ホスティボーイ
ホスティボーイ

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1 プロローグ 2 運命の再会 3消せない記録 4 元サヤ 5たった一言 6 客OR彼女?
7 合い鍵 8 料理上手に床上手 9 言いたくないの 10 未来予想図 11 壊裂する恋 12

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7 合い鍵

「お帰り〜〜〜〜〜〜」
隆史が戻ってきて、隣に座っていた翔麻くんが席を立った。
「そのままでいいよ、翔麻」
隆史はそんな翔麻くんをそのままソコに座らせて、自分は向かいに座った。
 どうせすぐ移動するから、このままでいいって意味だよね。
別にいいけどさ。
やっぱり淋しいな。
「オレいい事思いついたんだ。佳織、テーブルの下に手入れてみ?」
ん?
隆史は、いつもは鋭い三白眼をゆっくりと細めて、優しい笑顔を作る。
言われるままに、手を差し出すと隆史の手が私の手を探り当てるようにし
て繋いでくれた。
「えっっ」
「これなら他の客にバレないだろ?」
ニッコリと微笑んでいる隆史。
アルコールのせいだけじゃない。
動悸が激しくなってくる。
ドキドキドキドキとうるさいくらいに、胸が叫んでいる。
確かに薄暗い室内で、それぞれがホストとの会話を楽しんでいるなか、他
の席のテーブルの下にまで視線をはわせる客なんていないだろう。
 ダメだなぁ。
また隆史を好きになっちゃったよ。
なんでこんなに隆史は私をときめかせるんだろうか?
もう破裂しちゃいそう。
「そうだ、ちょっと待って」
隆史は一度手を放して、ゴソゴソとソファの上で小さく動いてから再び優
しく手をつないでくれた。
だけど、二人の手の間には何かが挟まっている。
「オレが席を離れてから見ろよ。今はダメ」
ナンだろ?
「堅いよ」
「ああ」
隆史はニコニコと笑顔を崩さないまま、片手でグラスを空けている。
そのグラスをヘルプの翔麻くんが新しく作っている。
二人がつないでいる手の間にあるのはナンだろ?
隆史が他の席に行くまでわからないなんて、楽しみと悲しみを一度に味わ
うことになっちゃうのね。
 隆史は私の席にいる時でも、周りを気にしながら飲んでいる。
他の自分の客を監視するみたいに………。
「すっごい気になっちゃうよ…。早く見たいな」
こんな事言えば、隆史はすぐに他の席に行くだろう。
でも、そうしなきゃ隆史はこの席にもう少しいなきゃならない計算になっ
てしまうんだろう。
ホストが一つのテーブルに居る時間は、ちゃんと決まってる。
基準は簡単。
延長時期と、チャンスボトル具合に、常連率や、未収率なんかを考えてテ
ーブルを回らなきゃいけないけど、アルコールが入るとソコはもう、ホス
ト本人のバランス感覚と、カンでしかなくなってしまう。
だって、相手は人だから………。
隆史も私のセリフのホントの意味に気が付いてる。
「悪いな。翔麻、楽しませてやってな」
翔麻くんに私の接客を頼みながら、隆史はまた離れていった。
プラチナムの香りだけをほのかに残して………。
テーブルの下から手を取りだして、中身を見てみると、赤いエルメスのキ
ーホルダーがつけられた部屋の鍵。
コレって隆史の部屋の鍵だ。
部屋で待ってろって意味かな?
 それとも合い鍵をくれるってこと??
………まさか、ね。
でも、鍵を預けるなんて彼女ってうぬぼれてもいいんだよね。
客を部屋に入れることはあっても、鍵を渡したりはしないだろうし…。
なんか、うれしいな。
私の不安をぬぐい去ってくれるのは、隆史しかいない。
もちろん、私を不安にさせるのも隆史しかいないんだけど。
「ごめん、チェックしてくれる?」
翔麻くんと30分くらいお喋りしてから私は会計を済ませた。
「もう帰るの?今日こそ一緒に帰ろうと思ったのに」
慌てて隆史が戻って来た。
私を送り出しするために。
「だって、部屋で待ってろって意味じゃないの?」
「違う違う!合い鍵だよ。
ホントは昨日渡そうと思ってたのに、和美ちゃんと先に帰るから渡せなか
ったんだ」
カバンのポケットにしまった鍵を取り出した。
「ずっと私が持ってていいの?」
まるで、宝物のように手のひらで光っている鍵。
「もちろん!
ソレ、オレとお揃いなんだぜ」
隆史はスーツのポケットから黒のキーホルダーのついた鍵をチラリと見せ
てくれた。
 ホントだ。
一人で不安になって、なんだかバカみたい。
隆史はこんなに私を大切にしてくれるのに。
「じゃあ、先に行って待ってるね」
「ああ、寝ててもいいからな」
隆史は、いつになくすごく優しい顔で微笑みながらうなずいた。

タクシーを降りて、隆史の部屋の前でドキドキした気持ちで鍵を取り出し
た。
 すごく緊張する。
鍵穴に差し込みながら、回すとガチャリと錠の落ちる音がした。

うわっっ!
開いたよ!!

当たり前なのに、感動してしまう。
高ぶった気持ちのままドアノブを回して部屋に入った。
出勤前に隆史がつけたのだろう香水の匂いが残っている。
「な、なんかドキドキしちゃってるし……」
泥棒にでもなった気分で、なぜか音をたてないように忍び足で進入してし
まった。

本人のいない隆史の空間に、今私がいる。
毎日ここでどんな風に過ごしているんだろうか?
どこを見渡しても面影が残ってるようで、この部屋にいるだけで私は幸せ
な気分に満たされる。
 つい数時間前まで、私は騙されてるかもしれないと悩んでいたのが嘘み
たいに晴れやかな気持ち。
 一人で悩んでいたのがバカみたい。
隆史はちゃんと彼女扱いしてくれてるのに、不安になってたなんて知った
ら怒るかな?

ソファに座って、テレビを付けた。
深夜番組は私の耳を素通りしてしまう。
頭の中は隆史のことばかりで、いっぱいだったから。

ダメだなぁ。
高校生の頃からちっとも成長してないみたい。
隆史の一言や、表情ですぐに不安になってしまったり、簡単によろこんで
浮かれてしまったり、振り回されてしまう。
恋に溺れるってこういうことなのかな?
四六時中隆史ばかり考えてしまう。
いつ、電話かかってくるんだろうか?
今何をしてるんだろうか?
隆史を思い出すだけで、ドキドキするくらいに大好き。
もう、止めなくてもいいんだよね、この気持ち。
私はお客さんじゃないから、騙されてるわけじゃないから、ブレーキをか
ける必要なんてない。
もっともっと隆史を好きになってもいいんだ。
素直にトキメキを感じても、虚しくならなくていい。
いつか、こんな風に隆史の帰りを待ってるような女になりたいな。
今はまだ結婚なんてできないけれど、だけど、タキシードを着た隆史の
隣に並んで、神様からの祝福を受けるのは私でありたい。
世界一幸せな花嫁だよ、隆史の奥さんになる人は。



「ただいま」
ガチャリとドアが開いて、仕事を終えた隆史が少し疲れた顔で帰って来た。
「おかえり」
なんか、新婚さんみたいなやりとり。
ちょっと、テレてしまう。
隆史も同じ事を思ったのか、笑顔になった。
「いいなぁ。
仕事終わって帰宅すると佳織が出迎えてくれるって」
「なんか、ドキドキしちゃうけどね」
スーツを脱いでネクタイをほどきながら、隆史は冷蔵庫からミネラルウォ
ーターを取り出した。
「寝ててもいいって言ったのに、待っててくれてありがとな。おかげです
ごくうれしい気持ちになれた」
どうしてこう、簡単に隆史はそんなこと言えるんだろう?
うれしい気持ちになれただなんて、男の人は滅多に言ってくれないのに……。
それだけで、女の子がすごく幸せになるのをわかってるのかな?
ホストの仕事を始めて、隆史のストロベリートークはさらに磨きがかかっ
たみたいだ。
もともと女がよろこぶツボを抑えた会話を得意としていたけど、なんかパ
ワーアップしたような気がする。
「眠れないよ、隆史の部屋にいるだけで緊張しちゃって」
私の隣に腰を下ろして、隆史は引き寄せるように私の肩を抱いた。
「緊張するなよ。これからいつでも佳織の好きな時に来ればいいんだから」
はだけたシャツから素肌が覗いている。
引き締まった胸元に、微かに残っているプラチナムの香水。
「ホントにいつ来てもいいの?」
隆史は私の髪をすくように、手を忍ばせて大きくうなずいてくれた。
「もちろん。
いっそのこと、今度こそ一緒にココで住む?
ボロイアパートがイヤだったらマンション借りてもいいし」
………………。
以前、同棲しようと言われた時は、考える所があって出来なかったけど、
今なら一緒に住むのに躊躇する必要は何もない。
「そうだね」
ずっと隆史と一緒にいられる。
毎日隆史の顔を見れる。
声が聞ける。
平凡な日常が、刺激的に変わるんだ。
もう、お客さんかも?なんて不安も抱くことないだろうし………一緒に住
むのもいいかもしれない。
「じゃあ、とりあえず必要なモノだけ持って来いよ。家具とかはそのうち
ツレに頼んで運んでもらってもいいし、引っ越し業者に依頼してもいいん
だからさ」
「うん」
これから毎日隆史と一緒にいれる。
 今日は会えるかなって淋しい思いをしないでいいんだ。
「ずっとずっと、一緒だね」
「ああ。」


 二人で少し寝てから昼過ぎ、私は必要最低限のモノだけを持って隆史の
部屋に来た。
1週間分の着替えと、メイク道具。
そんな私を見て、隆史は少し呆れたように笑う。
「マジで最低限だけだな…」
だって、仕事帰りにいつでも取りに戻れるし、そんなに必要なものって、
案外なかったのよね………。



 だけど、同棲って思ったほど甘くなかったのよ!!
幸せでラブラブなピンクの世界だと夢見てたのに………。
まずトイレ。
かなり、根性いるよ………我慢するの。
隆史が部屋にいる間はなるべくトイレに行かないようにしてるから、その
うち膀胱炎になってしまいそうだし、着替えだって恥ずかしくてまともに
できない。
それに、メイクしてる所だって見られたくないから、隆史が寝てる間にさ
っさと仕上げなくちゃいけないし………。
 本音を言うと、少し窮屈な気分。
とどめはお料理。
これが一番大変だった。

 初日は、大好きな隆史がよろこんでくれればうれしいなと思って、朝食
を作った。
コンビニでサンドウィッチ用のパンとハムを買ってハムサンドを食べても
らった。
 もちろん隆史は凄くよろこんで全部たいらげたものだから、ついついう
れしくて、晩ご飯まで作ったりしたんだけど………。
「手作りの飯が食えるなんて、いいよなぁ。
しかも佳織が作ったならなおさらうまい!!」
なんて言われてしまって、調子乗ってしまった私は…つい、うっかり口が
滑ってしまった。
「じゃあ、出来る限りご飯作るね♪」
と。
どうしよう〜〜〜〜〜〜〜。
ご飯なんて家庭科の時間に作ったカレーとか、イタリアンスパとかしか作
れないのよ、私。
コンビニで適当に買ってお皿に盛りつけようかしら??
でも、コンビニ弁当に慣れてる隆史にはすぐバレちゃうだろうし…。
ああ、ホントどうしよう。
冷や汗もんだよっっ!!
唯一の救いは「出来る限り」作ると言った所だけよね。
毎日じゃなくて良かった!
  

  ああ、料理本やネットでレシピを見ながら試行錯誤の毎日。
しかも、自分の部屋で作ってから隆史の部屋に持って行く始末。
私ってば、かなりの努力家だったんだぁ!
なんて、気が付いてしまった。

そんな発見を和美に言うと
「なんで隆史くんの部屋で作らないの?」
なんで、ってそりゃ当たり前でしょ!!
「失敗したらどうするのよ??
ゴミ箱に捨てても、残骸でバレバレだから、自分の家で作ってから行くの!!
失敗したらそのまま捨てれるし、調味料とか、鍋とか隆史の部屋はあん
まり揃ってないのよ」
ホントは週に四日くらいは料理してるんだけど、その半分くらいは失敗で、
隆史には見せることもできないような物体が出来てしまったんだよね………。
「隆史くんは成功作しか知らないんだ?」
「当たり前じゃん!!」
「………疲れない?」
和美は溜息まじりに白けた目をしている。
「うん!疲れるんだよね。
一人で生活してた時はさ、風呂上がりとかも平気でバスタオル巻いただけ
でウロウロしてたし、寝る時も起きる時も普通だったんだけど………。
今は寝るのも大変だよ!!
もし寝相が悪くて隆史を蹴ったらどうしようとかさ、口を開けて寝てたら
かっこ悪いとか考えながら寝るから熟睡できないし、食事だって、隆史の
前だと緊張しちゃってそれだけでお腹いっぱいになるし………」
「どおりで痩せたわけだ」
やっぱり??
なんか、体が軽くなったような気がしてたんだよね。
体重計乗るのが怖くて量ってなかったんだけど。
でもラッキーじゃん。
「ダイエットしなくても痩せるなんて♪
隆史効果って凄いね」
どこまでもルンルン気分の私の額に和美はデコピンを一発!
「な、なにするのよっ」
いきなり痛いじゃないっっ!
「何するのよ、じゃないでしょ!!
佳織の場合痩せるってより、やつれたの!
どうして一緒に生活してそんなに緊張するのよ?
それじゃあ隆史くんだって、くつろげないだろうし、もう少し気をぬきな
よ」
気を抜く?
隆史と一緒にいるのに、気を抜くなんてできるわけないじゃん。
仕草の一つ、言葉の一つ、怖いんだもん。
こんなセリフは隆史は嫌いかもしれないとか、こんな仕草は不細工と思わ
れたらどうしようって考えると、身動きとれなくなってしまうのに、気を
抜くなんて、無理。
「無理!絶対無理!!
隆史の前で緊張感なくしたら、嫌われちゃう」
「嫌われないって!
自然にしてればいいのよ、もしそれで嫌いになるような男なんて、ずっと
一緒にいられないんだから、さっさと別れた方がマシよ」
…………。
酷い!
別れた方がマシだなんて…。
「そのうち慣れるもん!!」
「あっそ。勝手にすれば?」
和美は呆れ果てて、更衣室を先に出て帰ってしまった。
………………。
なにさなにさ!
別に勝手にするもん!!

 今日も今日で、自分の部屋に戻ってイソイソと料理を作った。
今日のメニューはハンバーグ!
出勤前に、ミンチとパン粉を買ったのよね。
頑張って涙と格闘しながらタマネギをみじん切りしてミンチとコネコネ。
なんとか形なったので、一つだけ焼いてみた。

「おお、デリシャ〜〜〜〜〜ス」
これは隆史にも食べてもらえるぞ!!
かなりの出来映えに少し興奮しながら生のハンバーグをラップで包んでか
ら隆史の部屋へと向かった。
 後は隆史が仕事を終えて帰宅するのを待つだけ♪
この一時ってすごく心地いい。
どんな顔して食べてくれるんだろう?
おいしいって言ってくれるかな?
今日も、アフターせずに帰って来てくれればいいんだけどなぁ。
隆史は同伴は多いけど、アフターはかなり少ない。
夜中に店が終わるから、お客様もアフターはつらいのかな?
それとも…私が待ってるからアフター減らしたとか??
な、なんてかなりうぬぼれちゃってるよ、私。

  だけど、そのうぬぼれもすぐに否定されてしまった。
隆史の部屋で待ってる私の携帯に一通のメール。
『ゴメン、今日は遅くなりそうだから、先に寝ていいよ』
うわぁあぁぁぁぁぁぁぁん!!
うぬぼれちゃったから?
だから、神様が意地悪してるの?
せかっくハンバーグ作って待ってるのに、遅くなるだなんて。
しかも寝ててもいいって、どれだけ遅くなるのよ?
何時間くらいアフターするつもりなんだろ?
 4時半からアフターなんて、どこに行くのだろう、開いてる店も少な
いし、ま、まさかホテルとか??
それとも、客の部屋??
ああ、考え出したらきりがない。
せっかく合い鍵をもらって、半同棲してるのに、また不安になってしまい
そう。
 ダメだ!
考えない、考えない。
私は隆史の特別。
だから、何も心配せずにただ待っていればいい。
隆史は絶対にココに帰って来るんだから、待ってるだけでいい。
 私は隆史の彼女。
お客さんじゃない。
大丈夫だよ…隆史は私を一番に思ってくれてるはずなんだから………。

言い聞かすように、納得できるように、いくつものはげましを自分にして
るのに、やっぱり胸の奥がチクチクとする。
どんなセリフで、喜ばせてあげてるのか、どんな表情で話をしてるんだろ
う?
どんな仕草で、どんなふうに触れあっているんだろうか?
隆史のベッドに潜りこんで、香水の残り香に包まれてみても、一向に睡魔
は来ない。
寝てなきゃ、こんな嫉妬で歪んだ顔を隆史に見せるわけにはいかないのに
………。
眠れないよ。
目を閉じると、たくさんの隆史の表情が浮かんできて、それらをお客さん
に向けてると思うだけで、イライラする。
 どうしてこんなに嫉妬してしまうんだろう?
ただ、好きなだけで幸せになんてなれないの?
 こんなにも胸が痛くて苦しい夜をいくつも経験しないと幸せにはなれな
いの?
隆史が隣にいて、笑ってるだけで幸せだなんて嘘だ。
隆史が隣にいないと幸せになれない。
ずっと側にいてくれないと不安で不安でたまらない。
 四六時中、一緒にいたいわけじゃないけど、私の側にいない時は決まっ
て知らない女と一緒なのが苦しい。
ソレが仕事だとわかっていても、ジワジワと浸透して広がっていく嫉妬の
感情はどうやったら消せるのだろうか?
隆史がホストを続ける限り、嫉妬の感情は増えるだけで、慣れるなんてな
いのかな?
 感覚が麻痺してしまって、何も感じられなくなってしまえばいいのに!!
淋しいよ、隆史。
うさぎはホントに淋しかったら死んでしまうのだろうか?
だったら私は何度も死んでしまう。
苦しいよ、隆史。
心の奥に嫉妬を隠しながら、隆史の側で笑うなんてできないよ………。
もう、グチャグチャになっちゃう。
何も考えたくないのに、淫らな妄想だけが広がってしまうの。
隆史が枕営業してるって。
どんな風に客を抱くの?
初めて隆史に抱かれた時にね、私は騙されそうになった。
ナンパされて、すぐにHしたけど、すごく優しくて、大切に扱ってくれて
………。
その時だけは幸せな彼女の気分だった。
愛されてると思いこめそうな優しい愛撫。
どんな女にも、そうなんでしょ?
誤解させちゃうようなピロートークも交えながら抱いてるんだよね、きっ
と………。
苦しいよ、ホント。
涙がこぼれちゃう。
イヤだな。。。
泣き虫じゃなかったのに………。
女の武器は利用するもので、自然と流れる涙なんて大嫌いなのに、最近ず
っと泣いてるんだよ、私。
隆史は知ってるの?
私がどんな気持ちで、必死で我慢しているのかを…。
  もう、嫉妬が体中に溢れて窒息しそうだよ………。
消してしまいたいよ、こんな気持ち。
 どれだけ肌を重ねても、どれだけの時間を二人で過ごしても、たった数
時間隆史がいないだけで不安になってしまう私自身も消してしまいたい。
 いつも強くありたいの。
心から笑えるように………。






2004-2005©白雪姫-hime-