一緒に暮らすようになってどれくらい過ぎたんだろう?
別々に住んでた時よりも、一緒にいられる時間が多い分だけ、たくさん隆
史とお喋りできるし、触れあっていられるけど、近くにいるぶんだけ、小
さな変化にも気が付いてしまう。
お客さんからの電話にしても、私に気を使いながら出る人がいたり、わ
ざわざお風呂場に入って出る人もいたりする。
きっと、聞かせたくない会話なんだろうけど、そんな行動で、胸が詰まっ
てしまう。
先に私の方が仕事に出るから同伴の約束とかしていてもわからないし、ア
フターも最近は頻繁にしている。
同棲当初は、遠慮してたのかな?
今は二日に1度は帰りが遅い。
「今日は、和美と遊びに行くからマンションに帰るね。ついでに着替えも
取りに行きたいし」
化粧をしながら、鏡越しに隆史を見た。
「遅くなってもいいから、ココに帰って来いよ。淋しいじゃん」
「うん、わかった。
じゃあ、行って来るね」
部屋を出て、ドアを背中に閉めた途端私の体からスッと力が抜けるの
がわかった。
「………」
気を抜くとすぐに泣きそうになるくらい、私はかなりの情緒不安定にな
っている。
隆史と同棲して、すごく幸せなのに、苦しいなんて…。
別々に暮らしていると、淋しくて淋しくて不安になってしまうし、同棲
すると些細な仕草で隆史を疑って不安になる。
どっちもどっちだよなぁ。
なんか、好きになればなるほど、ドツボにはまってる気がする……。
これから隆史は準備をして、同伴出勤するのかな?
どんな人と、食事をするんだろうか?
どんな会話をするのだろうか?
仕事だとわかってるのに、嫉妬しちゃうなんてんみじめだよ……。
なんで、こんなに不安になるんだろう?
どれだけ愛してると言われても、どれだけ大切にされても、すぐに女々し
い嫉妬でがんじがらめになってしまう。
「おはよう、初っぱなか暗い顔して更衣室を陣取ってんじゃないよ!」
更衣室の鏡の前で最後のメイク治しをしながら、考え込んでた私の頭を軽
く叩いた和美は、ロッカーに荷物を詰めてからすぐに隣に座った。
「今日は同伴じゃなかったの?」
「うん、なんか最近ヤル気なくってさ」
「めずらしいね」
和美は学生時代から、仕事にはなぜか真面目で、こんなセリフが出てくる
なんてちょっと意外。
「いやぁ、かわいいかわいい佳織ちゃんが心配で仕事に手がつかないんだ
な」
ちょっと、ふざけたように笑いながらやっぱり和美は少し落ち込んでいる
のかな??
なんだか、いつものように覇気がない。
「どうかした?」
「別に…。
それよりさ、昨日客からおもしろい話を聞いたのよ!!
床上手は愛人にしたい女で、料理上手は嫁にしたい女なんだって。
なんか自宅で一生懸命料理を作ってから隆史くんの部屋に持っていく佳織
を想像しちゃった。
隆史くんの嫁になりたいの??」
おお!!
そうなのか?
料理上手は嫁にしたい女♪
がんばらなくちゃダメじゃん、私。
「まだすぐに結婚したいとかは思わないけど、いい女と思われたいもんね
!!
料理教室でも入ろうかな?和美も一緒にどう?」
「私はいい。一生結婚したいと思わないだろうし、嫁にしたいなんて男に
思われたくないもん」
………。
何か激しく屈折してる気がするのは私だけだろうか。
「前から思ってたけど、和美の彼氏って妻子持ちが多いのは、結婚したく
ないから?」
「そ!
後腐れないし、束縛もないでしょ?
そろそろ出るわね」
和美は大きくうなずいて、フロアへと向かった。
更衣室を出れば、そこは戦場だと黒服の服部さんが言ってた。
もちろん、すぐに客と寝る特攻部隊もいるし、言い得て妙な比喩だとは思
う。
そろそろ私も戦場に出るとするか!!
深呼吸をしてから、フロアに一歩踏み入れた。
疑似恋愛と、お世辞に愛想笑い、上っ面だけの仲間意識をフル活用しなが
ら、百戦錬磨なお客様との戦い。
さすがに老舗高級クラブなだけあって、客層はかなりランク上。
必要なのは、多大な知識と駆け引き。
「佳織ちゃん、久しぶりだね」
席に座ると、1年ブリに製薬会社のお偉いさんが来ていた。
「ホント久しぶりですね、山田さん。」
自分でも驚くよ、学生時代はクラスメイトの名前すら覚えてなかったのに、
1年も面識のない客の名前を覚えてるなんて。
でも、それが当たり前の世界なんだよね。
「ちょっと見ない間に綺麗になったよなぁ」
「そう言ってくれるのは山田さんだけだよ。
成長しないって言われてばかりだもん」
どうでもいいような会話。
水割りを作って、タバコに火をつける。
そして笑顔でお喋り。
なんてことはない、仕事。
毎日、毎日、繰り返される単調な仕事。
「オレさ、去年結婚したんだよ。だからあんまり店に顔出せなかったんだ。」
山田さんが結婚しようが、独身だろうが、はっきり言って興味がない!!
でも、その相手をするのもまたお仕事。
「だから少し体格が良くなったんですね。
新妻のご飯がおいしいんでしょ?」
「ああ、やっぱり太った?
不規則だった食生活が、嫁のおかげで改善されたのはいいけど、うますぎ
てついつい満腹になるまで食ってしまうんだよな」
なるほど。
和美がさっき言ってたのはこんな感じなのかな?
料理って、男にとってポイント高いんだ。
それなら、真剣に料理教室通いを考えてみる価値有りだね。
「いいですよね、お料理上手の奥様だなんて」
「ああ、毎日飯が食いたくて帰ってるようなモンだからね」
おいおいおおおおおいっ!
うれしそうにニヤけた顔で惚気てるんだろうけど、今すごく奥様に対して
失礼な発言したろ??
飯の為だけに帰って来られたら女も迷惑だっつうの!!
やっぱ、私に会いたいから帰るとか言われたいよ。
隆史だったらサラリと言ってくれそうだけどね。
ウフフ♪
そっか!
お料理上手になれば、隆史もアフター率が減るかもしれない!!
が、がんばるしかない。
女の見せ所ってヤツじゃん、早速明日申し込みに行くぞ!おうっ!
「で、マジで習うわけ?お料理」
仕事が終わってから、いつものようにお母さんの店でご飯を食べてからカ
ラオケボックス。
「だって、料理上手になれば私のポイント上がるじゃん♪」
「ポイントねぇ。そんなにまでして隆史くんに好かれたい?」
何を当たり前の質問をしてるんだろう。
「決まってるじゃん、日々好きって思って欲しいよ」
「……女として?それとも嫁候補として?」
「は?意味わかんない」
和美は何を言いたいのだろうか?
さっぱりわかんない。
「だから、料理上手は嫁にしたい女で、床上手は愛人にしたい女なんでし
ょ?
だったら、いつまでも女として求められる愛人の方がいいじゃん。
嫁になったら、そのうち馴れ合いの生活で家政婦みたいになっちゃうよ」
家政婦???
「なんでそうなるの?
嫁と家政婦なんて別じゃん、全然違うもん」
反論する私に、さらに和美はたたみかける。
「だけど、男なんてそんなモンだよ。
気がついたら他に女つくって、家で待ってる女はただの家政婦」
………確かにありがちなパターンかもしれない。
サスペンスや何かで見かけるシーンだ。
「家政婦は、さすがにヤだなぁ」
ずっと一緒にいられるのはいいけど、家事をするためだけにいるのは、
ちょっと苦しい。
「だ・か・ら!
結婚に夢なんか抱かないで、愛人街道まっしぐらに進もう」
いや、それもかなり屈折してる。
「和美って、現実的なのか、非現実的なのかわかんないよね。
なんでソコまで男に対して批判的なの?」
「別に批判してるつもりはないよ。思ってるまま言ってるだけ」
「でも大丈夫!、必殺技を考えた!!」
家政婦にならずにすむ方法、あったのよ。
うふふ♪
「必殺技?どんな?」
「料理上手が嫁で床上手が愛人ならさ、どっちも上手な女は?」
「………手放したくない女、になるのかな?」
ザッツライト!!!
その通りなのよっっ!
「だからどっちも上手な女になるんだ、私」
そうすれば、愛人でも家政婦でもない幸せな女になれるじゃん。
隆史が手放したくないって思うようなステキな女に。
「あのさぁ、すっごく興味あるんだけど料理は習えばいいわけだけど、床
上手って、どうやってなるの??」
え?
あれ?
「やっぱ、練習あるのみ!かな?」
「練習って、誰とするの?」
………。
いや、そんなに深く考えてませんでした。
はい、すみません。
「どうしよう〜〜〜〜、床上手になるにはどうすればいいの??」
「私に聞かないでよ、さっき佳織が言ったみたいに練習あるのみなんじゃ
ないの?」
シラ〜〜〜っと、クールな対応してくれる和美。
だけど、私はかなり真面目に困ってるのよ。
「隆史で練習なんて失礼よね??
でも、他の人と練習するのもどうかと思うし……」
「知らないわよ、そんなの。
でも、隆史くんで練習するしかないんじゃないの?」
ダメよ!!
「隆史を練習台だなんて、失礼すぎるもん」
「じゃあ、隆史くんに聞いてみれば?
どんなエッチが好きなのか」
「無理だよっ!!」
恥ずかしくてそんなの聞けない!!
うわぁ、ダメだ。
頬が熱くなってるよ………。
でも、そうだよね。
十人十色だろうし、隆史の好みって大切かもしれない。
「なんかおもしろそうだから今から聞いてみよう!!」
え?
和美は戸惑って照れてる私を横目に、サッサとカラオケの会計を済ませて
EDENへと足を進める。
「ちょっ、ちょっと待った!!
いきなりはダメだって!!
恥ずかしいし、なんて聞けばいいかわかんないもん」
「ブリッコはいいから、行く!」
さっさと私の手を引っ張りながら、とうとうEDENの入り口に到着。
「いっらしゃいませ」
にこやかなボーイに案内されながらテーブルに着く。
心臓はバクバクと休みなく動いている。
な、なんて聞けばいいんだろ?
「あれ?遅くなるって言ってなかった?」
挨拶もそこそこに、隆史はダークなスーツ姿で隣に座った。
フワリと香水とアルコールの匂いがする。
「うん、ちょっとだけ顔が見たくなっちゃった」
ダメだ。
隆史の顔を見たら、何も聞けない。
「へぇ、うれしいな。
オレはいつも佳織の顔見たいけど、佳織がそう思ってくれるなんてめずら
しいよな」
いや、それは違う!!
私だっていつも隆史の顔が見たいけど、そんな恥ずかしいセリフをポンポ
ン言えないだけなのよ。
「今日ね、お客さんと喋ってたんだけど、料理上手と床上手の話知ってる?」
和美はグラスに口をつけながら早速本題に入ろうとしている。
………直球だなぁ。
もっと、変化球で勝負してもらいたかったのに。
「で、和美ちゃんはどっちなの?」
剛史くんは和美の隣で空いたグラスに水割りを注いでいた。
「え?私はどっちも下手かな。って私に聞かないでよっ。
剛史くんや隆史くんはどうなの?」
「あはは、そっか。
オレはやっぱ料理上手がいいかな?
確かに床上手もいいけど、オレが教えたいとか思うしさ」
隆史はクスクスと形のいい唇を動かして笑いなら剛史くんの話を聞いてい
た。
「なんか調教って感じで、エロイよ、剛史」
調教っすか?
いやぁぁぁん。
隆史に調教されてみたい!!
「隆史くんはどうなのよ?」
和美に話をふられて、チラリと私に視線を送りながら隆史は意味深な笑い
を見せた。
「オレはどっちも満足してるから」
………………………。
撃沈。
鼓動は一瞬で止まってしまうかのような衝撃だった。
満足ですか?
私なんかで満足してくれるんですか??
つい有頂天になってしまった私は、ポロリと言わなくてもいい一言をも
らしてしまった。
「じゃあ、練習しなくてもいいんだ!
良かった。」
THE・後悔
言った言葉は一文字たりとも取り消せねぇ。
隆史は怪訝そうに眉根を寄せて目つきも鋭くさせている。
「練習って何?」
こ、怖いです。
元々鋭い三白眼が間近で鋭利に光ってるような気がするのは、勘違いじゃ
ないよね?
静かにキレてる。
「えっと、その…色々と?」
なぜか疑問系になってしまった。
しかも色々とって何をだよ?
自分でつっこみできるくらい、ボケた回答してるし。
「もしかして佳織ちゃん床上手になるために練習しようとか思ってたの?」
クソ剛史は、歯に衣を着せるって言葉を知らないのだろうか?
もっとオブラートに包んだ話方しないと、ホスト失格だいっ!!
「そうなの?」
隆史はさっきから怒った表情のまま、聞いてくる。
「いや、だってほら、より好きになってもらいたいし頑張ろうかなぁ。な
んて思ったりしたのよ」
「あははっ!!」
剛史くんは困ってる私と、怒ってる隆史の向かいで大声で笑い出した。
しかもお腹を抱えながら、ゲラゲラと。
「佳織ちゃん最高におもしろいよっ!!
練習って彼氏とするつもりだったの?それとも違う相手?」
笑いながら苦しそうに、剛史くんはさらに切り込んでくれた。
「もういいでしょ、この話題はおしまい!!」
そんなに笑わなくてもいいと思うし……。
「あら、ちゃんと言わなくちゃダメだよ、佳織。
練習相手に悩んでたって!」
剛史くんの隣で、和美まで笑いっている。
「………」
隆史は無言のまま、痛いほどのまっすぐさで視線だけを私に送ってくる。
「なんで笑うの?
真剣に考えてたんだから!!
で、隆史の意見を聞こうと思ってEDENまで来たんだよっ!!」
もう、逆切れだいっ!
ふんっ。
「なんで悩む必要があるんだよ?普通は彼氏と練習するだろ。
さっぱり佳織がわかんねぇよっ!」
やっと、喋ったかと思うと、隆史は水割りをいっきに飲み干して、ガチャ
リと力まかせにコースターの上にグラスを置いた。
だって………。
「ソレって浮気したいって意味にも聞こえるよなぁ。
いいなぁ、今度浮気がバレた時に使わせてもらうわ」
キれてる隆史とは反対に、まだ笑いが抜けていない剛史くんは和美と一緒
になって楽しそうにまだ喋っている。
「失礼じゃんか!!
大好きな彼氏を練習台にするなんて。
だから、どうしようかなって困ってたんだもん」
「はぁ………」
隆史は大きな溜息をつくと、そのまま冷たい視線で私を一瞥してからすぐ
に他のテーブルに行ってしまった。
「な、なんで怒ったままなの……」
どうしよう。
「隆史で練習したら?アイツ寝技上手そうじゃん」
剛史くんは私と隆史がつき合ってるのを知らない。
きっと、EDENの誰も知らないだろう。
二人で出かける時も、かなり遠出してるし、周りにバレないようにお互い
に注意をしてきた。
隆史は人気に影響するのをおそれて、私は「どうせ隆史の色恋営業相手」
だと思われるのを恐れて、ひた隠しにしている。
「あはは、寝技って…柔道じゃないんだからさ」
和美はサラリと剛史くんと会話をしているけど、私にしてみればかなりド
キドキ。
つき合ってるのがバレないように、会話をしなきゃいけないから。
「でも、佳織ちゃんの彼氏って大変だろうな」
な、なんでそうなるんだ?
「喧嘩を売ってるの、剛史くん?
すごい失礼なんですけど」
剛史くんはまた笑い出した。
コイツって、笑い上戸かよ??
「だってさ、彼氏に好かれる努力するのは凄いうれしいと思うけど、その
ために浮気されちゃ、男としてはかなりまいるよなぁ」
和美はちょっとだけ真剣な顔で、剛史くんの意見にうなずいた。
「そうよね。この子恋愛経験値が低いのよ。
本気でちゃんと向かい合ってつき合うってのが少なかったくせに、手軽な
恋愛は人並み以上に知ってるから、どこか屈折してるんだと思うけど。」
屈折って、ちょっとひどくないかい?
「和美にだけは言われたくない!!」
「はいはい、すみませんね」
全然悪びれた様子もなく、上っ面だけの謝罪で流されてしまった……。
その後も、剛史くんと和美は楽しそうにお喋りを続ける中隆史はテーブル
に戻って来ないまま、閉店合図のラスト曲ショパンの夜想曲変2長調が店
内にきれいなピアノメロディで流れ出した。
「チェックして」
隆史不在だったけど、ラストになっても粘る客ってかなり嫌われる。
うざいって感じ。
もう仕事終わりなんだから、さっさと帰れよって思っちゃうの。
会計を済ませて、ドアを開けるとエレベーター前には隆史とお客さんの姿
があった。
うわぁ、ブッキングしちゃった!!。
コラッ、剛史!!
こんな初歩的なミスするんじゃねぇよっっ!!
こんな場合は剛史くんが真っ先に気付いて、フォローすべきなのに、彼は
和美とまだ楽しそうにお喋りを続けている。
コイツ、本気で殴ってやりたい………。
なんで、隆史が接客してるシーンを見なきゃならないのよっ!
「隆史ぃ、大好きだよ。また明日も来るからね」
金髪に近い茶髪のショートカットで、かなり深く強調されたアイライン。
パンツが見えそうなくらい短いスカートからはスラリと細い足にブーツが
よく似合っている健康的な女の子が、隆史の首に自分の腕を回して、抱き
ついている。
「待ってるよ、明日も美緒ちゃんに会えるのを楽しみに」
そんな彼女に隆史はポンポンと優しく背中を叩きながら苦笑い。
だけど、私の目には苦笑いじゃなくて、テレた笑いにしか見えない!!
コレは仕事。
営業。
隆史はホスト。
私は隆史の彼女。
平気だ、平気。
全然気にならないっ!
これっぽちも気にならない。
うん!
やっとエレベーターも到着して、彼女たちを乗せてドアが閉まると、隆
史は少し困った顔で、私を振り返った。
いつもは何もしなくても色気すら感じる三白眼なのに、今の私にはエロオ
ヤジの目にしか見えないのはなぜ?
若い女の子に抱きつかれて、浮かれてるオヤジにしか見えないっ!!
「ゴメン、でも仕事だから」
私の隣まで来て、耳元近くで誰にも聞こえないような言い訳をされても、
困る。
「うん。わかってるよ」
なんて無理矢理作った笑顔で答えるしかできなくなってしまうじゃないっ!
わかってるよ、仕事だって。
わかってるけど、頭で納得しても感情が追いつかないのよっ。
「じゃあ、茶店で待っててくれる?」
………。
「ごめん、部屋に着替え取りに行きたいから、帰ってる」
だって、こんな状態で隆史と二人きりだなんて、何を話せばいいのかわか
んないよ。
さっきまでは、隆史が怒ってるのが怖かったけど、今度は私の嫉妬がバレ
るのが怖い。
「じゃあ、オレが佳織の部屋に行くよ」
そう言うと、隆史は私の返事も待たずに、そのまま耳に小さなキスをくれ
た。
キャッ。
恥ずかしい。
今、耳噛んだよ、隆史が。
にゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、腰砕けになりそう
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