デンジャーボーイ
デンジャーボーイ

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1 プロローグ 2 ナンパな出会い 3 二人きり 4 香水 5 いじめ 6 ついにブチ切れ?!
7 優しい彼氏 8 疑惑の香り 9 お金持ち 10 結婚 11 再び登場?? 12 エピローグ

●●●
7 優しい彼氏
「大丈夫か?」
校長室を出ると、そこには心配そうな顔をした隆史と和美がいた。
「………」
隆史の顔を見た途端、私の目から涙があふれて来た。
今度は嘘泣きなんかじゃなくて、ホントに自然と涙がポロポロとこぼれ落
ちる。
「そりゃ、どんだけ強がっても傷ついてるに決まってるよね。
大丈夫、ちゃんと佳織の計算通りに事は運んでみせるから」
和美は、泣き崩れる私の肩をポンポンと叩いて、うなずいた。
「和美ちゃんから聞いた。
なんで一人で頑張ろうとしたんだ?
オレを頼ればいいのに」
私の肩を抱きしめながら、隆史は自分のネクタイをほどいた。
「今日はコレを締めとけばいい」
私の襟元に器用に自分のネクタイを締めてから、隆史の神経質そうな細い
指先はソッと、涙を拭ってくれる。
 その優しさが、よけいに私を切ない気持ちにさせる。
悲しいとか、苦しいとか感じなかったんじゃない。
感じようとしなかったんだ。
ホントはすごく、悲しかったくせに……。
隆史と一緒に居られる幸せで、私は他の感情を押し殺していた。
でも、ホントはこんなに傷ついていたんだ…。
止まらない涙を何度も何度も、優しく拭ってくれる隆史。
私は、あなたの前ならホントに泣ける。
嘘泣きなんかじゃなくて……。
 隆史はチャイムが鳴っても、私が泣きやむまでずっと、そばにいてくれた。
「もう大丈夫だよ。二度と佳織にこんな思いはさせないから」
泣きすぎてかなり腫れてるまぶたに、優しくキスをくれる。
「うん」
どれだけ泣いたのか、やっと心が落ち着いて来た。
隆史は、ずっと手をつないだまま、私をプラチナムの匂いで包んでくれる。
「どうする?このまま授業、出る?
それとも、今日は早退する?
それならオレも早退するよ」
どこまでも優しい隆史。
私は、愛って女を陥れるために、色々としたのに、それでも優しくしてく
れる。
「大丈夫、授業出るよ。こんな事で単位落としたくないし」
「じゃあ、昼休み迎えに行く。心配だから教室からあんまり出るなよ?
後、和美ちゃんと一緒にいるんだぞ」
まるで、小さな子供に言い聞かせるみたいに隆史は何度も私にそう言った。
「うん。ホントありがと。それとごめんね、授業さぼらせちゃって」
心配顔を一瞬で笑顔に変えて、隆史は首を左右にふった。
「また遠慮してるよ、この女は」
「あはは」
隆史は、授業中で静まりかえった廊下を手を放す事なく、私の教室まで送
ってくれた。
「次、何の科目?」
「え?数学」
「じゃあ、オレの担任じゃん。
ちゃんと挨拶してかなきゃ」
え??????
悪戯っ子みたいに目を輝かせて、隆史は教室に入った。
「鈴木!ごめん遅刻だけど、佳織の場合理由があるから、許してやってな」
教卓の上にある出席簿をわざわざ鈴木先生に渡しながら、隆史ははげます
ように私にうなうずいた。
「それはいいが、笹岡。お前は理由ないから遅刻扱いだぞ?
さっさと自分の教室に行け!」
「はいよ」
クスクスと教室から笑いが漏れる。
愛は、私を殺してしまいそうな悪意に満ちた視線で見ている。
だけどもう、ホントに怖くない。
「お前の彼氏、なかなかやるじゃん!」
隣の席の生徒が、自分の席に座った私に話しかける。
「……元ヤンだろ?ちょっと怖いって感じだったけど、お前には優しいみ
たいだな」
ネクタイを指しながら、にっこりと笑ってくれた。
 私の嘘泣きに、本気で心配してくれていたんだ……。
と、感じた。
彼は、彼なりに自分の正義で、私を心配してくれてたんだ。
なんか、マジで涙出そう。
うれしい。
世の中って、捨てたモンじゃないかもしれない。

 三日後に、私は再び呼び出しを受けた。
今度は、生活指導室。
そこには田所愛も、いた。
「手紙を回した生徒を順番に当たって行ったら、彼女にたどりついた」
そんなの、一日でできるだろうに、なんで三日もかかるんだ?
まだろっこしいなぁ、もう。
「自分がやったことも認めている。
それでだ、学校としては停学と言う事になったんだが、杉山はそれで納得
できるか?」
「……手紙はあなただったとして、私のネクタイ隠したのは誰?机と教科
書の落書きは誰?全部あなたなの?」
愛は、俯いたまま黙っている。
 そんな彼女の代わりに、一応一通りの事は調べてくれたのだろう、担任
が口を開いた。
「それは違うらしい」
「じゃあ、一体誰よ?」
彼女だけをターゲットに絞っても、意味がない。
私にイヤな思いをさせた全員、許せない。
「………」
ソレは言えない。
って感じで、担任の青木も黙ってしまった。
「そうですか、別にいいですよ。
じゃあ、私が受けた精神的苦痛のすべては、代表として彼女にすべて負っ
てもらってもいいって事ですよね。
停学くらいじゃ、私の気持ちは収まりません」
「杉山っ!」
何を言っても引かない私に、担任は大きな声で怒鳴った。
馬鹿じゃないんだろうか?
怒鳴っても、何も解決しないのに。
こうやって、話し合いの機会を作ってあげたのは、私。
「いじめを軽視してませんか?青木先生。
それとも、自分のクラスから退学者を出したくないって事かな?
これは学校もそうだけど、問題を起こした生徒を自主退学って形にします
よね?
形式だけ、取り繕うって感じが見え見えで、セコイ。」
ホントの事を言われたのがくやしいのか、青木の顔がドンドン赤くなって
いく。
「杉山!いいかげんにしろっ」
「青木先生、そう熱くならないで」
生指の先生は、青木を宥めるようにイスに座らせた。
「杉山はどうすれば、納得が行くんだ?」
「別に、彼女がきちんと名前を教えてくれれば、学校の言う通り停学で結
構です。
どうせ、停学って言っても初犯だから1週間位でしょ?」
だいたい、2回目の停学が2週間で、それ以降の停学が無期になるってのが、学校の相場
よね。
中学の時もそうだったし。
「……もし、お前が納得いかなければ、裁判するのか?」
「裁判になっても、私も彼女も未成年だから公開されないわ。
そんな大げさな事じゃないでしょ」
ただ、いじめを学校内で解決できなかったと公になって、週刊誌くらいは
ノッてくるかもしれないけど。
私は、とにかく彼女の口から、他の奴らの名前を聞きたい。
そうすれば、彼女は仲間を裏切った事になる。
停学が解けても、もう、あのグループに所属することがないようにしなく
ちゃ、また同じ目に遭うのはたくさんだわ!!
「……名前を聞いてどうするんだ?」
生指の先生は、ちょっと私の意見に傾きつつある。
どうあっても、裁判だけは避けたいってのが、学校の意見みたい。
「別に、ただ、彼女たちにもちゃんと、処罰を与えてもらいたいだけ。
田所さんだけが停学じゃ、理不尽でしょ」
例え1日謹慎でもなんでもいい。
田所愛が口を割ったって、事実が伝われば。
「…わかった。杉山の言う通りだ。
ただし!お前にはその名前は教えられない。
それでもいいか?」
もちろん!
私は、大きくうなずきたい気持ちを抑えて、軽く返事をした。
「わかりました」
もう、胸の中でガッツポーズだわ!!



 今度は一樹くんも交えて、3人で私が出るのを待っていた和美は、満足
そうに微笑んでいる。
「でも、ホント佳織をココまでキレさせるなんて、ある意味、田所も才能
あったよ」
……それは、褒め言葉なんだろうか?
「オレも思う!
これくらいで済んで助かったよ。
下手したら、佳織ちゃんが実力勝負に出て、彼女が入院でもしたらどうし
ようか、って考えてたんだから」
………それも、褒められてるのだろうか?
「もういいじゃん、終わったんだから」
隆史はまだ少し心配そうな顔で、私を見つめている。
「でも、安心できない。
同じクラスだったら良かったのに……」
校長室呼び出し以来、隆史はすごく心配性になって、私を片時も放そうと
しなかった。
朝は私の教室まで送ってくれて、和美が登校して来るまでずっとそばにい
て、休み時間も昼休みも、そばに居てくれた。
もちろん、トイレの時は和美を一緒に行かせる程の徹底ぶり。
  愛されてるなって思った。
ホント、愛されてるよ、私。
あの時に隆史が締めてくれたネクタイは、「側にいれない時のお守り。」
と言って、そのまま、今日も私の襟元にある。

「でも、ちょっとやりすぎたかな?って思ったりもするのよ。
私には停学の一度や2度くらいって感じなんだけど、お子ちゃまな彼女には、もしかした
ら入院の方がマシだったかなって…」
コレは本音。
まぁ、もちろん入院する程、殴ったりはしないけどね、さすがに私も高校
生だし。
 だけど、隆史は気に入らないらしく、低い声で、だけどはっきりと私に
言った。
「停学くらいで済んで良かったんだよ。
オレは退学にしてやりたい!!
そしたら、二度と佳織に近づけないのに」
そんな隆史に、軽く突っ込みを入れたのは、やっぱり和美だった。
「ばかね!学校辞めたら、監視できなくてそっちの方が怖いわよ。それに、
住所なんてすぐわかるんだから、待ち伏せとかされるかもしれないでしょ」
待って!
それ以上言わないで。
隆史はかなり過剰になってるから、これ以上想像で話を進められると、私は
がんじがら
めに束縛されてしまう!
「佳織、今日からオレの部屋に泊まらない?
ってか、一緒に暮らそう。
そうすれば、何があっても守ってやれる」
………。
和美も一樹くんも呆れた視線を隆史に向けている。
「大丈夫だよ。私は平気だから」
「ダメ!とりあえず考えるだけ考えろ」
独裁的な言い方で、その場を無理矢理まとめてしまわれた。
「かなり激しい性格ね、彼」
私の耳元で、こっそりと和美はささやいた。
同感です。
極端と言うか、なんていうか……。
 でも、今回の事だって隆史がついていてくれたからこそ、私は途中でく
じけずに遂行する事ができた。
「じゃあ、次の休み時間にまた来るからな」
私を教室まで送って、チャイムが鳴るまで一緒にいた。
「なんか溺愛されてるって感じだね。幸せだろ?」
隆史と一樹くんの姿が見えなくなった頃、和美は私の額をこずいた。
「うん。かなり意外な誤算だよ。
隆史がこんなにも大切にしてくれるとは思いもしなかったから」
「で、佳織は満足してるの?」
神妙な顔をしながら和美はその大きな目に、浮かない光を宿している。
「なんで?」
満足に決まってるのに。
「…別に。ただ想像してた隆史くんとあまりにも違うから、面食らってる
んじゃないかと思ってさ。
別に満足してるならそれでいいけどね」
和美が何を言いたいのか、わからない。
 それなのに教科担任が教室に入って来たから、和美はサッサと自分の席
に行ってしまった。

 相変わらず、隆史は休み時間の度に教室まで来て、私と一緒に過ごして
くる。
「今日は放課後どうする?
なんか行きたい所とかある?」
「……隆史と一緒なら、どこでもいいや」
隆史は、私の答えにかなり機嫌を良くして、教室だと言うのに、私を抱き
しめた。
「佳織かわいい!ココでキスしたいくらい!」
ギュウっと、力いっぱい抱きしめられて、私は少し苦しかった。
「はいはい、佳織がかわいいのは隆史くんに対してだけだから、あんまり
公衆の面前でイチャイチャしない!」
あきれ果てる和美を無視しながら、隆史はホントにキスしそうな程顔を近
づけた。
え?
マジで、こんな所でキスされちゃうの?
ちょっと期待半分に待っていると、隆史は、私の耳たぶをあま噛みした。
「キャッ!」
よく熟れたリンゴみたいに真っ赤な顔をしてるだろう私に、隆史はニッコ
リと微笑む。
まるで、悪戯した子供みたいに満足そうに。
  結局放課後は、隆史の家へ行く事になった。
「マジで、一緒にココで生活しない?
オレ、ずっと佳織といたい」
部屋につくなり、隆史は休み時間の話題を引っ張り出して来た。
「本気で?」
「ああ、佳織はオレと一緒にいたくないの?」
「一緒にいたい!
でも、おばあちゃんになんて説明すればいいかわかんないし、生活費とか
もどうするの?」
「オレが面倒見るよ。当たり前だろ」
…………当たり前なのか?
ホントに当たり前なのかな?
だって、お互い高校生なのに、世間じゃ共働きの夫婦だってかなりいるし、
それでも当たり前なんだろうか?
第一、これ以上おばあちゃんに心配かけたくないんだよね……。

  


 「あははっは!!」
携帯電話から大音響で、笑い声が聞こえる。
「笑う話じゃないと思うんだけど……」
「だって、そりゃ普通同棲しようって言われたら、喜ぶでしょ?それを、生
活費とかいきなりリアルな返事するなんて、佳織らしいと言うか……」
まだ笑いたりないらしく、和美の声は多少震えていた。
「でも、大事な事だよ」
「わかる!ホント大切だよね。
勢いだけで結婚して、実際生活苦から愛情が冷めて離婚ってありがちだし。
それに、プロポーズの瞬間って、男は新婚生活を想像するけど、女はこの男
の給料で生活できるか?何年ローンでマイホームとか計算してるって聞く
し。
 わかるよ、佳織の心配も。
ただね、私たちはまだ16歳だよ!
今からそんな現実的でどうするよ?
喜ぶのが先だろ、普通は?」
うーん、そんなモノかな?
でも、やっぱり生活って大切だと思うんだよな。
私の母親ですら、その辺はちゃんと心得てるらしくて、選ぶ相手はそれなり
に金持ってそうなオヤジばっかみたいだし。
「そりゃ私だって、うれしいよ。
毎日毎晩、隆史の顔を見て過ごせるなんて!
 でも、ホントに無邪気によろこんで、隆史の負担になりたくないじゃん」
なんとか、和美にも私の不安が伝わったのか、真面目な声のトーンに変わっている。
「ああ、隆史くんってちょっと日本男児って言うか、亭主関白っぽそうだよ
ね。
専業主婦しか許さないって感じだし。
なんとかしてでも、生活費を捻出して来そうだね」
「……そうでしょ?
高校生が、二人分の生活費を稼ごうとしたら、まともな仕事じゃ無理だよ」
先輩の中には、高校に進学しないで、彼女と結婚した人もたくさんいるけ
ど、そのほとんどがかなり苦しい生活をしてる。
ほんの一握りだけ成功しているのは、かなり法律スレスレな職業だけ。
「ちゃんと話し合って、そこら辺が決まってから、同棲すればいいんじゃ
ない?
佳織のばぁちゃんだって、それなら納得してくれるかもしれないし」
「……うん」
電話を切ると、すぐにメール着信音が鳴った。
ああ、電話してる間に届いてたんだ。
『佳織、愛してるよ。
おやすみ。』
毎日届く、おやすみメール。
私も同じ文面で、返信した。
毎日繰り返される『愛してる』の言葉。
 でも、私は不安。
そう言われるのは、とてもうれしい。
なのに、私は不安でたまらない。
隆史は私を大切にしてくれる。
それでも、決して満たされた気持ちになれないのは、なぜ?
何度も、自分で言い聞かしてみる。
私は隆史に愛されてる。
私は幸せ者だ。
私は………。

 あんまり深く考えるのは、やめよう。
早く寝ないと、美容にも悪いし………。


 隆史と毎日登校して、下校までずっと一緒。
もちろん放課後も隆史の部屋で過ごしていた。
週末はバイトが終わった後、隆史の部屋に直行している。
 かんなり!真面目な生活。
隆史以外の男をシャットアウトした、日々を過ごすようになった。
毎週のように通っていたクラブにも、全然行ってないし、今どんな曲が流れ
ているのか、さっぱり分からない。
もちろん、そんな生活はすごく楽しかった。
同棲の話は、アレ以来なぜかしていない。
私自身、そんなに同棲がいいと思えないし、隆史から切り出されたら、ちゃ
んと話し合おうと思っていた。

「お疲れ!」
バイトが終わって、隆史の部屋を訪れると、一樹くんに京介くんがいた。
「あ、こんばんは」
濃紺のスーツに身を包んで、元々男前だった京介くんは、さらに男っぷりを
あげている。
「どうしたの?ホストチックな格好」
私のセリフに、隆史はクスクスと笑った。
「ホストチックだってさ!
お前も、まだまだ甘いな」
「…チックじゃなくて、本物なんだよ。
オレ、ホストしてるんだ。
高校行ってないし頭悪いけど、ちゃんと食って行こうと思ったら、ホストし
か思いつかなくて」
「え?ごめん!
でも、京介くんみたいな男前だったら、人気出るだろうね」
慌ててフォローする私の頬を、隆史はグニっとつねった。
「コラコラ!オレ以外の男を褒めるんじゃない!」
「いいな、なんかラブラブが伝わって来るよ。
お店じゃ、ホストと客の騙し合いばかりで、人間不信になりそうだもん」
「ああ、なんかわかるよ。
ホステスもそういう時あるもん。
でも、色恋営業はホストの方が強烈だもんね」
私も、バイト初心者の頃、簡単に客を引っ張るために色恋をしたことがあっ
た。
恋愛感情で、相手にお金を落とさせる。
すごく、簡単にできる営業方法だけど、その分のリスクはやっぱり精神的に
来る。
「色恋って、何?」
一樹くんの質問に、京介くんがうれしそうに語り出した。
「はっきり言えば、騙す!
好きだよ。愛しているよ。とか適当に口説いて、自分に惚れさすんだ。
惚れた男になら、かなりの金を落とすだろ?
本来は客とホストって割り切って接客するんだけど、そこをわざと恋人だと
騙して営業する事」
………その通りなんだけど、言葉で説明するとかなりエグイよね。
なんか、悪徳商法。
でも、女も男もそうだけど、飲みに来るような客は、ほとんど無意識のうち
にわかっている。
疑似恋愛だと。
だから、かなり騙す方も疲れてしまう。
「へぇ頭悪くても、人の気持ちの動きさえわかれば、出来そうだよな。」
「ああ、こういう時どんなセリフを言えば女は喜ぶとか、経験しながら覚え
て行くんだ」
……。
何だろ、何かが引っかかる。
私の心に、チクリと小さな棘みたいなモノが刺さっている。
「で、まだ行かなくていいのか、仕事。
一樹もサッサと帰れよ。佳織が帰って来たんだから、お前ら遠慮するだろ、
普通」
隆史は、隣に座っている私の肩を抱きしめながら、わざとイチャついてる。
「はいはい、言われなくても行くよ」
二人がいなくなると、隆史はすぐに私をベッドに促した。





2004-2005©白雪姫-hime-