デンジャーボーイ
デンジャーボーイ

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1 プロローグ 2 ナンパな出会い 3 二人きり 4 香水 5 いじめ 6 ついにブチ切れ?!
7 優しい彼氏 8 疑惑の香り 9 お金持ち 10 結婚 11 再び登場?? 12 エピローグ

●●●
8 疑惑の香り
「泊まって行くだろ?」
「…うん」
隆史に抱きしめるように腕枕されながら、私は眠った。

夜中に目が冷めると、隆史は腕枕をしたまま眠っている。
 腕、疲れちゃうよ。
私は自分の頭を上げて、隆史の腕を開放してあげた。


まぶしい朝の光で目覚めると、なぜかまた私は腕枕をされていた。
「隆史、おはよう」
まだ眠っている隆史の頬にキスをすると、隆史はうっすらと目を開けた。
「………」
無言のまま、私を抱きしめる。
「ちょっ…苦しいよ」
「ん……」
寝ぼけているのか、目を閉じたまま私の服を脱がす。
 ………器用だな。
「朝から、何してるの…。
寝るか起きるか、しないと」
私の言葉に、生返事する。
「寝る。ってかヤル」
寝るは寝るでも、その寝るって意味じゃ……。
 私の胸で指を遊ばせながら、次第に隆史は目覚めて行ったのが分かった。

彼が、私の中にいる。
私と彼は一つになっている。
そう思うだけで、イッてしまいそう。
なのに、隆史は何度もしなやかに、激しく身体を動かしながら、私をもっと
天国まで導いてくれる。
「………あっっん……」



「佳織………?」
目を開けると、優しい隆史の瞳とぶつかった。
「………」
「ごめん、激しすぎた?」
何も考えられなくなってしまった、私の思考回路。
「………」
「まだ6時だよ、寝てていいから。おやすみ」
言われるままに、私は目を閉じた。


「佳織!そろそろ起きないと、学校遅れるって!」
言葉とは違って、やたらと落ち着いている隆史の声で私は目覚めた。
「もう7時半?」
きゃぁ〜〜〜!
慌てて、バスルームに入ってシャワーを浴びていると、隆史が乱入して来
た。
「え?っちょ、恥ずかしいって」
隆史の目には全裸の私が写っている。
しかも、隆史ってば綺麗な顔で、かなりエロエロムードを醸し出している。
「一緒に浴びよ。
たまには、遅刻しても大丈夫だろ?」
あせる私を無視するかのように、強引に狭いバスルームに入って来た隆史。
「もう、ダメだよ」
「何が?」
「エッチしてる時間ないからね!」
一応確認しとかないと、隆史はいきなり始めそうで怖い。
「しないって!佳織はやった後、絶対寝ちゃうだろ?
そうなったら遅刻じゃ済まないじゃん」
……はい、すみません。
毎回そうなんだよね、精も根も果てるって状態で、マジ寝てしまう。

さっさと、シャワーを浴びて、制服に着替えた。
「今日もバイトだよな?
何時くらいに終わる?
暇だし、迎えに行くよ」
「うーん、土曜だし忙しいと思うから、1時半くらいになるかもしれない……」

田所は、停学が明けてからも学校で姿を見かけなかった。
他に主犯だと思える矢代たちは、3日間の謹慎の後、平気な顔して登校し
ていたのに。
 登校途中、隆史の指が私の指に絡みついているのを、ジッと見つめる生
徒がいた。
思わず、手に力が入る。
「大丈夫だって、矢代たちにはちゃんと言ったから」
不安がわかったのか、隆史は力強く微笑んでくれた。
「それよりさ、今日は和美ちゃんと一緒に帰ってくれる?オレはちょっと
京介と約束してるから」
「うん、わかった」
久しぶりに、和美と寄り道でもしようかな?
最近はずっと隆史と一緒だったから、服とかも買いたいし。
教室の前まできっちりと送り届けてから、隆史は自分の教室に行った。
「今日は一緒に帰れる?すっごい勝手なのはわかってるのよ。隆史がいな
い時だけ和美となんて、我が儘なんだけど……」
遠慮がちに聞いてみると、和美は大きくうなずいた。
「ホントにね!!
でも、いいわよ。どこ行く?
この前新しくランジェリーショップがオープンしてたんけど、どう?
勝負下着で、隆史くんをもえさすってのは」
………あれ以上激しくされると、私が困ってしまいます。
とはさすがに言えない。
「うん、わかった」
下着なんていくらあっても困るモノじゃないし、かわいいのがアレばいい
な♪
「じゃあ、放課後の話はおしまい!
佳織は一体毎日、何をしに登校してるの?
朝から放課後の話なんてして、来週からテストだってわかってる?」
あっ!
忘れてた。
「範囲、わかんないや……」
「これだから色ぼけは困るんだよ!」
和美は、範囲をメモったノートを貸してくれた。
おかしい。
絶対におかしい。
だって、学業に関しては和美の方が私よりおろそかにしているはずだった
のに………。
もしかして、ホントに色ぼけなのかしら?
 しっかし、今回も赤点取りそうだ。
全然、勉強してないもん、私。
隆史はどうなんだろう?
一緒に居る時は、してるように見えないんだけどな。

和美のおかげで、久しぶりに真面目に授業を受けると、かなりの疲労感が
あった。
「つ、疲れた」
「若いくせに、何を言ってるんだか。
ほら、行くよ!」
半ば引っ張られるようにして入った店内には、色とりどりの下着!
レースからTバックまで幅広く揃ってある。
「これ、かなりかわいい!!」
私は真っ黒に白でたくさんの花が刺繍されてるブラを手に取った。
「そう?こっちのが良くない?」
和美はかなり過激な赤の見せパンを持っている。
ウエスト部分が見えても平気なようにチェーンになっていて、確かにかわ
いい。
「赤はキツイよ」
「そう?」
「うん」
結局、ブラとパンツセットを3組程勝ってしまった。
隆史、どんな反応するんだろ?
ちょっと、楽しみ♪







 「あんた、ホントいい加減にしなさいよ!!
バイトだからって、あんなに気を抜いて仕事して!!
お店だって、ボランティアで給料払ってるわけじゃないんだからね!!」
「………」
怒られても仕方がない。
今日の私は、かなり上の空で仕事をしていた。
いや、下着の反応が気になったとかじゃないのよ!決して。
ただ田所の一件以来、あんな過剰に私の側にいてくれた隆史が、なぜ今日
は下校から一緒にいなかったんだろう?
って考えると、すごく不安になってきて、接客なんてしてる余裕がなかった
の。
「ちゃんと反省しなさい!!」
「はい……」
和美が言ってる事はすごく正しい。
わかってる、自分がホントに隆史しか見えなくなっているのが。
でも、怖い。
隆史は、なんで今日に限って迎えに来るって言ったのかしら?
1時過ぎまで、この繁華街にいるって事?
「一体、何があったの?」
「………何もないよ」
何もない、でもすごく不安なの。
隆史がいつもと違う行動をしただけで、帰りに一緒にいられなかっただけで……。
「まあいいや。とりあえず来週はちゃんと仕事しような。それ以外はどん
なに惚けてもいいから!」
「うん、ホントごめんね」
「いいよ。隆史くん迎えに来るんでしょ?
電話しなくていいの?」
「うん」
携帯のボタンを押した。
何コールかすると、隆史の声が私の耳に届いた。
「今終わったの?」
何気ない、会話。
それだけで、うれしい。
隆史の声が聞ける、その事実が。
まるで携帯の電波が、私の気持ちすらも乗せて届いた気分になった。
「隆史は今どこにいるの?」
「ん………?」
何だか歯切れが悪い。
そう思ったら、真後ろから声が聞こえた。
「お疲れ様!」
驚かすように、私を背中から抱きしめる。
プラチナムの香りに包まれた。
「びっくりした!
店の近くにいたの?」
「ああ、そろそろ終わるかなって思って」
何か違和感がある。
何が、どう違うのかわからないけど、確実に何かが違う。
「お疲れ、またね!」
和美は、私に手を振って一人でタクシーに乗り込んだ。
「あ、お疲れ」
………。
「どうせなら、飲みに行く?」
隆史は私の手をつなぎながら、歩き始めた。
私の中に芽生えた違和感は消える所か、ふくらみ始めている。
 それと比例するかのように、不安が高まってくる。
ドキドキ・ドキドキと、心臓の音が伝わるくらいに早い。
「……うん」
歯切れの悪い返事をしながら、変な胸騒ぎを押さえようと、わざと隆史に
甘えるように腕に絡みついた。
フワリと、隆史の香水が私を包むように香る……。
………。
………。
分かった。
香水の匂いに混ざって、微かにシャンプーの香りがする。
 さっきつけたばかりの少しきつい香水に、上手くなじみきれない、シャ
ンプーの匂い。
今朝、学校に行く前に二人でシャワーを浴びた時とは、明らかに違う銘柄
のシャンプー。
 一体、どこで………?
鼓動が早くなる。
隆史は、なんでシャワーを浴びたの?
答えなんて、一つしか思いつかない。
「今日は、忙しかった?」
私の不安なんて知らない隆史は、飄々とむかつくまでに鮮やかな顔で私を
見ている。
「……うん」
こんな時間に、シャワーを浴びなきゃいけないのは、どんな理由なの?
ねえ、その甘ったるいシャンプーの持ち主は誰なの?
「どうした、元気ないみたいだけど、そんなに大変だったのか?」
元気がないのは、お前のせいだろう!!
そう、叫べれば少しは楽になるのかしら?
それとも、ちゃんと問いただせばいいの?
わからない。
今はまだ、私の想像だけ。
でも隆史が認めてしまえば、その瞬間から事実になってしまう。

 怖い。
聞いてしまえば、もっと自分が傷つくような気がする。
「………マジで大丈夫か?」
隆史が、心配そうに目を細めている。
その目で、誰かを見つめたの?
その声で、口説いたりしたの?
ねぇ……………浮気した?
いくつもの、疑問が口をついて飛び出しそうだ。
でも、知りたくないって気持ちが、ギリギリ言葉にしないでいる。
だから、よけいに醜い感情がドロドロと心を満たして、あふれ出しそうに
なる。
「大丈夫だよ」
ちゃんと笑いながら言えたか、自信がない。
だって、唇がひきつってしまう。
キリキリと胸を締め付ける、嫉妬。
「ホントに?無理しなくていいぞ。
帰ろうか」
………帰りたくなかった。
だって、帰るってのは隆史の部屋だから。
あんな所に二人きりでいたら、気が狂ってしまいそう。
「大丈夫だよ!!飲みに行こうよ!!」
「……気分悪くなったら、すぐに言えよ」
「うん」

隆史は、私を京介くんが働いているお店に連れて来てくれた。
レディーファーストで隆史はドアを開けて、私のウエストに腕を回した。
 女慣れした、手つき。
他の女にも、そんな風にしているの?


「いっらしゃい!」
京介くんは、笑顔で出迎えてくれた。
「こんばんは」
良かった。
隆史と二人だけだと、何を喋ればいいのかわからない。


初めてのホストクラブ。
少し暗めに設定されている室内に、きらびやかなシャンデリア。
「何飲む?」
「………ヘネシーでも入れようか?祝いに」
隆史は京介くんの就職祝いに、ヘネシーをおろした。
…どこからそんなお金、出てくるんだろうか?
私が働いているクラブで、ヘネシーは2万円。
多分、ココでもそんなに値段は変わらないと思う。
「佳織ちゃんも、水割りで大丈夫?
カクテルも、多少はあるよ」
「…………大丈夫」
ボーイが持って来たボトルを空けて、京介くんが水割りをつくってくれる。
なんか、不思議な気分。
いつも、私がお客さんにしている事をしてもらっている。
なんか気持ちいいかもしれない。

「いっらしゃいませ」
3人で乾杯が終わった頃に、20代前半のホストが席にやって来た。
その顔に、見覚えがあった。
「…もしかして、川上?」
「あれ?佳織?
うわ、綺麗になったなぁ」
男前とまでは行かないけれど、優しい顔をしたお兄さんが、うれしそうに
笑う。
その隣で、京介くんは不安な顔になった。
「マスターと知り合いなの?」
「マスター?川上がマスターなの?
すごいじゃん!頑張ってるんだ!」
「おう!もう毎日必死で頑張ってるけど、これが大変で。。」
汗を拭うしぐさをしながら、川上は私の隣に座る隆史を見た。
「すっごい綺麗な顔した彼氏だな。佳織の男?」
私も川上につられるように隆史を見た。
 弧を描く整えられた眉の下に、はっきりとした、つり目がちな三白眼を
いつもより、さらにつり上げていた。
「…誰だよ?」
かなり低い声で、隆史は川上を睨み付けている。
隆史、妬いてる?
慌てて、説明する私。
「昔住んでた家の隣のお兄ちゃん」
さらに、隆史を煽る川上。
「よく一緒にお医者さんゴッコしたよな」
「ちょっ!昔って言っても3歳とか4歳くらいの頃だよ!!
変な誤解を招く言い方しないでよ!!」
川上は笑いながら、隆史の反応を伺うように見ている。
「そう。じゃあ今夜はオレとお医者さんゴッコしような」
隆史は冷たい視線で、唇だけをわずかに動かし笑いかけた。
………かなり怒ってる?
「あはは!君いいね!その切り返し、最高!
ホストやってみない?」
不安になる私や、怒っている隆史にお構いなく、隆史を一目見た時からそ
のつもりだったのだろう。
川上は、スカウトを始める。
「……やらない」
「君だったら、時給上げるよ」
うーん。
川上の気持ちはよくわかる!
そりゃ、隆史のスーツ姿ってすごいかっこいいんだろうけど、でも………。
やって欲しくない。
「うわ!マスター酷いなぁ、それ」
京介くんが抗議をしても全然効き目がなく、かなりのしつこさで、川上は
隆史を口説いている。
「気が向いたらな」
隆史の最後の一言で、川上はやっと諦めたのかテーブルを離れた。
「悪かったな、なんか不愉快な気分にさせて」
京介くんが隆史に謝ったけど、かなり機嫌が悪いのか隆史は返事もせずに
席を立った。
 帰るのかお手洗いなのか、判断がつかない私は、そのまま座っていると、
京介くんが囁くように小声で話しかけてきた。
「佳織ちゃん、ダメじゃんか。
アイツの前で他の男と楽しそうにお喋りしたら!!
すっごいヤキモチ妬きなんだから」
………。
スタスタと入り口のドアを開けて、外に出て行く隆史を見て私は慌てて後
を追いかけた。
「隆史!!待ってよ」
「……」
立ち止まりもせず、振り返りもしない隆史。
「ちょっと!聞こえてる?」
「……」
余裕で私の声が届く範囲にいるくせに、完全シカト。
「何で隆史が怒るのよ?」
怒りたいのは私なのに!!
隆史の隣まで駆け寄りながら、その顔を見た。
「お前はオレの女だよな?」
「そうだよ」
他に誰が私を所有物扱いした発言できるって言うの?
隆史だからこそ、うれしいと思えるのに。
「…あんなにダルそうだったくせに、アイツが来た途端、楽しそうにっ」
「違う…………」
ダルかったんじゃない!
「何が違うんだよ?」
………………。
言葉がソコまで出かかっている。
私のことなんかより、隆史はどうなの?
いくつもの汚い感情がわき出て、もうこぼれ落ちてしまいそう。
なのに、口をついて出てきた言葉は、
「…………何でもない、ごめん」
意気地がない私。
問いつめて、真実を知るのが怖い。
もし、隆史が本当に浮気をしていたら?
この『もし』ってのが、私を支えている。
怖い、何もかもを失ってしまいそうで……。
元カノも、同じような気持ちを味わったのだろうか?
だから、隆史の浮気を許してきたの?
「最初から、そうやって謝ればいいのに」
隆史はいつものように私の頭を撫でながら、微笑む。
父親が、子供を褒めるように……。
その優しい手で、他の女に触れて来たの?
「隆史、私を離さないでね」
私の彼氏でいて。
他の誰も、そんなに優しい顔を見せないで。
「うん、永遠に離れない」
うなずきながら、隆史は私の手をつないだ。
手が触れた途端に、背中に寒気が走った。
ビクリと動いた私を見逃すわけもなく、隆史はさらに手に力を入れる。
……触らないで!!
他の女に触れたかもしれない手で……。
無意識のうちに、私は確信している。
隆史が浮気をしたと。
他の女を抱いただろうと。
だから、身体が隆史に触れられるのを拒否してしまう。

額から、生ぬるい汗を感じる。
まるで私の心にある隆史の不信感みたいに、ジワジワと広がっていく。
「佳織…………?」
覗き込む、隆史の顔がグラリと揺れた。
「…ごめん!吐きそう。」
つながれた手をふりほどいて、人気を避けた路地に入った。
グッと、胸の奥に詰まった異物が、のど元まで顔を出している。
「……っぐ……………」
………。
………。
………。
一気にすべてをはき出せた。
「大丈夫か?酔った?」
ずっと背中をさすってくれたいた隆史は、自販機でお茶を買ってきてくれ
た。
「ごめんね」
吐いた後の気持ち悪い口の中を、お茶でうがいをした。
少しは楽になったモノの、胃がまだチクチクと痛い。
「今日はもう、帰ろうな」
隆史は、私を気遣うようにスローなペースで歩きながらタクシーを止めた。
もう、これ以上限界かもしれない。
隆史と一緒にいたくない。
「今日はごめんね、自分の家に帰る…」
「……わかった、送るから乗って」
少し淋しそうな顔をしながら、それでも隆史は優しく微笑んだ。
どうして、そんなに優しくしてくれるのに………浮気なんかしたの?
 私じゃ、不満なの?
ねぇ、聞きたくて仕方がないの。
どんな事をしても、結局隆史への疑問にたどり着いてしまう。
わかってる。
このままじゃ、ダメだ。
でも、はっきりさせる勇気がないの。
 考え出すと、また胃がキリキリとしてくる。
「………っく」
「大丈夫か?」
隆史は私の手を握って、ホントに心配してくれている。
それは、私が彼女だからだよね?
「…うん」


 家に帰ると、不思議と胸の痛みが消えて、気分が楽になった。
今の間に隆史にメールを打っておこう。
いつもと同じ文面。
『今日はごめんね。
愛してるよ、おやすみ』
すぐに隆史も返信をくれた。
愛してる。
毎日取り交わすその言葉の意味って、何か軽いよね。
ホントの愛なんて知らないけれど、平気で浮気できちゃう位の『愛してる』
なんて、淋しい。
 液晶画面に届けられた文字の羅列。
それには、深い意味なんてないのかもしれない………。





2004-2005©白雪姫-hime-