「いや…記憶にないけど」 
ああ、その声をこんなに近くで聞く日が来るなんて夢にも思わなかっ
た。 
「あら、彼の名前なら私も知ってるわよ。有名だから」 
和美がナンパ少年と喋りながら、さり気なく私を麗しの彼とコンビにな
るように前を歩く。 
「えっと、名前は?」 
いやぁぁぁん、名前聞かれちゃったぜ。 
「佳織」 
「ふーん、佳織ちゃんか。オレは知ってるみたいだけど一応名前は隆
志。よろしく!」 
佳織ちゃんだって、佳織ちゃんだってさ。 
なんかくすぐったい! 
もう、名前呼ばれただけでとろけちゃいそうな気分。私ってやばくな
い? 
心なしか頬も赤くなってるようだし、さっきから心臓もバクンバクンし
てるよぉぉぉぉ!
どうしよう!! 
「今まで仕事してたの?」 
彼の一言で、私は一気に心臓が潰れた! 
そうだ!私、今思い切りTHE水商売な格好してたんだ。 
このバイトは好きだけど、彼には見られたくなかった……。 
でも、こんな格好してて仕事じゃない、なんて言ったらただのケバイ女
になってしまうし…どうしよう。 
困って、うつむいてると彼は意地悪な笑顔をした。 
「こんな夜中から、メシ食ったら太るぜ」 
「大丈夫だもん!いつもこんな遅い時間には食べないから」 
「こんな時間、いつもは何してるの?」 
何だろう?別にこれと言ってしてることはないような、気がする。 
「普通だよ。友達とメールしたり、本読んだりとかかな?隆志くん 
は?」 
そうよ私の事なんかより、あなたのことが知りたい。 
「おれ?おれもそんなもんかな?でも、明日のこの時間はいつもと違う
かも……」 
ん? 
「なんで?」 
「佳織ちゃんがアド教えてくれたらLOVEメールしてるから」 
きゃぁぁぁぁぁぁぁ! 
隆志様からのLOVEメール?! 
欲しい!是が非にも欲しい! 
有頂天を超えて、宇宙の果てまでも脳みそ飛んでる私に、彼は自分のメ
アドを教えてくれた。 
「24時間ALL OKだから!佳織ちゃんの都合のいい時にメールし
て」 
もう、毎日毎晩毎朝しちゃいたい! 
顔の筋肉ゆるみっぱなしの私に和美の声が届いた。 
「佳織、彼一樹くんたちが知ってる店でもいいかって?」 
少し前を歩いてる和美が振り向きながら、聞いた。 
「うん、なんでもいい」 
何食べても、おいしいわよ。 
こんな男前を見ながらの食事なら。 
「って、佳織に何かした?」 
和美は隆志くんの顔を見ながら、戻って来た。
「別に何もしてないぜ、まだ」 
隆志くんは、ハテナ顔で和美に答えた。 
「だって、この子かなり赤面してるじゃない。何もしないのに、なんで
こんなに呆けてるのよ?」 
んまぁぁぁぁぁぁ失礼な! 
「呆けてなんかないもんっ!ちょっと照れてるだけだもん!」 
和美はそんな私を見て少し驚いたように笑い出した。 
「佳織が照れてる?うっそー、ただお喋りしただけで?今どき小学生で
もめずらしいわよ」 
そんな事言ったって、仕方ないじゃんか! 
和美に指摘されて、もっと恥ずかしくなってしまった! 
「和美と違って純情だからね、私」 
和美はケラケラ笑いながら、また一樹くんとやらの隣に戻った。 
言い逃げかよ、おいっ。 
「ごめんね、私もちょっと驚いてるんだけど、マジ照れてるみたい。そ
んなに顔赤い?」 
恥ずかしくてまともに顔を上げられない私に、隆志くんは優しい声で否
定してくれた。 
「大丈夫だよ。でも、そんな照れられるとオレまで緊張しそうだから、
もっとリラックスしようぜ」 
「うん」 
「とか言いながらまだ緊張してるだろ?」 
私の顔をのぞき込むように、隆志くんに見つめられて、さらに心臓がヒ
ートアップ! 
アップだよ、アップ! 
心臓もだけど、隆志君の顔もアップ! 
って事は、私の顔も隆志君からはアップに見えてるって事じゃ……。 
やばい!アップで見たらメイク崩れとかバレバレじゃん。 
んん゛゛゛゛゛゛! 
一人で落ち込んでいたら、隆志君は笑いながら私の手をつないだ。 
その瞬間、フワリと彼の香水が私のまわりにまとわりついてくれた! 
「ハハッ、今度は何を考えてるの?一人で百面相!佳織ちゃん見てたら
飽きなさそうだな」 
撃沈………。 
もう、彼のセリフも何もかも、私にはわからない。 
ただ、ただ、手をつないでいる事実だけが、はっきりと、意識できるだ
け。 
 きっと、この日の為にだけ私は生きてきたんだわ!
なんて大袈裟な事を思えるくらいに舞い上がってしまって、なんかもう
炸裂・爆裂状態になってしまった。 

「和美ちゃんって彼氏いるんじゃない?」 
食事をしながら、一樹くんがいきなり核心をついた質問をした。 
和美はニッコリと微笑んだだけで、それ以上は答えはしなかった。 
 うーん、和美には彼氏がいるかって? 
そりゃ、いない方がおかしいだろ? 
こんないい女を、ほっておいたら、世の中の女がみんなあぶれちまうっ
ての! 
私は男のローテーションが早いみたいだけど、和美にはきっちり中学の
頃からの彼氏がいるんだからね。 
「佳織ちゃんは?」 
隆志くんは、あんまり興味なさげに聞いてきた。 
まるで社交辞令みたいに、ただ、質問しただけ。 
「どうして?」 
なんだろ、さっきから隆志くんが冷たく感じる。 
冷たいとは、ちょっと違うのかな? 
醒めてる?感じ。
どこか距離を置かれているような感覚。
そりゃ、会ってすぐでいきなり馴れ馴れしいのもヤだけどさ。 
「ん?何となく」 
何となくで、そんな事聞くなよっ。 
確かに顔はかなり上級って言うか、スペシャルだけど……思ってたの
と違う。 
もっと、こうさわやかな女好きっていうの? 
よくわかんないけど、想像してた人物像とかなりのギャップ。 
「隆志くんは彼女は?」 
和美が私の代わりに隆志くんに質問してくれた。 
なんか、ギャップがショックで……。 
あんまり会話もはずまない……。 
「最近本命にふられた所」 
自嘲的に笑いながら、隆志くんは答えた。 
「ふられた?!」 
つい、聞き返してしまった。 
だって、こんな男前をふる女なんているの? 
学校でだって、いつもハーレム状態なくらい女はべらかしてるの 
に……。 
「ああ、おれのツレと出来たみたい」 
ツレに恋人を取られたの? 
けっこう、ハードね。 
私が和美に男取られたりしたら、笑って話しなんてできないけどな。 
「だから、今日出てたんだ。最近はもう繁華街には来てなかったんだけ
ど、隆志の気が晴れればいいなと思って」 
一樹くんは隆志くんにチラリと視線を投げかけながら言った。 
「そんなに真剣だったの?」 
いつも女生徒に囲まれて、ニコニコしてる彼からは想像もつかなかっ
た。
まじめに恋愛してた事実が。 
「よくわかんない。でもまあ、中学から付き合ってたし、浮気しても許
しくれてたのに、いきなり別れ話だもんな、びっくりした」 
浮気しても許してくれた? 
浮気しても、許せる女なんているのかな? 
すごく怒りたいけど、それでも別れたくないから許したんじゃないの? 
束縛されたら過剰にイヤがる男だったから、別れないためには許すしか
なっかただけ 
なんだよ……。 
でも女だって、どんな人間だって我慢には限界があって、それが爆発
したんだよ、きっと……。  
 声が聞きたい、見つめられたい!!私だけを見て! 
 それが普通の望みだもの……。 
でも、隆史くんとつきあえるなら、私だって浮気の一つや二つ許せるか
も?! 

こんな男前を独り占めしたいなんて、罰があたるよ。 
「オレ的には、かなりのタイプだったんだけどな」 
隆史くんはさらりといいのけた。 
「好みのタイプじゃなく、都合のいい女タイプだった?の間違いじゃな
いの?」 
 和美が間髪いれずに、隆史くんに突っ込んだ! 
「えっ?」 
一樹くんと私は一瞬、目を合わせてから和美を見た。 
和美はふんっっ!てな感じに顔を背けながらも、まだ、隆史くんにつっ
こんだ質問をした。 
「あなたには、自分のエゴを通して、聞いてくれる女がいいんでしょ?
自分の事を心底を愛していて、尽くしてくれるだけの女が」 
隆史くんもこの問いかけにムッとしたらしく、反論した。 
「へえ、和美ちゃんは初対面の男のタイプがわかるほど、経験があるん
だ?」 
隆史くんはかなり嫌みな程、目を細めながら言った。 
 その顔がまた、魅力的に見えた。 
なんだろう?意地悪そうな、何かたくらんでそうな、陰険な顔つきが、
とても、彼のつり目に似合ってて、素敵だった。 
「さあ、どうかしら?私より隆史くんの方が経験的にはすごいんじゃな
い?ただ、本気の恋愛を1度くらいは経験した方がいいかな?って、
個人的には思うけど」 
「へぇ、じゃあ和美ちゃんが本気にさせてくれる?」 
隆史くんはその綺麗な顔を色っぽく輝かせた。 
なのに、なのに和美ってば思い切り笑い飛ばしたのよ!! 
思い切りだよ、ホント。 
「あははっはは! 
面白い冗談ね、私がどうしてそんな事しなくちゃならないのよ。時間が
もったいない 
わよ」 
いいえ! 
時間なんかじゃなくて、隆史様のせっかくのお誘いを蹴る方がもったい
ないのよ!! 
たっく! 
こんな男前をあしらうなんて、どういう了見かしら? 
そりゃ、もちろん、誘いにのられても、私は困っちゃうけど…。 
「なんか、かなりオレの事嫌ってない、彼女?別にいいんだけど」 
私の耳に触れるほど近くで、隆史くんがささやくように小さな声で言っ
た。 
少し拗ねたようなその態度が、なんだかとてもくすぐったい♪ 
 和美は思いきり不機嫌な態度で、その場を白けさせてしまった。 
一樹くんが、一生懸命盛り上げようとしているのに、反省の色がまった
くないのか、 
全然応じようともしない。 
「なんか、今日はお開きにしようか……」
どうあがいても無理だと諦めたのか、一樹くんの口からそんな言葉が漏れた。 
「そうね」     
う゛っう゛っ。 
頼み綱だった一樹くんのお開きに、ニッコリと同意を示した和美ちゃ
ん。 
私はあなたを恨みたい心境だわ……。 
「じゃあ、今度メールする」 
隆史くんもサッサとタバコをポケットにしまいながら、ニッコリ笑顔で
私にそう告げた。 
 きゃぁあぁぁぁぁぁぁ! 
ホントかしら? 
ホントにメールが来るのかな? 
毎日、毎晩携帯をチェックしなくちゃ!だわ。どんなメールなんだろ? 
きっと、メールもかっこいんだろうなぁ。 



「さてと、どうする? 
飲み直しでもしない?」 
二人とバイバイして、すぐ和美は不機嫌モードを解除していた。 
「和美ってば隆史くんにすごく失礼な態度だったよ!」 
「ああ、仕方無いわ。私ああいうタイプ大嫌いなのよ。それでもナンパ
されただけありがたいと思いなさい! 
佳織が好きだって知ってるから、ナンパに乗ったんだよ?」 
「そりゃ、感謝してるわよ! 
私は周りを見てるようで見てないから、隆史くんが近くに居た事すら気
づかなかったんだもん。 
でも、どうせなら、もう少し普通に接して欲しかった…」 
「贅沢言わない! 
どうせ携番くらい交換したんでしょ? 
後は、自分で頑張りな!」 
はいはい、もう今更言っても仕方ないもんね。 
それに、一緒にご飯食べただけでも幸せ♪ 
しかもメアドまで交換できたし! 
うふふふふふっふ。 
笑いが止まらないかもぉぉぉぉぉぉぉ。 
「ほら!エロいぞ!思い出し笑いなんて」 
和美の辛口にも全然応えないくらいに、私はニヤニヤしてしまう。 

 中学の頃、私はいわゆるヤンチャっ娘だったのよ。 
で、彼氏とかもやっぱソレ系で出会う人出会う人、そんな感じだった
んだけど、偶然、たまり場になっている遙先輩の家で、初めて彼を見た時
に私は一目惚れをしてしまった。 
でも、用事があったのか彼はすぐに溜まり場から出て行ってしまった
から、ホント顔を合わせたのって数分くらいなんだけど、私の心にはも
うしっかりと彼が居着いていたのよ。 
でも、私だってそんなお馬鹿さんじゃないから、彼とどうこうなれるな
んて考えもしないで、彼氏と適当につき合ってたんだけどね。 
 もう、心境はアイドルの追っかけ気分。 
たまにコンビニで会う事もあったんだけど、やっぱり彼は私なんて覚え
てないみたいだったし…。 

でも、でも!! 
それが、高校に入学した時に、同じ学校だと知って、かなり興奮したも
んだわ。 
 そして今日なんて喋っただけじゃなく、一緒に食事もしたし、手まで
つないじゃったあげくに…♪ 
ホント、幸せだわ。 

和美と飲み直しながら、私は幸せの余韻に浸りきっていた。 
もちろん、明日学校があるから適当に帰宅したんだけど。 






2004-2005©白雪姫-hime-