ホスティボーイ
ホスティボーイ

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1 プロローグ 2 運命の再会 3消せない記録 4 元サヤ 5たった一言 6 客OR彼女?
7 合い鍵 8 料理上手に床上手 9 言いたくないの 10 未来予想図 11 壊裂する恋 12

●●●
2 運命の再会

 「すごい運命だよな、こんな所で再会するなんて」
もう、頭の中のスピーカーで何度も聞いていて忘れる事のなかった優しいテノ
ールがリアルに音を出している。
「うん、ホントすごい偶然」
「偶然じゃなくて、運命だって!」
薄い唇から真っ白の歯を見せて、隆史は笑った。
運命……。
すごく乙女チックな響きの言葉で、彼は私の気持ちをうれしく揺さぶって
くれる。
「じゃあ、運命の再会に乾杯でもする?」


 夜の街は、お金さえ出せば簡単に出会いが転がっている場所。
ただ、そんな世界での出会いなんて「金の切れ目が縁の切れ目」と言い切
れる程希薄なつながりしか作れない………。

私は、そんな世界で働いている。
お店で、気の合う女の子がいても、所詮水商売同士の友情なんてちっぽけ
だし、裏切りなんて当たり前だから、最初から深く関わろうとも思わない。
相手が男なら尚更だ。
お客様として、私に会いに来てくれる人はたくさんいるけど、そのほとん
どが私をホステスとして扱っている。
家に帰れば大切な家族がいたり、恋人がいたりするくせに、クラブで遊び
たいのが男の性なのか?
 中には独身で彼女のいないお客様もいらっしゃる。
本気でホステスを口説いている人も。
でも、どこかで私はわかってる。
所詮、ホステスだと思われている事を………。

 そして、今目の前にいるこの男も……水商売。
きっと、私と逆の立場。
カチンと琥珀色した液体の入ったグラスがぶつかる音が、私の戦いの合図
だった。

「あれから、ちゃんと高校卒業した?」
相変わらず綺麗な三白眼を優しく細めて、懐かしそうな隆史。
「もちろん!って言いたいんだけど、ギリギリ卒業できたって感じかな?」
まだ、二人とも高校生だった頃に、隆史が守ってくれた学園生活を私はち
ゃんと過ごした。
ほとんどさぼる事もせずに………。
でも、やっぱ日頃の行いが悪すぎたせいか、成績が、ね。
「そっか、相変わらず和美ちゃんと二人なんだな」
隣に座る、和美はどこか思い詰めたような表情でグラスに口を付けている。

もともと、ホストクラブに飲みに行くのは私たち二人にとって、ただの息
抜きでしかなかった。
恋愛を探して、出会いを探すために来てるのじゃなく、ただ楽しく飲めれ
ばいいって感覚だった。
 ホステスにはまって、カードローンの地獄に堕ちてしまった客を何人も
見てきてるし、二人とも、そんなバカな客にはなりたくないよね、って言い
ながら、どこかでホステスをバカにするオヤジたちと同じ心境でホストを
バカにしてたのかもしれない………。
「隆史くんは、いつからココで?」
いつも頭の回転の速い和美が、丁寧に言葉を選びながら隆史に聞いてい
る。
口数が少ないのは、きっと、どの会話をすればいいか迷ってるからだ……。
「学校辞めてすぐにボーイとして数ヶ月。その後は接客するホストに代わ
ったんだけどね。
佳織はあのままずっと?」
つき合ってた当時から、バイトとしてホステスしてたけど、隆史と別れて
真面目に学生してたから復活したのはホント最近。
だけど、どう説明したらいいのだろうか?
隆史が学校を辞めたのは私のせいだ………。
そのコトを口にしたくはない。
「…ちょっとブランクあったけど、最近復活したの」
和美の気持ちが伝わったのか、私まで隆史に対して何を話せばいいのか、
考えてしまった。
確かに少し離れていると言っても、隣のテーブルに会話が漏れるんだし、
色々と考慮しなければ、隆史の営業妨害になってしまう。

つき合っていたコトなんてバレたら、すぐに他のホストに足を引っ張られ
てしまう。
「そうなんだ。店は前と一緒?」
「うん」
当たり障りのない会話。

夢にまで見た隆史との再会なのに、こんな上っ面だけの適当な会話がした
かったわけじゃない………。
でも、別れてから二人が過ごした時間は、どうあがいても取り返すコトは
できない。
わかっているのに、少し虚しく感じてしまう。

薄暗い店内では、隆史の顔もはっきり見えない。
テーブルを挟んでの会話じゃ、些細な顔の動きまで見えない……。
ねぇ、隆史はどんな思いでいるの?
ちゃんと、お喋りしたいよ。
誰にも気兼ねしないで、もっと言いたい事はたくさんあるの。

だけど願いも虚しく、隆史は挨拶だけして他の席に行ってしまった。
人気のあるホストだと、指名しても1時間の10分くらいしか席について
くれなくて当たり前。
だから、隆史が他の席に行くのを咎めたりはできない。
ただ、なんか悲しい。
私はもっと隆史と会話したいのに、隆史はそうじゃなかったのかな?

「ビックリしたね。まさかホストになってるとは…らしいと言えばら
しいんだけど」
隆史がいなくなったボックス席で、和美はやっと本来の彼女らしくクール
な表情を取り戻していた。
「ん…」
「へぇ、隆史の知り合いなんだ?」
「ええ、同じ学校だったの」
テーブルに残ってる他のホストが話を合わせようと頑張ってくれる。
だけど、そんなのどうでもいいの!!
私は、隆史へと視線を流した。
楽しそうに一人で来ているお客さんに接している。

仕事だとわかっているのに、それでも胸の奥がズキズキとする。

「…だった?」
また、隆史に会えるなんて思っていなかった。
でも、忘れたことなんて一度もなかったよ。
いつも、何をしていても私の気持ちはすぐに隆史へと飛んでしまうの。
そのたびに、私は幸せな気持ちになれた。
どんな悲しい事があっても、どんなに泣きたくても、隆史を思い出すだけ
で、私は救われたの。

「佳織っ、聞いてる?」
隆史を見つめて、自分の世界に入り込んでしまった私を、和美は大きな声
で引き戻してくれた。
「え?ごめん、全然聞いてなかった………」
笑いながら、ヘルプのホストと和美にあやまって、水割りを飲み干した。
「だから、学生時代の隆史くんって、どんなだったか」
「ああ、すごいモテていたよ」
新しく水割りを作りながら、ヘルプ君はやっぱりと言いたげにうなずいた。
「だろうね、でも彼女とかはいなかったのかな?」
コースターの上にグラスが置かれる。
「………」
和美が私にチラリと視線を送っているのがわかる。
このヘルプ君がどんなつもりで聞いてるのかなんて知らないけど、この世
界で過去であろうが、恋人の話題なんて客にするものじゃない。
隆史本人が脚色して喋ったり、客に合わせて臨機応変に対応するのと、私
が言うのとじゃ、全然意味が違ってしまう。

それに………怖い。
元・彼女だったと言っても、ヘルプ君からすれば、騙されていた客にしか
見えないかもしれない……。

「ごめん!私水割りじゃなくてビールが飲みたいな」
「あ、そうなんですか?
じゃあ、ビール注文しますね」
せっかく作り直してくれた水割りをヘルプ君に渡して、話題転換しようと
したのに、この新人ホストめ!
きっちり、話を元にもどしてくれた。

「そんなにモテてたのなら、彼女の一人や二人いたんだろうな。
和美ちゃんや佳織ちゃんはどうだったの?
隆史の事、好きになったりしなかったの?」
……………。
痛い所をズバリと聞くんじゃねぇ!!
と、叫びたい気持ちを抑えて笑ってみた。
「あり得ないね!
私は愛するより愛されたい派なのよ。
隆史くんみたいな彼氏を持つタイプじゃないわね。今でも彼に群がってい
た連中の気持ちがわからないくらいだわ」
「へぇ、学生時代から和美ちゃんってそんな感じだったんだ?」
「そんな感じって、どんな感じよ?」
怒ったように和美が言うとホストは少し困った顔をした。
「あはは!
ステイタスのない男には興味ないわ!って感じなんじゃないの?」
「佳織まで失礼ね!
私は私をすっごく大切に思ってくれる人ならそれでいいのよ。
顔とかその他オプションはいらないの!!」
なんとか話題転換できそうだ。
「ウッソだぁ。だって学生時代につき合ってた人だって、某企業の管理職
だったじゃん」
「ああ、アイツね。すっかり忘れてた」
いや、忘れてたって…アンタ。
有名な経済雑誌とかにも写真付きで特集組まれてしまう程の有名人だった
よ。
「和美ちゃんって、そんな凄い人とつき合ってたの?」
ヘルプ君もやっと、興味が移ってくれたのか、和美の過去の恋愛話で盛り
上がった。
そこからは二人とも、本来のホストクラブでの遊び方に戻って、楽しく
お酒が飲めるようになっていたおかげで、時間が早く過ぎてしまい。
テーブルの上にフルーツの乗った小さなお皿が置かれた。

 へぇ、さすがに一流ホストクラブになると、こんなサービスで時間を教
えてくれるんだ。
本来、ホステスがいるクラブではよく使われているシステム。
1時間あるいは1時間半で、セット料金が決まっているから、その時刻に
なれば、それとなくお客さんに教えるようにフルーツを持って来る。
それでも帰ろうとしなければ自動延長になって、新たにセット料金を払
うようになっている。
 今まで言っていたホストクラブでは、こんなシステムもなく、気が付い
たら延長されていたって感じだったのに。
さすがだなぁ、雑誌に載るだけの有名老舗クラブ「EDEN」だわ。
 仕事柄、そんな所に感心していた私の元に、隆史が戻ってきた。

「ただいま」
相変わらず女泣かせな顔。
いつもは鋭かった三白眼を、これ以上ないくらい優しく細めながら、唇に
は笑みを浮かべている。

さっきまでは、ただのBGMにすぎなかったピアノの生演奏が、まるで隆
史のためにだけ流れていたかのように、一瞬止まった。
 ただの偶然なんだろうけど、まるでドラマのワンシーンみたいに静かに
なった途端に現れる。

なんでこう、やることがいちいち様になってしまう男なんだろ?
まぁ、だから惚れたんだけどね……。
和美じゃないけど、第一印象って大事だと思う。
特に私はメンクイってわけじゃないんだけど、一目で心が奪われてしまっ
たのよね。
ホストスーツに身を包んだ隆史もやっぱりステキで、学生時代の隆史とは
また違った魅力がある。
「何の話してたの?オレも混ぜてよ」
「あ、お帰り隆史。和美ちゃんの恋愛遍歴について喋ってたんだけど、彼
女すごい強者だな」
ヘルプ君は、今までの話におもしろおかしく脚色をつけて、少し大げさに
喋り出した。
あら、新人かと思う程の接客なのに、たった今聞いたばかりの話をココま
で自分の話題みたいに変更できる話術はすごいぞ!!
ちょっと、見習いたいくらいだ。
「ごめんね、せっかく戻って来てくれたんだけど、今日は帰るね。
とりあえずEDENの下見って感じで来ただけだし」
いつもはすごくつまんない店じゃない限り、2セットはいるのに、めずら
しく今日は和美が切り上げた。
チェックを済ませて、店を出るとエレベータ待ちで隆史がソッと私の手に
自分の名刺を渡した。
「店4時半に終わるから、電話して」
…………。
どのホストも同じように、二人だけの秘密っぽく電話番号を教えてくれる。
だけど、隆史に同じ事をされるとドキドキしてしまう。
頭の中ではわかっているのに、これがホストの手口だと……。

「じゃあ、またね」
エレベータに乗って、閉ボタンを押そうとする和美が手を止めた。
隆史とヘルプ君が一緒にエレベータに乗り込んだからだ。
「何、下まで送り出ししなきゃならないの?」
普通は、エレベーター前までお客さんを見送ったらサッサと店に戻って、
他の客につくのに…。
「今日は特別!」
ヘルプ君はニッコリと笑顔で言った。
う〜ん、どうなんだろう?
店によって、サービスは色々あるから、EDENは下まで見送るのが普通
なのかもしれないし…。
まだ、営業を続けてるヘルプ君とは対照的に隆史と私は無言だった。

エレベーターが1階に到着して、和美とヘルプ君に引き続き降りようとし
た私の腕を、強引に中に引き戻されてしまった。
「え?」
エレベーターのドアは二人を残して閉まってしまう。
いきなりの密室。

 ドキドキと鼓動が早くなってしまう。
大好きな人に再会しただけでも今日は大収穫なのに、こんな風に一瞬で
も二人きりになれるなんて!
「凄く会いたかった!」
掴んでいた腕を自分に引き寄せるように、引っ張った隆史。
私は態勢を崩して、そのまま胸に抱きしめられた。
とたんにフワリとエゴイストプラチナムの匂いが、私を包む。
 大好きな匂い。
なつかしさが鼻孔から、理性を揺さぶって恋人同士だった頃に戻ったよう
な気分になってしまう。
「…私も」
すぐ近くにある隆史の顔を見上げると、すごく熱を帯びた隆史の三白眼と
目が合った。

だんだんと顔を近づいてくる。
軽く触れるだけのキス……。
だけど、彼がいつもくれていたキスとは違って、息が苦しくなる程の長い
キス。

初めて受けるキスみたいに、思考回路までぶっ飛んでしまいそうな程
ドキドキと心臓が早い……。

唇が離れると、まるでファーストキスしたかのように、恥ずかしくて
顔が見れない。
「絶対電話しろよ!待ってるから」
俯いて、呼吸を整えている私に、隆史は私の知っている頃の彼と同じよう
に高圧的な感じで言った。
それすらも、くすぐったい胸にはときめきになってしまう。
 エレベーターのドアを開けると、心配そうな和美の顔とバッチリ目があ
った。

「今日はホントにありがとう!
また、待ってるから来てね」
ホントに送り出しが終わって、私と和美は歩き出した。
腕時計を見ると、時刻は夜中の3時半を示している。
「これからどうする、タクシーで帰る?」
まさかと思うけど、一応確認のために聞いてみると和美は左右に首を振っ
た。
「まっさか!!
今から飲み直しだろ?
隆史くんとの再会を祝して、色々喋りたいはずの佳織ちゃん」
さっすが長年つき合ってる友達だけあるよ!!
和美ってばよくわかってんじゃん。
私たちは、よく行くカラオケボックスへと足を延ばした。

「でもまさかホストしてるなんてね。
やっぱりとか、さすがって気もするけど、驚いたのは確かだわ」
和美の意見に大きくうなずいた。
まったくその通りなのよね。
まさかって感じなのよ。
もちろん、つき合ってた頃にもそんな話題はあったし、予想できる範囲な
んだけど、まさか!!って気分。
「でも、ホスト姿の隆史もステキだった」
思い出しても、鼻血もんなセクシーさ。
きっちりとラインの整ったブランドスーツに身を包み、ネクタイを堅く締
めてる姿を拝む事ができるなんて、夢のようだわ。
ストイックなセクシーさとでも表現すればいいのかしら?
学ランでも、軍服とかでもそうなんだけど、禁欲的なまでに首できちんと
止めて、肌の露出を控えているのに、にじみ出る色気って、
どこから生まれるのかしら?
私なんて、チラリズムを駆使してやっと色気が出たくらいなのに、男のく
せにうらやましいっ!
「はいはい、惚れ直した?」
「もちろん!!」
ああ、ダメだ。
今更興奮して、頭の中に隆史がグルグルしてる。
タバコも香水も、つき合ってた頃と同じ銘柄だった。
 ジンクスみたいなモノなんだけど、タバコや香水をコロコロと変えるの
は、女もコロコロ変わるって聞いてたから、ちょっとだけうれしい。
もちろん隆史に限り、女がいないとは思ってないけど、でも少しくらい
期待できそうな予感。
「良かったね、再会できて」
いつになく優しい声で、和美はニコリと微笑んでくれた。

隆史と別れてからずっと、私は恋をしなかった。
誰も好きになれなかった。
 笑っていても、どこかで冷めてる自分を感じているような、満たされな
い気分で2年を過ごしていたのを、和美はずっと近くで見守ってくれてい
た。
きっと和美なりに心配してくれていたんだろうな。
絶対に、隆史の名前を出さないようにしながら喋ってくれたり、たくさん
の心遣いを思うと、すごくうれしくて、なんだか涙がこぼれそうになって
しまう。
「うん。ありがとうね」
「お?ウルウルしてるぞ、そんなにうれしいのか?」
優しく私の髪を撫でながら、和美はわざとおどけた調子でそう言った。
「うん、幸せ」 
ホントにいつもありがとうね。
何かあったら、絶対和美の力になるからね!
なんか、隆史に再会したせいか妙に気持ちが高ぶって、涙腺が弱くなっ
てるのかな?
人前で泣くのって苦手だったけど、和美には素の自分をさらけ出せる。
凄く辛い時に励ましてくれたり何も言わずにそばにいてくれたり、こう
いうのを親友っていうのかな?
今まで、女の知り合いはたくさんいたけど、信用できるような人はいなか
った。
みんな、心の底まで見せる事なんてできなかったけど、和美だけは違う。
どこまでも信頼できて、何でも言えるような気がする。
「で、元サヤになったの?」
…………。
「元サヤ?」
和美への思いに浸っていた私は一気に目が冷めた。
「あれ、違ったんだ」
元サヤ…って、うわぁ。
「そうなりたい!!
もう一度、隆史とつき合えたらいいな。
これから、頑張って押しまくらなきゃだね!!」
再会だけで、よろこんでたらダメじゃん私。
「その方が佳織らしいね。
押して押して押し倒しちゃうような女だよね、本来の佳織って」
いやぁん。
押し倒すだなんて、そんな露骨な事したいけどしないわよっ!
「恥じらいってものが私にだってあるんだからね!」
「あはは、佳織にもあったんだ。常識程度の恥じらいが」
し、失礼ね!!
「ホントは、隆史の前に出ると自然とそうなっちゃうだけなのよ。
恥じらいとかじゃなくて、舞い上がってしまって、何が何だか自分でもわ
かんない状態になっちゃうの」
  さっきだってそう。
せっかくの再会で、しかも隆史が席に着いていた時間なんてほんの少しし
かなかったのに、
テンパってしまって、何を喋ったのかほとんど覚えてないのよね。
「あはは、なんか隆史くんの前に出ると佳織って人間変わったよね!
いつもはイケイケって感じなのに、妙に女の子しちゃうの。見ていると
かわいい!!って思う時と、ああ、相当やばいぞって思う時があったけど、
今でもそうなんだ……」
相当やばいって、どんな感じなんだ?

自分でも分からないのに、客観的に言われるとすごく恥ずかしいな。
「なんでだろ。なんか隆史を見た瞬間に気持ちだけが学生時代に戻っちゃ
ったの。
情けないなぁ。これでも大人になったつもりなんだけどね」
「いいんじゃない、それで。
恋する女は、いくつになっても女の子なんだから」
おお!
和美にしてはめずらしく、乙女チック発言だ。
どういう心境の変化なんだろうか?
思わずマジマジと顔を見ると、和美は次第に美人と言われる顔を真っ
赤にしていった。
「………」
あれ?照れてる??
「和美が照れてる!!
これはニュースだわ!テレビで流れてもおかしくない程の大事件!!」
「うるさいぞ、佳織。
あんたと隆史くんの再会で、ちょっとは運命的なモンを感じてしまったの
よ。」
和美の一言に、今度は私が赤面してしまう。
運命的…………。
ホントにそんなモノがあるのかしら?
もし、あるなら。
隆史との運命しかいらない!
もう、何も望まないよ。
隆史がいなくちゃ、私の幸せなんてあり得ないってわかったもん、この2
年間で。


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2004-2005©白雪姫-hime-