ボックスの電話がなって、予約していた時間が終わってしまった。
「これからどうする?」
会計を終えて、出入り口で待っていた私に隆史くんは、手を差し出しな
がら、聞いて来た。
えっと、この手…つないでもいいんだよね?
そう言う意味だよね?
ゆっくりと、差し出された手に、自分の手を重ねた。
すると、隆史くんは指を交互にからめながら、カップルつなぎをしてくれた。
ああ、マジ幸せ。
「隆史くんって、香水つけてるよね?」
「え?臭い?」
「ううん、違う。いい匂いだよ。
もしかして、EGOISTのプラチナム?」
昨日から思っていたんだけど、プラチナムってこんないい匂いだっけ?
よく香水って付ける人によって変わるって聞くけど、ホントなんだ。
「佳織ちゃんはアリュールだろ?
最近出たヤツだよな」
「うん。おそろいみたいだよね」
同じブランドの香水♪
てか、なんでアリュールってわかるんだ?
レディースの香水なんて、名前は知っていても、匂いまでわからないんじゃ?
うーん。
「香水もおそろいだし、オレらつき合わない?」
????????
香水の話から、脈絡なく。
全然告白ってムードもサラサラなく、淡々と切り出されて、その意味を
理解するのに、少し時間がかかってしまった。
「なんで??」
隆史くんは、ニッコリ笑顔を作った。
「別にいやならいいよ」
な、なんだ?
なぜ、笑顔だ?
「いやじゃない!全然!!」
むしろお願いしたいくらいだし。
でも、隆史くんにとって、そんなたいしたことじゃないんだろうな。
つき合おうって言うのも、いやって言われたとしても…。
「じゃあ決定!
今日から佳織ちゃんはオレの女ね」
「じゃあ、隆史くんはオレの男?」
「オレって、女の子なのに。それじゃあオレがホモみたいじゃん」
トントン拍子に恋人になってしまった。
まるで実感がない。
世の中、こんなに上手く行くのか?
オレの女だって♪
ほかの男にそんな事言われたら、「私はあなたのモノじゃない!」って
激怒しちゃいそうだけど、隆史くんだったら、かなりうれしい!!
なんか、独裁的な感じでステキ★
そのまま、タクシーで私は隆史くんの家へお持ち帰りされた。
「もしかして一人暮らし?」
1LDKの部屋に通されて、どーんと置かれたベッドが目に入った。
「うん。中学の頃から親と一緒じゃない」
男の部屋までノコノコついて来て、覚悟がないわけじゃない。
今更ブリッコしても仕方がないんだけど…やっぱり、しちゃうんだよね?
不安半分、期待半分な気持ちで、ドキドキしている私を横目に隆史く
んは服を着替えて、ベッドに入った。
「こっち来る?」
流し目ってやつだろうか?
掛け布団を少しだけ上げて、私を招き入れる態勢を整えながら、彼の目
は艶っぽく彩られていた。
「………」
誘われるままにベッドに入ると、隆史くんは優しく私のまぶたにキスを一つ。
「何かドキドキしてきた」
男のお前が言うか??
「私の方が絶対ドキドキしてるモン!!」
小さく抗議をすると、隆史くんはニッコリと優しく笑った。
「どれくらい?」
そう言いながら、私の胸の早さを確認するタメ?に触れた。
「ホントだ、かなり早い」
うわぁ。
触られると、もっと早くなってしまうんですけどぉぉぉぉ。
「………」
ダメだ。
心臓が潰れちゃいそう。
「胸でかいよな・・・何カップ?」
「……C」
そんなに大きいわけじゃないけど、もう何がなんだかどうでもいい。
そんな会話をしながら、器用に片手でブラのホックを外された。
今まで適当に経験あったけど、彼ほど、優しくしてくれたのは初めてだった。
思春期のやりたい盛りなんて、自分がイク事の方に重点を置いたりと
か、感じさせてくれても独りよがりに近いモノがあったりするのに、す
ごく丁寧に優しく私を求めてくれた。
顔が良くて、Hも上手いなんて、相当遊んでるんだろうな……。
でも、そんな事すら忘れてしまうくらい、その時は私だけがすごく愛さ
れている錯覚に陥ってしまいそうな程、ステキだった。
幸せな余韻に浸っていたいけど、もう空が明け始めている。
いいかげん、帰らないと、ばあちゃんが心配する。
枕の下に入れて置いた携帯を取り出すと、5時をすぎていた。
「隆史くん」
隣で、眠りかけている愛しい人に呼びかけてみた。
「……ん?隆史って呼んでみて?」
うっすらと目を開けながら、彼は優しくそう言う。
「隆史?」
「そう。もう一回」
「隆史…」
隆史は、満足そうに微笑みながら、もう一眠りするタメに目を閉じてしまった。
「私帰るね」
「…なんで?」
やっと、ちゃんと起きたのか、上体を起こしながら、私を見た。
「おばあちゃんが起きる前に帰らないと、心配しちゃうから。」
「送るよ…」
眠いだろうに、ベッドから起きあがろうとする隆史を私は止めた。
「大丈夫だよ。ここからすぐ近くだから。
寝てていいよ」
徒歩5分くらいの所に、彼の家があった。
先輩の溜まり場にいたくらいだから、ご近所だとは思っていたけど、こ
んなに近いとは知らなかった!!
「おじゃましたした」
小声で挨拶して、玄関を出た。
もう明るくなった空の下を歩きながら、私の心はとても晴れやかだった!
きっと、軽い気持ちでつき合おうって言ったのだろう。
だから、本気なんかじゃない。
ソレこそ、ヤル為に形式だけつき合ったのかもしれない。
それでもいい。
ずっと好きだった人に抱かれた。
それ以上、何を望むって言うの?
こんな幸せな事なんて、ないわ。
あんなに大切に私の事を愛してくれた。
たった一晩でも、彼を体中感じる事ができるなんて、夢みたい。
もう、これ以上望んだら、きっと罰が当たってしまう。
ソッと部屋まで入ってベッドに横になりながら、自分で自分の身体を
抱きしめた。
幸せだよね。
もう、十分だよね。
なのに、虚しい。
彼が好きだ。
ホントは、ちゃんとつき合いたい。
どう、言い訳をしても、普通に恋人をしたいと思ってしまう。
最初は姿を見つけるだけで良かった。
次は声を聞けるだけで、目が合うだけで、お喋りするだけで。ドンドン
と欲求が増えていく、満たされれば次から次へと望んでしまう。
女はみんな貪欲なの?
それとも、私だけが…?
隆史……あなたが好き。
それだけでいいのに、私はあなたにも好きになってもらいたいと思って
しまうの…。
あなたが女の子にモテるのは知っている。
学校で、いつもかわいらしい子達に囲まれてるのを遠くで見ていた。
地元のツレからもかなり女癖が悪いって事も聞いたりしている。
そんなこと分かってるのに、あなたに私を好きになってもらいた
い…。
あなたを独占したい!
「……昨日はマジごめん!」
めずらしく?遅刻なく登校してきた和美は私と目が合うと、すぐに手を
合わせた。
「…いいよ。私こそごめんね。
和美が隆史の事苦手なの知ってるのにつき合わせて」
「別に苦手じゃないよ。ツレにいたら面白いと思うけど、佳織の彼氏と
かだとかなりイヤだよね。佳織が泣かされるのわかってるのに、応援で
きないし」
………。
「で、いつから『隆史くん』から『隆史』に昇格したの?」
意地悪そうに目を輝かせ和美は笑った。
「昨日、和美を一樹くんが追いかけて行ったのよ」
「うん、知ってる。一樹くんに送ってもらったもん」
そうだったの?
「なんだ、一樹くんちゃかり和美を送ってたんだ」
人ごとながら、ちょっとうれしいぞ。
どうせ、和美にはすっごいステキな彼氏がいて、くっつく事はないんだ
けど、でもいいのだ!
今の私は、片思いしている人すべてを応援してあげたい気持ち。
「私の事はいいから、それで?
一樹くんがいなくなったから、二人きりだったわけでしょ?」
「……」
二人きりと言われて、マザマザと今朝?昨日の事を思い出し、赤面して
しまった。
「ヤッたんだろ?」
そんな露骨な言い方…。
「ま、コレで諦めもつきそうじゃん。
きっぱり次の男探そうぜ!!」
「……」
やっぱり、そう思うよね。
隆史に本気になったら、かなりつらい思いをするだろうのは目に見える程だ。
なのに、私はまだ彼を好きだったりする。
以前よりも、その気持ちは大きくふくらんでしまった。
きっと、彼に抱かれた女なら、誰もが彼を好きになるだろう。
あんなに大切に抱かれたら、勘違いしたくもなるだろう…。
「また、週末に出会いを求めて徘徊でもしようね」
和美はチャイムと共に、その言葉を言い残して、席に戻った。
教科書を開いて、先生のかったるい話が、段々と子守歌に聞こえてき
て、昨日寝てないのもあったせいか、私はウトウトと眠りに入ってしまった。
今朝、仮眠くらいはと思ってベッドに入っても、全然眠れなかったの
に、学校だとなんでこうも気持ちよく睡眠態勢になってしまうんだろうか?
なぞだ。
「次、視聴覚室に移動だって。ほら、行くよ」
社会の教科書とノートを片手に、和美に声をかけられるまで、私はマジ
寝していたらしい…。
いつの間に、1時間目が終わったんだ?
終了の挨拶もしていないぞ…。
「ビデオ?やったね!また寝れる」
などと不謹慎な事を喜びながら、和美と二人で廊下を歩いていると、階
段からにぎやかな女の子たちの声が聞こえた。
体育をしていた生徒達が、オヤジたちが生唾モンの体操服姿でゾロゾロ
と廊下を曲がろうとしている。
その集団の中に、ハーフパンツの隆史と一樹くんもいた。
ゲッ!
私、オナ高だって言ってないんだよな…。
「和美!ごめん教室に
忘れ物した」
回れ右をして、教室に戻ろうとした。
ああ、気が付かれませんように…。
心の中で願いながら、足取りを早くした時、一樹くんが和美に気がつ
いてしまった。
ばかずき!
「アレ?和美ちゃん…だよな?
学校一緒だったんだ!!」
ああああああああああああああ。
「体育だったんだ?お疲れ」
サラリと挨拶だけして、そのまま進もうとした和美に、隆史がいらない
一言を付け加えた。
「同じ学校だったんだ?
ちょっとコスプレ入ってるよな。和美ちゃんの制服姿って」
「あらそう。あなたにどう思われようが別に構わないわよ」
ああ、またケンカ腰で会話してるよこの二人。
「オレは和美ちゃんと仲良くしたいんだけどな」
隆史の周りにいた女の子たちが、一様に和美を上から下までジロジロと
観察している。
ああ、嫉妬されてる。
ホント、凄い人気なんだ。隆史って。
「私は仲良くしたいと思ってないから、あんまり話しかけないでくれる?
じゃ、佳織早く行かないと後ろの席なくなるよ」
和美は女の子の視線にも、隆史や一樹くんにも動じる事なく、クルリと
その集団に背を向けた。
ああ、それなのに、それなのに!!
「それじゃあ、佳織が困ると思うんだけどな。彼氏と友達が仲良しの方
が、普通はいいんじゃない?」
隆史は、さっきから私を見ようとせず、和美にばかり話しかける。
………もしかして隆史、怒ってる?
「はぁぁぁぁぁぁ?
一度寝たくらいで、佳織を彼女扱いですか?
うぬぼれるのも、度を超すとかなり危ないんじゃない?」
怒っていたのはむしろ、和美だった。
「寝たって…。
佳織ってばそんな事まで報告しちゃって、おれ、もうお婿に行けないじ
ゃないか」
お茶目な冗談を言いながらも、目が笑っていない。
それに、和美もかなり冷たい視線を私に向けている……。
しっか〜も!
周囲にいた女子たちが、さっきまで和美に向けていた好奇心の観察眼を
私に向けている……。
これって、八方塞がりじゃん。
「佳織、ちゃんと説明しな?
さっきのじゃ足りないみたいだね」
和美は呆れたようにソレだけ言うと、私を置いて一人で視聴覚室に向
かいだした。
「ちょっと、待って、和美」
追いかける私を引き留めるのは、やっぱり隆史しかいないだろ
う……。
「佳織がちょっと待て。
悪いけど、先戻っててくれる?
オレ、佳織と話があるから」
一樹くんにそう言いながら、ほかの女の子たちからも離れて、私を階段
の踊り場まで引っ張って行く。
「……何で同じ学校だって、黙ってたんだよ?」
いつになく、真面目に低い声で言われてしまった。
男前が怒ると、怖いんだってば!!
「聞かれなかったから……」
「………」
隆史は無言のまま、私を睨みつける。
だから、そんな綺麗な顔で怒らないでよ!!
「だって、ほら…そんな会話しなかったでしょ?」
「それで?」
「それでって言われても…」
うーん、だってホント聞かれなかったし、言う機会もなかった
し…。
「同じ学校だからオレの事知ってたんだ?
で、言いたくなかった理由は?
一緒の学校だとバレたくなかったんだろ?
さっき、一瞬隠れようとしたろ?
ちゃんと見てたよ、佳織の事」
………だって、同じ学校だったら、あなたはつき合おうなんて言ってく
れなかったかもしれない。
毎日学校で会うのって、ウザイもん。
私だって、そんなのイヤだから今まで男子校の子や、学校が全然関係な
い男ばかりとつき合ってたくらいだし…。
「ま、いいや。
もうすぐ授業始まるし、帰りにゆっくり言い訳を聞いてあげる」
意地悪そうに、だけど優しい目で隆史は笑った。
「え?」
怒ってたんじゃ??
許してくれるの?
それに、帰りにゆっくりって…一緒に帰るって事だよね?
「一緒に帰りたくない?」
嫌味なやつ・・・。
私が一緒に帰りたくないわけないのを知っていて、そんなことを聞いてくる。
でも、三白眼が優しく微笑んでるように見えるから、私は大きく否定す
るしかできない。
「全然帰りたい!一緒に帰ってくれるの、超うれしい!」
「じゃあ、帰りに教室行くよ。何組?」
「3組」
どうして、こうもあしらわれてしまうのだろか?
しかもいとも簡単に。
でも、一緒に帰れるんだ!!
うれしい!!
ルンルン気分で視聴覚室に入ると、もう一つの難題を思い出してしまった!!
だって、和美の顔が怒ってるんだもん。
しっかりと一番後ろの端の席をご丁寧に二つも陣取って、私を睨んでいる。
「で、話して頂戴。きっちりと」
声だけでもかなりキレてるのがわかる。
はぁ、何から説明すればいいのだろうか?
「昨日、カラオケボックスで二人きりになって、普通に会話してたらい
きなりつき合おうって事になったのよ」
「そのいきなりって何よ?そこを説明しないさい、そこを!!」
「いや、だからホント唐突なの。香水の話してたら、お揃いだね、つき
合おうって」
「なんでそうなるんだ?
アイツの頭の中ではどうつながってるんだよ、一体」
それは、私も知りたい。
「だからね、ヤルための言い訳じゃないかなって思って。本気にしてい
なかったのよ。
もちろん、本気にしてなかったからこそ、和美にも言わなかったんだけ
ど…。
でも、うれしかったよ、まさかそんな夢みたいな事が現実に起こるわけ
ないって感じでしょ?」
「だけど、どうやら本気だったみたいだね。
あんなギャラリーの真ん中で公表してるんだから」
「……ソレもわかんない。和美に突っかかりたかっただけで、本気か
どうかなんて…」
「はいはい、それは私にもわかんないんだけど、佳織はどうしたいわけ?
ヤツとつき合いたいの?
それとも、もういいの?
…………。
って、愚問か。好きなんだよね?すっごい」
「うん」
好き。
大好き。
すっごい大好き。
今までの恋愛なんて、上辺だけだったのかもしれないと思える。
ただ、彼氏がいたら良かっただけで、その相手なんて大して関係なかった。
強いて言うなら、ダンスが上手いだとか、ケンカが強いだとか、お金を
持ってるだとか、そんなオプションばかりに気を取られて、自分の心な
んて、ほとんど関係なかった。
そうやって考えると、まともに好きな人とおつき合いするのって、初め
てかも?!
一体、どんな人生を歩んで来たんだよ、私。
「じゃあ、がんばりなよ!」
和美は歯を見せて、ニッコリ微笑んだ。
「多分、長続きしないだろうけど」
うっ!
よけいな一言をきっちりとお見舞いしてくれて、ありがとう。
でもその意見、かなりリアルなのよね…。
反論できないくらい。
それでも、どんなに苦しくても、彼の恋人でありたい。
和美とお喋りをしてるだけで、授業が終わってしまい、自分のクラス
に戻ると、もう噂を聞きつけたのか、数人の女生徒が隆史の彼女を確認
しにやって来た。
「あれが、隆史くんの彼女?
全然、普通じゃん!!」
数人の女の子が、わざと聞こえるように、ヒソヒソと陰口を言っている。
「なんであんな子とつき合う事になってるの?」
はいはい。
あなた達の言いたい事は、なんでも言ってなさい
別に、友達でもない人にどう思われようが、全然気になりません。って感じ。
裏でコソコソ言ってる分には、私に害がないからいいのよ。
もともと、学校で仲良しこよしってのも苦手で、親しい友人を作ろうな
んて思ってなかったから。
ただね、ただ。
隆史とつき合う事で、私があの子達に何か迷惑をかけたのか?って聞い
てやりたい。
っったく!
「あんな男のどこがいいんだか、馬鹿がたくさんいるよ」
和美にもちゃんと聞こえてるのだろう。女子生徒の文句が。
呆れたように、私を見た。
「あんたも、その一人だっけ?
がんばれよ!!」
応援してくれるんだかけなされてるんだか、わからないけど…。
「ありがとう。」
時間を追うごとに、3時間目より4時間目ってな具合に、ギャラリーの
数が増えた。
さすがに、楽観出来ないような気持ちになって来た…。
「一体、何者だよ?笹岡隆史って」
和美もにわかに騒がしくなってしまった環境にとまどいを始めている。
「すごい人気だったって事かな?
でもまぁ、気にせずにランチに食堂に行こうよ!かなりお腹空いたもん♪」
「お腹空いたって、アンタ授業のほとんど爆睡してたじゃん」
あはは!
「ほら、寝る子は育つって?アレよアレ。
とにかく腹減ったぁぁ」
「お気楽娘だなぁ。今の状況わかってるの?」
「私が考えてもどうにもならないでしょ?
勝手に集まって来て、あげくに陰でグチグチ言われてもどうしようも
ないじゃん。
はっきりケンカでも売られたら、買う事もできるけどね。だから今は腹
が減っては戦はできぬ!って感じで飯・飯・飯!
とにかく、何か食わせてくれって感じなのよ」
和美は笑いながら、ため息をついた。
「お気楽娘だね相変わらず。私はこのまま彼女達が遠巻きに敬遠してる
事を願ってるよ。
アンタ、キレるとかなりやばいもん」
キレるとやばいと言われても…。
ま、何はともあれ、食堂だぜ!!
と、頭の中でメニューをあれこれ思い出しながら、食堂に到着した!
うん、いい匂い。
「私、うどんでいいからよろしく!席取っておくね」
和美は食券分のお金を私に渡して、さっさっとテーブルに行った。
うどんの食券を2枚買って、カウンターに出すと、すぐに食堂のおばち
ゃんが丼を二つくれた。
「ありがと!」
学食って、テンポが速いから好きなのよね!しかも安いし。
かなりご機嫌で、和美が座ってるテーブルを探しながら、歩いている
と、私は何かにつまづいて転んでしまった。
そりゃもう、思い切り転んだので、うどんはおシャカ。
しかも所々にうどんのつゆがかかって、熱いのよ!!
つまづいたモノが何か、確認しようと振り返ると、2.3人の女の子
が、うれしそうに私を見ていた。
「あら、ごめんなさい。
人がいるのに気づかなかったの」
謝りながらも、その声はとてもうれしそう。
コイツらの足にけつまずいたんだ!!
許せない!
すっごくお腹空いてたのに………!
グッと拳に力が入るのがわかった。
なんで、私がこんな目に遭わなくちゃならないのよ?!
ああ、むかつくぞ!かなり!!
握りしめた拳を振り上げようとした時、和美の声が私の耳に届いた。
「佳織!やめな!」
慌てて駆けつけてくれた和美は、床に散らばってるうどんを片づけなが
ら、私に足をかけた彼女たちに向かって一言はっきりと言った。
「この位にしときなよ?
今度何かあったら、ただじゃおかないからね!」
「きゃぁ、怖い!!
私たち、ホントに気づかなかっただけなのにぃ」
語尾をのばしながら、ブリっコをする彼女達に、さらにむかつきを覚えた。
「こんな馬鹿な奴らに好かれて、隆史もさぞ迷惑でしょうね」
ふんっっ!
私の一言が、かなりキツかったのか、彼女たちの顔が一気に歪んだ。
「何よそれ?
関係ないでしょ?」
マジ、呆れるよ。
どうして、こうも無駄な労力を使う事ができるんだろうか?
どうしても私が気に入らないんだろう。
彼女たちの嫌がらせは、もっともっとエスカレートして行った………。
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