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ホスティボーイ
ホスティボーイ

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1 プロローグ 2 運命の再会 3消せない記録 4 元サヤ 5たった一言 6 客OR彼女?
7 合い鍵 8 料理上手に床上手 9 言いたくないの 10 未来予想図 11 壊裂する恋 12エピローグ

●●●
10 未来予想図

 どうしてこうなっちゃたんだろうか?
隆史に色々と教えてもらって、クラクラに悩殺しちゃう予定だったのに、
私の方が腰砕けになってしまっている。
 スヤスヤと寝息をたてて眠る隆史を起こさないように静かにベッドから
出てシャワーをあびる事にした。
 激しい運動をしたからか、少し眠ったからなのか、酔いは完全に冷めて
いた。
 少し熱めの43度のシャワーをあびていると、心地いいほど体が温まる。
 冷静になった頭の中に、隆史の言葉がリフレインしている。
『確かに仕事で他の女と喋るし、抱きしめたりもするけど、でもソレは営
業』
 今更そんな説明されなくても、ちゃんとわかってる。
ただ、気持ちが追いつかないだけなのよ…。
いつからこんなに嫉妬深い女になったんだろう?
 どんなステキな言葉をもらっても、私の不安が消えるのはその時だけ。
バカだ。
隆史がホストをしてるのは、再会した時からわかってたのに………。
和美にあれだけ忠告されたのに、それでも隆史と恋愛したいと思ったの
も私。
 やっぱり言うんじゃなかった。
言っても、何も変化しない。
私は我慢するだけ。
 ホストと恋愛するのって、難しい。
それでも頑張らないと、隆史の負担になってしまうだけ。
 邪魔したいわけじゃない。
むしろ仕事に野心を持ってる男を応援してあげたいと思ってるのに、恋心
がソレを否定してしまっちゃう。
 相反する二つの気持ちがぶつかり合って、どんどん私の心と理性を壊し
ていくの。
 いっそホントに心が壊れてしまえば楽なのに………。
ただ、好きなだけじゃどうしていけないんだろう?
どうして、嫉妬なんてしてしまうんだろうか、隆史が誰を見ていても、誰
を抱きしめていても私の気持ちはちっとも変わらずに大好き。
 好きの気持ちが大きくなればなるほど、独占したくて、おかしくなって
くる。
隆史が、モテない男なら良かったな。
そしたらこんな思いも知らずに済んだのに。
どんな女からも見向きもされないような男だったなら、私は優しい女にな
れたかもしれないのに………。


「佳織、いつまでシャワー浴びてるんだよ?
早く寝ろよ」
トイレにでも起きたのだろうか?
隆史が脱衣所から声をかけてきた。
「うん、わかった」


完全に暖まった体をベッドに沈めながら、再び眠りについている隆史の横
顔を見つめると、今でもドキドキしてしまう。
 何度見ても、隣にいるだけで緊張してしまう整った顔。
大好きで大好きで、一緒にいるといつもドキドキしてしまう。
 なんで男のくせにこんなに綺麗なんだろうか?
半分でいいからその美しさを分けてもらいたいよ。
整形でもしようかしら?
自分が美しくなったら、少しは不安にならないかもしれないし。
  ゆっくりと隆史の隣に横になったのに、隆史は気付いたのか、無意識に
なのか、腕を私の首の下に回して腕枕をしてくれた。
 何も考えずにこんなラブリーな仕草ができちゃうから誤解されちゃうん
だよ。
相手が私じゃなくても、隆史はきっと腕枕をしちゃう。
まるで当たり前のように……………。
  根っからのホスト体質とでも言うのかな?
ルックスに見合ったフェミニストぶり。
何人の女がコレにオトされて来たんだろう?
もちろん、私もその一人。
 もう、めちゃくちゃ隆史にオチまくり!
寝ているのに、隣にいるってだけでドキドキしちゃう私は毎日睡眠不足状
態。




 いつも隆史が起きるよりも先に起きて、寝顔を見られたくないとか思っ
てしまう。
今日は、隆史が私の部屋に泊まりに来たから、寝慣れた自分のベッドにも
かかわらず、3時間くらいで目が覚めてしまった。
 隆史の部屋に持っていく洋服を準備しなきゃ………。
眠い目をこすりながら、クローゼットから仕事用のスーツと、部屋着を何
着か取り出してショップ袋に詰めてから、冷蔵庫の残り物で朝ご飯を用意
した。
朝っつても、昼過ぎなんだけどね…。
そこは夜の仕事してる生活サイクルの違いだし、仕方ないよね。
 


 卵を割ってフライパンに落としながら、なぜか気分はウキウキしてしま
う。
女ってみんなそうなのかな?
大好きな人に食べてもらいたくて、お料理するのって、すごく幸せ。
しかも、どんなモノを作ってもおいしいって言ってよろこんでくれる姿を
想像しちゃうと笑いが止まらなくなってしまう。
お子様な私は珈琲なんて高尚なモノの味がわからないどころか、飲めない
んだけど、隆史の為に買ったコーヒーメーカーでドリップしていると、隆
史がベッドから起きてきた。
「すっげぇいい匂い」
寝起きだというのにさわやかな笑顔を作って、焼いたばかりのトーストに
バターを塗りだした。
「卵も焼いてるよ」
「最高!朝からできたてのメシが食えるなんて思ってなかった」
「朝ご飯くらいなら、毎日でも作るよ。
それに、お料理教室通おうと思ってるから、晩ご飯もがんばるね」
お皿にサラダと目玉焼きを盛りつけてテーブルに置き、私も一緒に食べ
始めた。
「いいよ、そんなに頑張らなくて。
今のままで十分おいしい」
トーストをガブリと食べながら、隆史はいつものように私をよろこばせて
くれる。
すっごいうれしいけど、でも、このままじゃダメ。
こんなステキな彼氏なのに、もっともっといい女にならなきゃ釣り合わな
いもん。
「でも、決めたから」
「じゃあ、楽しみにしとくよ。毎日佳織の手料理が食べれるのを」
「うん!」
いっぱい頑張るよ。
隆史がおいしいって思えるような料理が作れるように。
「オレ同伴入ってるから、一度家に帰るな。
今日は佳織も帰って来るんだろ?」
朝食を食べ終えて、隆史は確認するかのような聞きかたをした。

  昨日、胸の中にたまっていた気持ちを隆史にぶつけた。
ホストを辞めて欲しいと。
最初から無理なのはわかってたけど、それでもそう思ってる気持ちをわか
ってもらえたからなのか、同伴するって聞いても、あんまりイライラしな
い。
そりゃちょっとは淋しいけど、でも穏やかな気持ちで見送れそうだ。
「うん。着替えも用意したし、隆史の部屋に帰るよ」
「じゃあ、そろそろオレは帰るな。朝飯サンキュ!」
スーツに着替えて玄関のドアを開けると、隆史はそのまま行ってしまった。

 さてと、私も用意して、料理教室へでも行こうか。






 何件か教室案内を見て、一番分かりやすそうな家庭料理を習うことに
した。
料理って不思議で、難しいと思ってたけど、コツがわかると案外簡単にで
きる。
 おいしいかどうかは別として、とりあえず食べれるモノは作れるように
なって来た。
おかげで、一度自分の部屋で作ってから隆史の部屋に持っていくような手
間をかけないで、いきなり隆史の部屋のキッチンで作れる程には成長して
いる♪
  お料理上達の一番は、隆史の言葉と笑顔。
どんな料理を作っても隆史は残さずに食べてくれるし、おいしいと笑顔で
言ってくれる。
それだけで、もっと頑張ろうと思えちゃう。
 女ってすごく単純。
よろこんで食べてくれる人がいるだけで、こんなにもはりきってしまう。
教室の先生も、見かけによらずがんばりやさんだね。なんて褒めて?くれ
るし、ここ数日は幸せな日々だった。
もちろん隆史の同伴やアフターは気になるけど、私が心の中をさらけ出し
た日から、少しだけアフター率が減ったような気もするし、隆史は隆史な
りに努力してくれるのが、わかる。
 同伴やアフター。
いわゆる店外デートが指名に繋がるのを知ってるのに、営業妨害だとわか
っていても、やっぱり数が減るのはうれしい。
その分だけ、隆史と一緒に過ごせる時間が増えるから。
 


 「あれ、隆史くんちょっと太った?」
今日は久しぶりに和美と二人でEDENに飲み来ている。
隆史が席につくやいなや、和美の失礼な一言にもイヤな顔一つ見せずに隆
史は営業スマイルを見せた。
「やっぱり?
最近よく言われるんだけど、やっぱ太ったのかな?」
毎日一緒にいるから、多少の変化はわからないけど、まだ全然太ったって
域じゃない。
いつでもどこでも男前だし。
「うん、体重増えてるんじゃないの?」
「ま、な」
水割りで乾杯をして、5分くらい喋ると隆史はすぐに他の席に移動した。
和美は隆史がいなくなったのを確認してから、私の耳元に一言。
「ちゃんと健康管理してやりなよね、ダイエット食作ってあげれば?」

実は、わざと太らせてるんだよね。
なのにちっとも太ったように見えない。
 もっともっと隆史が太って、不細工になったらホストとしての人気も下
がるんじゃ?
そうすれば家にいる時間も増えて、私は今よりも幸せかもしれない。
 がんばって、高カロリーな料理ばかり作ればいいだけだし、簡単。ステ
ーキだとか焼き肉はもちろん、やたらと太りそうなモノばかり作った。
隆史は、どれも満足そうに食べてくれる。
もちろん、順調に隆史は太りつつあったみたいなのに、 和美にバレてし
まった。
ちっ!
せっかく作戦成功だったのに!
「そうだよね」
笑ってごまかそうとうなずいたのに、和美はやっぱりごまかされてくれ
なかった。
「………あのね、何考えてるのか、なんとなくわかるけど、夜の仕事って
ただでさえ生活サイクルが違うし、多量のアルコール摂取してるんだよ。
内臓の壊しちゃう人だって多いんだから、せめて食事くらい佳織がコント
ロールするべきでしょ?
男の成長を妨げる女って、嫌われるよ!」
…………。
ガ〜〜〜〜ンと、脳天をかちわられたような衝撃。
「成長を妨げるつもりなんてなかったもん!!」
隆史に嫌われたらどうしよう?
やばい!
すぐに作戦変更しなきゃ!!
「…営業妨害だっつぅの!
脂肪は人間を変えるよ、佳織だって5s太ったら、客減るに決まってるで
しょ!」
 脂肪は人を変えるって、大袈裟だよ。
「太ったくらいでそんなに変わらないわよ」
和美はすっごく呆れた顔で私を見た。
「あのねぇ、水商売ってのは、容姿も十分に売り物なの!
だから、自己管理してスタイル維持しなきゃ勤まらないの!!
 5s脂肪がついてごらん?
二重顎になって、目もくぼんで輪郭もまん丸なんだよ、そんな隆史くんを
見たい?」
…………そんな隆史でも好きだもん!
そりゃ最初はルックスに一目惚れしちゃったけど、今は顔だけじゃなくて
隆史の全部が好きなんだもん!!
「どんな隆史だって、隆史は隆史だもん。
太ったくらいで指名替えするような女だったら、最初からいらないもん」
「あのねぇ!
佳織はよくても、当の本人はすごく迷惑だよ!
 それに、仕事だけじゃなくて健康面でもやばいんだよ。
コレステロール値が高いと、血圧の差が少なくなって、いつ倒れてもおか
しくない状態になるんだよ。高カロリーなのって、コレステロールも高い
モノが多いし、ビールだってそうなんだから、彼が病気になっても知らな
いよ?」
な、なによ。
昼間の健康テレビじゃあるまいし、ドロドロ血とかサラサラ血なんて、関
係ないもん!
「若いから大丈夫だよ」
まだ、そんな年齢じゃないもん!
「…ペットボトル症候群って知ってる?
小学生とかで、スポーツドリンクとかジュースとかたくさん飲んで糖尿病
になるんだってさ。糖尿病だよ!
成人病だと思われていた病気でも、今は子供だってかかっちゃうんだから
ね!
若さなんて関係なく、病気になるんだよ。
知らないよ、彼が早死にしても!」
な、なんでそんな大袈裟な話になるのよ?
「わかったわよ、ちゃんと考えて料理すればいいんでしょ?」
ふんっ!

 隆史に嫌われるまえに、ダイエットメニューでも作ろうかな?
でも、今以上にいい男になったら、私の不安はもっと大きくなるんだろう
なぁ。



 仕方なく、部屋に戻ってカロリーの低い食事を用意して隆史を待った。
「今日はヘルシーなんだな」
高野豆腐に海鮮サラダ。素麺チャンプル。
テーブルの上に並んだソレを見ながら、隆史は小さな溜息を一つ。
「気に入らない?作り直そうか?」
「違うって、やっぱそんなに太ったのかな、おれ。
毎日佳織の手料理ばっかり食べてたから罰でも当たったのかも」
……………。
「そんなに気にするほど太ってないよ」
予定ではもっと、太るはずだったんだから。
「でも、見て分かるくらいだろ?
ジム通い復活しようかな」
え?
今、何て?
ジム通いってそんなのしたら、余計に二人でいる時間が少なくなってし
まう!!
「ダメだよ、頑張ってダイエット食作るから、ジムになんて行かなくてい
いって!!」
「でも最近筋肉も緩んでるって感じだし、ちょっと考えてみるよ」
「考えなくていいっ!
隆史が太ったのは私が高カロリーなモノばっかり作ってたせいだからなの!
だから、今日みたいな料理を作れば太らないでしょ?」
お願い、これ以上二人の時間を減らさないで。
「どうしたんだよ、ムキになって。
別に、どんな料理でも佳織が作ったモノなら全部食べるよ。ヘルシーなモ
ノだろうが、パンチのある料理だろうが」
違う!
そんなんじゃない!
「ジムに通う少しの時間でも、一緒にいたいって、隆史は思わないの?」
また、私だけが空回りしてるのかな………。
一秒でも長く二人でいたいなんて、我が儘でしかないの?
「………わかった。ジムには行かない。
その分佳織と一緒にいる方がいいよな、その代わり、ダイエットにつき合
えよ?」
隆史は、三白眼の黒い瞳に魅惑的な光を浮かべなら、微笑んだ。
「うん!」
「じゃあ、今から頑張ろう」
さっさとご飯を食べて、隆史はすぐにベッドへと一直線。
 あのぉ。
もしもし、隆史?
ダイエットって、あなたのダイエットって………。
「食後に適度なスポーツが一番だろ、ダイエットには」
「で、なぜにベッドの上にいるの?」
掛け布団を半分めくって、流し目で私を誘っている隆史。
冗談なのか、本気なのかいまいちわからない。
「さっき手伝うって言ったよな?」
言いましたとも、言いました。
 結局、隆史の罠に見事にはまってしまい、私はそのままベッドで隆史の
ダイエットにつき合うハメになった。


「実はね………」
凄く眠いけど、言っておきたい。
「何?」
腕枕をしながら、隆史は優しい笑顔を向けてくれた。
 ダメだ。
言いたくないなぁ。
この笑顔が怒りに変わるのかな?
ちょっと怖い………。

でも、やっぱり言わないとフェアじゃない気がする。
「ホントはね、隆史を太らせたくて、濃いモノばっか作ってたの………」
隆史は笑っていた目元に力が入り、マジマジと私を見ている。
「オレを太らせてどうするつもりだったの?」
「………太れば、人気が下がってホストやめてくれるかなぁって………」
ごめんなさい。
隆史の体調を悪くさせようとか、考えてたわけじゃなくて、ただ、ただ、
隆史と一緒にいる時間を増やしたかっただけ。
「………今回だけな」
そう言うと、私の首の下に回してある腕でギュッと力強く抱きしめてくれ
た。
「許してくれるの?」
「オレを好きだからやったんだろ?
じゃあ仕方ないじゃん。でも、今回だけ。
オレはもっと有名にならなきゃいけないんだ。
夢を叶えるためにも、仕事はやめない。
それで佳織に淋しい思いさせるかもしれないけど、待ってろよ。
 将来、オレがビッグになったらお前を幸せにしてみせるから」
…………。
初めて聞く隆史の夢。
そしていつか来る将来には、私も隣にいてもいいの?
そんなプロポーズみたいなセリフ、簡単に言わないでよ………。
 うれしくて、眠気もぶっ飛んでしまう。
「どんな夢なの?」
ホストでビッグになって叶う夢って、店を出すとかかしら?
「………今は秘密。すっげぇ言いたいけど、もう少し形になったら話すよ。
それまで待ってろよ」
瞼に優しいキスをして、隆史は枕をクッション代わりにして、起きあがっ
た。
「いつまで、待ってればいいの?」
どんな夢なんだろうか。
隆史は今、何を思い描いて喋っているのだろう。
 ただ、目先のお金が欲しいためだけにホストをしてたわけじゃないんだ。
いつの間に、隆史は将来を考えるようになったんだろうか。
「さぁ、10年後とかだったりして」
少し自嘲的に微笑みながら、隆史は私の髪をすいている。
 細い骨ばった指が、私の髪を何度も触れているのが、なんだか安心する。
「10年も?そんなに待ってたら私おばちゃんになっちゃうよ」
 今が楽しければいい。
そう思いながら日々をやり過ごしていたのは、いつ頃までだったんだろう
か?
男の子は将来に不安や、希望を抱きながら努力するように男に成長してい
くのかな?
「大丈夫だよ、仮に20年先になったとしても、佳織はかわいいから」
「もうおばちゃんじゃなくて、おばあちゃんだよ、ソレ」
 冗談めかしに言ったセリフに、隆史は思いもしない返事をくれた。
「いいよ。例え孫がいても、子供がいても、旦那がいても迎えに行くから。」
 どうして、そんな簡単に言えるのだろうか?
数日先の事さえわからないのに、いつまでも隆史の恋人している自信のな
い私に、そんな夢のようなセリフ。
どんな約束よりも空々しいのに、凄くうれしいと思う自分がいる。
隆史の将来設計の中に私が存在している事実が、胸を高鳴らせて、幸せ
の中に引き込んでしまいそう。
とろけるほどニヤけてるよ、今、絶対に。
 もう、邪魔しない。
隆史の仕事の足を引っ張らない。
いつか来る未来のためにも、私は隆史の内助の功でありたい。
「応援する、ね」
いつまでも髪をなで続ける隆史の手を引き寄せて、自分の頬に当てながら
言った。
隆史の夢が叶うために、私も努力しよう。
そう思ったから。
 なのに、隆史はそんな私を裸の胸に抱き寄せると、一言。
「もう、あんまり店に来るな」
な、なんで?
「だって、早くNO1になって有名にならなきゃいけないんでしょ?
だったら、少しでも売り上げ協力した方がいいんじゃないの?」
隆史は薄い下唇をキュッと噛みしめると、きつく目を閉じて、苦しそうに、
切ない表情になった。
「………そうだけど、佳織が店に来ると困るんだ。
他の客なんてどうでもよくなってしまうし、オレが席にいない間に、他の
ホストと楽しそうにしてると、どうしようもなくイライラするし」
初めて見せる隆史の本音。
 今まで、自分の嫉妬しか考えていなかったけれど、隆史は隆史なりに苦
しかったの?
お客かもしれないとか、悩んでた頃にこのセリフを聞いたらすぐに「うん」
とうなずいてしまうだろう、ステキな言葉。
でも、今は違う。
さっき隆史の夢を聞いて、何年かかるかもわからない壮大な野望を叶え
るためには、少しでも協力したい。
 ホントにおばあちゃんになっちゃったらイヤだし。
「どうしても淋しくなったら行ってもいい?」
「………タマになら、な」
「うん!」
どうせ私の事だから、毎日淋しくなるに決まってるけど、それは言わない
でおこう。
 そう胸に秘めて、隆史の言葉によろこんでいた私は、後で思い知る事に
なる。
「店に来るな」に隠されていたもう一つの意味に………。






2004-2005©白雪姫-hime-





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