デンジャーボーイ
デンジャーボーイ

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1 プロローグ 2 ナンパな出会い 3 二人きり 4 香水 5 いじめ 6 ついにブチ切れ?!
7 優しい彼氏 8 疑惑の香り 9 お金持ち 10 結婚 11 再び登場?? 12 エピローグ

●●●
9 お金持ち?
 「普段使ってるシャンプーと違うって、また古典的なバレ方をする男だ
よね、そんな初歩的なミスしなさそうなんだけど……」
「………今問題なのはそんな事じゃなくて、隆史が浮気をしたかしてない
かなの!」
次の日和美に相談することにした私は、朝から彼女の部屋にいた。
「してるだろうね、多分」
………。
そうだよね。
誰が聞いても、そう思うよね。
「はぁぁぁぁ」
思わずため息が漏れる。
「それくらいの覚悟があったから、つき合ったんでしょ?違うの?」
そりゃ、元カノが浮気を何度も許していたとか聞かされてたし、隆史の女
癖の悪さも想像はついていた。
「でも、つき合うと意外と優しくしてくれるし……もしかしたらそんな男
じゃないかもって、期待しちゃうじゃん」
「ま、ね。
学校でも、矢代たちに囲まれてたのを、あっさりと切っちゃうくらいには、
佳織にご執心って感じだったし……。
でも、男なんて浮気をする生き物だよ。
それが、あんなに女の扱い上手くて、顔も綺麗だと存在自体がエサだろ。
欲求不満の女が群がるに決まってるじゃん」
存在自体がエサって。
じゃあ、隆史は食われたのか?
隆史が食ったんじゃなくて…。
 でも、やっぱり食ったのは隆史で、あの細く長い指で触れてあの鋭い三
白眼を優しくさせながら、女を見つめて………。
 ああ、ダメだ!!
ムカムカする。
想像したくないのに、やたらとリアルに映像となって、脳を占領してしま
う。
どんな言葉をささやいたの?
どんな声で?
どんな風に抱いたの?
………。
胃が、チクチクと痛い。
「………ごめん、ちょっとトイレ」
和美の部屋からトイレに駆け込んで、私はまた吐いた。
ダメだ。
隆史の事を考えると、吐き気がする。
「………大丈夫?二日酔い?」
トイレから出た所で、和美は水を持って待っていてくれた。
それにしても昨日の隆史といい、今の和美といい、なぜにアルコールのせ
いだと思うんだろうか?
なぞだ。
私ってそんなに、酒豪じゃないぞ!!
「とりあえずさ。彼のいない所で想像だけで会話してても仕方ないし、ち
ゃんと聞いた方がいいよ」
「………わかってる」
そうなんだよね。
ただ、やっぱり怖いけど。
「一緒に行こうか?」
「………いい、大丈夫」



私は気合いを入れて、隆史の部屋へと向かった。
「いざ、出陣!」
ドアをノックすると、隆史の声が聞こえた。
「開いてるよ」
中に入ると、うっとりする程綺麗な隆史がいた。
 だ、めだ……。
聞きたくないかもしれない。
「もう大丈夫なのか?
昨日は心配したんだぞ」
小さなソファにドカッと腰を下ろして、私を横に座らせる隆史。
「…あのね………」
逃げちゃダメ!
ちゃんと現実を知らないと……。
「うん?」
無防備なまでに自然体の隆史は、私が何を切り出すのかまったくわかって
いない。
「………」
ああ、怖い。
ホントに怖いんだから!
「何だよ?」
ああ、怖い!
怖い・怖い・怖い。
でも、ダメだ。
「隆史、昨日、浮気、した?」
あまりの恐怖にプチパニック状態にでも陥ってたのか、私はストレートに
質問する形になってしまった。
「なんで?」
ドキドキする心臓。
0.1%の可能性でもいい!
否定して欲しい。
「シャンプーの匂いが違ったから……」
「ああ、そっか」
隆史は、姿勢を正しながら私を見る。
「………」
どうなの?
したの?
していないの?
爆発しそうな、心臓。
早く答えてよ!!
「だって、佳織は週末オレの相手してくれないじゃん。毎週バイトで、た
まにはちゃんとデートしたいって思っても、無理だろ?」
……………。
だから、浮気したって言うの?
「抱いたの?」
「抱いた」
目の前が真っ暗になった。
なんで、そんな事で浮気しちゃうの?
週末だってバイトが終わったら、ちゃんと隆史の部屋に来てたし、それ以
外だって学校で毎日会ってるのに、それでも淋しいとか思うの?
「……どうして?」
何よそれ。
なんで?
「やりたくなったから」
………。
そうじゃなくって…。
「その子が好きなの?」
「まさか!佳織を抱くのと、浮気とじゃ全然意味が違う」
「どう違うの?」
わかんない、隆史の言ってる意味が。
涙があふれてきて、止まらない。
なんで、こんなに悲しいのだろう。
「佳織………」
前に私が泣いた時みたいに、隆史は私のまぶたに優しくキスをする。
「そんな風に、他の子にもキスしたの?」
「してないよ。佳織だから、こんなキス。」
頬に、唇に、隆史はたくさんのキスをくれる。
でもそのすべてが、私には悲しかった。
同じ事を、したんだろう………。
「………帰る」
もう、一緒にいたくない。
これ以上、触れられたくない。
「なんで?
一回の浮気で、オレら終わりなの?」
「………」
「ただ、入れただけじゃん。
排泄行為と同じだよ、トイレと一緒じゃん。
それが、そんなに悪い事か?」
トイレと一緒って…。
「じゃあ私を抱く時も、そうなの?」
「さっきから違うって言ってるだろ、佳織を抱く時は、すごく愛おしいっ
て思うから、抱くんだよ。佳織を見て抱きたいって思うんだ。
でも、浮気は違う。
女だったら、誰でもいいんだ。
穴さえあれば、入れちゃうって感じ」
……………。
わかんないよ、隆史。
全部、言い訳にしか聞こえない。
「ごめん、とりあえず今日は帰る」
「帰さない。今帰すと、佳織はオレを捨てるつもりだろ?
そんな事許さない」
「…私も、隆史と別れたいなんて思ってないよ。だから、今日はごめん、
帰る」
凄く悲しいのに、別れたいとは思えなかった。
和美が言ってたように、最初から分かっていたことなのに、それでもこん
なに傷ついてしまう、自分が情けない。
涙が、止まらなく次から次へとあふれてしまう。
誰かを好きになるって、幸せな事ばかりじゃないんだ。
こんなにも、いっぱい悲しくなってしまうんだ……。
 隆史の家を出て、そのまま和美に会いに戻った。

「ちゃんと話したんだね、お疲れ」
和美の顔を見たとたんに、私は止まりかけていた涙をさらに溢れさせてし
まった。
涙も枯れ果てて、泣き疲れるまで泣きじゃくった。
声を出して、泣くなんて、もう随分昔以来。


「隆史くんの言ってる意味、少しはわかるよ。
人それぞれ価値観ってあるし、佳織がどうとかってわけじゃないんだけ
ど………」
落ち着いた私に、和美はゆっくりと話しだした。
「価値観?」
「そう、SEXに対しての価値観。
佳織だって、それなり好きってだけでも寝たりした事あるでしょ?
でも凄く好きな人と寝た時と、感動が違わなかった?」
「…そりゃ、だって隆史が上手いから・・・」
「……………。
それもあるかもしれないけど、テクニックがどうとかの感じるじゃなくて、
感動!
気持ちの入ってる分だけ、感じるの!
風俗で働いているお姉さんたちが、仕事でしているのとプライベートで彼
氏としてるのって、全然違うと思うよ」
…………。
「風俗のお姉さん?
だって、仕事じゃん。隆史は別に仕事じゃないもん」
「そうだけど、男なんてそんなモノだって!
所詮、浮気する生き物なんだから、本気にならずに割り切ってる隆史くん
の方がステキだと思うよ。
それとも、隆史くんが浮気相手に本気だったら許せたの?」
「そんな事!!
浮気相手に、本気になったら困る!
私はどうすればいいのよ!!」
私が浮気相手になってしまうの?
そんなのイヤだよ!!
「でしょ?だったら、浮気くらい許してあげなきゃ。
あんだけいい男を彼氏にしてるんだから、コレは避けれない道だよ」
「…そうだよね。」
ちゃんとわかっていたのに………。
こんな事くらいで傷ついてるようだと、隆史の彼女なんてできやしない。
これから先、何度も同じ経験をしていくうちに、慣れてくるのかもしれな
い。
そうすれば、気にならないよね。
半ば、自分に言い聞かすように、私は大きくうなずいた。
「ごめんね、なんか昨日から、相談に乗ってもらってばかりで」
「いいよ!そのうち、私も腐る程佳織に相談するから」
「うん!」
その日私は泣き疲れたのか、ぐっすりと眠った。
ホントにぐっすりと。

「佳織!早くしないと、お友達が来てるよ!」
1階からのおばあちゃんの声で、やっと目が覚めた。
え?
友達が来てるって、もうそんな時間なの?
目覚まし時計を見ると、7時過ぎ。
あれ?
「隆史…?」
私はパジャマのままで玄関を開けた。
「ごめん、昨日佳織からのおやすみメールもなかったし、どうすればいい
かわからなくて………」
いつもクールにしている隆史の目の下に、クマができていた。
それが、隆史の美貌に一層拍車をかける。
打ちひしがれている美少年って感じ。
「えっと、ちょっと待っててくれる?
すぐに用意してくるから!!」
かなり急いで、登校準備をした。
いつもなら、7時45分に迎えに来る隆史だったのに、そんなに急いで私
に会いに来てくれた事実が、すごくうれしい。
「昨日は疲れてすぐに寝ちゃったの。ごめんね」
「いや、オレこそ悪かったよ。
佳織にとっては、大切な事だったんだよな?
オレはこれからも多分浮気してしまうと思うけど、佳織にはバレないよう
にするから」
……………。
そうなのか?
普通反省したのなら、バレないようにとかじゃなく、浮気しないんじゃ?
さすが、隆史!
かなり自己中。
「もう平気だよ。隠れてされるよりは宣言される方がマシ。かな?」
「わかった」
納得されても、あんまりうれしくないんだけどね。
 近所の公園で時間を潰すように喋ってから、学校に登校した。
きっと、校内の誰もが、私をうらやましいと思っているだろう。
こんなかっこいい彼氏に愛されて。
 隆史の浮気癖なんて知らないで……。
この前まで、敵意しか感じなかった嫉妬の視線に、私は同情すらした。
隆史の事何にも知らないから、そんなに私が幸せそうに見えるんだよ。
ホントは、あなた達にうらやましがられる程、幸せじゃないんだから……。



放課後、隆史は昨日のお詫びにと私をデートに誘ってくれた。
「悪いと思ってるの?」
「………一応な。浮気自体を悪いとは思ってないんだけど、佳織を哀しま
せた事に反省してる。
ちゃんと納得してもらってから、浮気するべきだった」
いや!
納得は今でも、していない。
てか、できないと思う。
「………」
異次元な会話をしているような、まるで理解できない隆史のセリフに戸惑っ
ている私を、隆史はドンドンと引っ張って行く。
「………ココって…」
アクセサリーで有名な超一流ブランドの店に、制服のまま隆史は入ろうと
した。
「ほら!早く」
店内に入ると、制服姿の客なんてもちろんいなくて、ジロジロと注目を浴
びてしまう。
なのに隆史は全然おかまいなしに、ショーケースを覗く。
「このレリーフされてるヤツ、出してもらえますか?」
店員さんも若い客におどろいているのか、それとも隆史のあまりの美しさ
に驚いているの
か知らないけど、言われるままにリングを一つ布の上に取り出した。
プラチナの5ミリ幅に、花がレリーフされてるかわいらしい指輪。
「佳織、サイズ合う?」
指輪を取って、私の指にはめてくれる。
「え、、うん。大丈夫」
「じゃあ、これ下さい」
えっと、この店って……3万以下の商品なんてないと思うんだけど…。
隆史を見ると、彼は普通に買い物するように、財布から数枚のお札を出し
た。
「隆史、こんなに高い指輪買ってくれなくてもいいよ。」
隆史からのプレゼントなら、露店の指輪でも十分うれしいんだから。
「そんなに高くないだろ。
平均的な値段じゃないの?」
………金銭感覚ズレてるのか?
高校生が、彼女に7.8万もする指輪を贈るわけないじゃない。
「コレ、お願いします」
店員さんは、隆史から指輪とお金を受け取って、ラッピングを始めた。
………ホントにいいのかな?
でも、どこからそんなお金が……。
そう言えば、昨日のルージュって店でのボトル代も………。
「隆史、何かバイトしてたの?」
一人暮らしをしてるし、親から仕送りしてもらうにしても、限度があると
思う。
「なんで?」
「気になったから」
「ふ〜ん、別にバイトらしいバイトはしてないよ。
そんな時間があったら佳織と一緒に居たいし。」
にっこりと笑顔を作った。
う゛、これ以上詮索するなって、顔してる………。
「どうする?
すぐにはめる?」
店員さんがせっかくラッピングしてくれた指輪を、隆史は豪快にほどいて、
私の薬指にはめてくれた。
やぁぁぁぁぁぁん、なんか結婚式みたいじゃない!!
うれしい!!!
キラキラと輝く指輪。
照明を反射させて、すごくきれい。
「うれしい?」
「うん!」
今まで彼氏に指輪を買ってもらっても、うれしいなんて思った事なかった。
それよりも別れた後の処理を思うと、憂鬱にすら感じるくらい、嫌味な女
だったのに、こんなに素直に喜べる自分が不思議だった。
恋の力って偉大だよね!!
「ずっとつけてるね!」
「ん……でも、バイトの時は外してもいいよ。明らかに彼氏いるのバレバ
レだろ?
それ以外は学校でも外さないように!」
私は大きくうなずいた!
確かにバイトで、指輪なんてつけてたら仕事にならない。
そんな所まで考えてくれる隆史に感謝しつつ、私は喜びを噛みしめていた。
 こんなうれしいお詫びがあるなら、浮気されても、許せるかもしれない!
…………………。
そこまでは思えないけど。
「そうだ、昨日ルージュで会計せずに帰ったから、京介くんの未収になっ
ちゃうんじゃないの?」
「ああ、そうだな。
今度会った時に払っておくよ」
「……うん」
やっぱり、どこからそんなお金が出てくるんだろうか?
「もしかてし隆史って、すっごくお坊ちゃんなの?」
「はぁ?なんで?」
涼しげな三白眼を見開いて、驚いている。
やっぱり、違うよね。
「いや、金銭感覚ズレてそうだし……」
「そりゃ多少はズレてるかもな、1時間くらいで数万くらい貰えれば」
………。
何?
今、何て言った?
一時間で数万って、ソレって………。
「隆史、もしかして昨日のって、浮気じゃなくて…援助?」
手っ取り早く稼ごうと、思ったらウリしかない。
こんな簡単な事で、馬鹿な大人は大金をくれる。
「…違うだろ?だって、ババアは相手にしないもん。昨日だってヘルスで
働いてるピッチピチギャル」
ピチピチだろうがヨボヨボだろうが、ヤル事やって、金もらえばソレはエ
ンコーになるんじゃないのか?
「…で、いくら貰ったの?」
「昨日は、10万だった」
………やっぱり貰ってたのね……。
そして、そのお金が……。
私は自分の指を飾っているリングを見た。
コレに化けたわけだ………。


誰か、助けて。
隆史って、性に対しての感覚が一般とかなりズレてる気がする。
そりゃ、確かに少しの間相手するだけで大きな額稼げるけれど、私はエン
コーは嫌い。
自分に値段をつけられるなんて、許せない。
しかもそのお金で彼女に指輪を買うなんて、どういう神経をしているんだ
ろうか?
チラリと隆史を見ると、彼は全然悪びれた様子もなく、満足そうに微笑ん
でいた。
「すごく似合ってるよ、その指輪」
「………ありがとう」
私もついツられて微笑んでしまった。
うれしいんだけど、微妙だ。
援助で稼いだ金で、プレゼント。
しかも、指輪。
素直に喜べないよ………。





2004-2005©白雪姫-hime-