マイ・フェア・ボーイ
マイ・フェア・ボーイ
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1プロローグ 2 遅いけど初恋なんだよ! 3 うれしはずかし初体験 4 どうしようか? 5 大変なんだよ?! 6 好きなんだそれだけ
7 やったね初指名 8 枕営業 9 悪魔がやって来た? 10 二人の行き違い 11 突然の別れ 12初恋は実らない 13エピローグ
●●●
2 遅いけど初恋なんだよ!

「なんで佳織はおミズしてるの?」
横で気だるそうに眠っている、女を見た。
「…え?別に、理由なんてないけど、しいて言えばお酒が好きだし、男
が好きだからなんじゃない?」
まるで、今日もいいお天気ね。とでも言うような感じで、彼女は眠そうな
顔で微笑んだ。
 うーん………。
お酒が好きってのは、わかる!
でも、男が好きって………、普通言うか?しかも、さっきまで抱かれてい
た男に、さっくりと言うか?
 彼女にとって、オレって一体何?
なんか、思い切り傷つくんですけどぉ。
気持ちよさそうに、オレの腕枕でもう寝息をたている佳織の顔にため息を
ついた。
 そもそもオレ達の出会いは、ナンパ。
フラフラ女を物色しながら歩いてるオレと、
出勤のために歩いていた彼女は何度か顔を合わすうちに、仲良くなってい
った。
もちろんオレにはたっぷりの下心もあったし、何度も挨拶程度の会話をす
るうちに、だんだんと、彼女に惹かれていた。
 本音を言うと、ケツの軽いすぐにやらせる女や、ミーハー女には飽き飽
きしていた所に彼女に出会ったんだ。



「おはよう、勇哉」
モロ遅刻で、4時間目から登校して来たオレに、嫌みな挨拶をくれた淳司
は、ニヤニヤと意味深な笑いを含んでいる。
「なんだよ?」
「3組の水野恵とヤッただろ?」
え?
3組の水野?
「誰それ?」
オレの反応に呆れながら、両手で胸元に山を描いて見せた。
うーん…?
ああ、そういえば制服からでも乳のでかさがわかりそうな女だ。
「でも、ヤッてないぜ?」
そりゃ誘われてたら食っちゃってたけど、誘われた記憶がない!
「でも、休み時間のたびにお前を呼びに来てたぜ。」
そこで一度言葉を止めて教室の入り口を指しながら続けた。
「ほら、噂をすれば。だろ?」
彼女は、キョロキョロと大きな目を動かして教室を見回しながら、オレを
見つけると、顔を輝かせた。
「行って来る」
面倒くさいなぁ、どうせこういう呼び出しって告白だろ?

水野恵は、オレをあまり人通りのない校舎裏まで誘い出してから、顔を赤
くしてうつむいた。
「あの…」
「………」
さっさとてくれよ、昨日あんまり寝て無くて、かなりイライラしていた。
元々、こういう事はあまり好きじゃなかい。
学校で呼び出して告白するような女って、結構お堅くて、つき合うのが疲
れるんだよ。
クラブとか、ナンパとかで知り合った女の方がノリもケツも軽く楽なんだ
よな。
すぐにやらしてくれるし。
「あのね……」
さっきから「あの」しか言ってないじゃん、この女。
ああ、ホントイライラする!
「悪いけど、オレの事が好きなわけ?」
待っていても、全然意味がなさそうなので、おれから切り出すことにした。
彼女は顔をさらに赤くして、うなずいた。
「悪いけど、オレ彼女いるんだ」
そうれだけ言って、オレは教室に戻った。
後ろで彼女のすすり泣く声が聞こえたけど、オレにはこれ以上どうする
事もできない。
好きでもないし、なぐさめてやりたいとも思わなかったんだから。
教室に戻ると、弘幸がオレを見つけるなり、淳司に駆け寄った。
「まじ?勇哉くんってば、最低ぇ」
わざとオレに聞こえるように、からかいながら笑っている。
「お前いつ彼女できたんだよ?」
なんで、さっきのセリフを知ってるんだよ?
「どっちが盗み聞きしてたんだ?」
二人とも、それぞれを同時に指した。
「「こいつが行こうってえ!」」
…………ようするに二人ともって事かよ?
「人の恋路を邪魔するヤツって馬に蹴られるらしいぜ」
「いつ、恋路を邪魔したんだよ?
彼女泣いてたぞ、かわいそうに」
どんな女にも優しく!をモットーにしている弘幸は、ホント感心するくら
いどんな女にも平等に優しくしていた。
もちろん、そのために特定の彼女もいないんだけど…。
「だって、オレ、マジに彼女できたんだもん」
二人とも、ただ断る口実だと思っていたのだろう、すごくびっくりした顔
をして、オレを見た。
「誰?」
「誰だと思う?」
へっへーんだ。
「咲子ちゃん?それとも美由紀ちゃん?」
ナンパ徘徊する時もクラブでもオレらは3人でつるんでいるから、たいて
いの交友関係は、お互いに知っていた。
でも、まさか佳織だとは思わないだろうな…。
「わかった!佳織ちゃんだろ?」
淳司は、いきなりビンゴ!!だった。
「なんで、わかるんだよ?」
つっまんねぇの!
「え?!マジで佳織ちゃん?」
冗談で言ってたのか、淳司はさらに驚いていた。
「勇哉が彼女を気に入ってたのは知ってたけど、まさか佳織ちゃんが勇哉
を好きだったなんて思わなかった!」
弘幸も、驚いてるようだ。
そうだろ、そうだろ!
「おれだって、OKの返事もらった時はビビッたもん」
得意げに言ったオレを、二人はジッと凝視した。
な、なんだよ?
「お前が告ったのか?」
「ああ。それがどうかしたのか?」
淳司は慌てて大きく首を左右に振りながら、オレの肩をポンポンと叩いた。
「いやぁ、ホントは心配してたんだよ。
勇哉は顔もいいし、ノリもいいからモテるだろ?それで女に不自由しない
から、自分から好きになるって事ができないんだと思っていたんだ。それ
が告白するくらい好きになれる女がいたことが意外だったけど、ホント
良かったよ。うん」
弘幸も隣でウンウンと同調しながらうなずいていた。


………。
………。
………。
それって、褒められているんだろうか?
それとも、けなされているんだろうか?
うーん、微妙だ。
でもまぁ、佳織とのことを喜んでくれてるみたいだから、よしとしよう!
そう思った矢先に、携帯から佳織専用の着メロが鳴った♪
「メールだ」
妙に、ウキウキした気分で、オレはメールを開いた。
『今日はごめんね(m_m)
なんか遅刻させちゃったよね?
もっと早く寝なきゃだった(^.^)』
か、かわいい!
さりげないメールで、別に次のデートの約束とか催促するわけじゃないし、
短い文章なのに、なんか愛を感じるよなぁ。
オレの事を思ってくれてるって伝わる!
 昨日、初めて佳織の素顔を見たんだけど、これが驚く程の童顔なんだ
よ!
今まで佳織の仕事が終わった後に二人で飲んだりとかはあったんだけど、
やっぱきちんと化粧されていたし、服装とかも職業柄ってか、大人って雰
囲気バリバリなんだけど、化粧であんなに化けるモノなのか?って驚いて
しまった。
21歳で、オレより4つ年上なんだけど、全然タメでも通りそうな位に、
かわいいって言葉が似合っていた。
「おいおい、弘幸。見てみろよ!
勇哉のにやけた顔!!」
「佳織ちゃんからのメールなんじゃないの?
しかも、着メロまで設定してるし!」
淳司も弘幸も、二人してオレをつついたりしながら、祝福してくれた。 

でも、佳織とつき合うって事が、
誰かを好きになるって事が、
そして初恋が実らないってジンクスがある事が、
オレにはまだ全然わかっていなか
った。
ただ佳織が好きで、彼女と一緒にいられればそれだけで良かったのだ。
そう、これが、オレの初恋だったから。




学校の帰りに、偶然に佳織を発見!
「あれ、佳織ちゃんじゃない?」
弘幸が、駅近くのオープンカフェにいた、佳織を見つけた。
 白いのワンピースにピンクのカーディガンを羽織って、いつもは巻き髪に
しているロングヘアを一つにまとめていた。
化粧も、仕事メイクじゃなく、薄目にしていた。
「もしかして、お前に会いに?」
淳司はオレをつっつきながら、ニッコリ微笑んだ。
 でもそんな約束してないし、メールにもそんな事は入って無かった。
だけど偶然にしろ、佳織に会えたんなら、それはそれで楽しいから、そのま
まカフェに入ろうとしたオレを、弘幸の腕が止めた。
「待て、誰か来たぞ」
弘幸の視線の先で、爽やかな顔立ちなのに、妙にフェロモンを放出させてい
るアンバランスな男がトレイにアイスコーヒーとジュースを乗せて、佳
織のテーブルに座った。
佳織は、その男からジュースを受け取りながら、ふんわりと目を細めて笑
顔を作った。
まるでドラマとかで、デートシーンを見ているように、その仕草は自然
で、二人が相当仲良しだということが伺えた。
 一体誰何だろう?
あんなに楽しそうな、優しい笑顔をしていた佳織。
オレは、まだ一度も見たことのない顔だった。
例えあの男が客であったとしても、なんとなくイヤな気持ちだ。
 爽やかな男の顔が、たまらなくむかつきを感じてしまう。
なんで今、佳織が微笑んでる相手がオレじゃなくてお前なんだ?
 オレの腕を掴んでいた弘幸が、慰めるようにオレを見た。
「多分、店の客だろ?
ほら、同伴出勤とか色々あるらしいじゃん」
そんな弘幸の優しい言葉を淳司はすぐい覆した。
「あんな男前が客かなぁ?
それに佳織ちゃんの働いてる店ってキャバじゃくて会員制クラブだろ?
もっと金持ってそうなオヤジばっかりと思うけどなぁ」
…………。
そうだよな。
どうも、客とホステスって関係じゃなさそうな雰囲気を醸し出してるよな。
あの男がもっと不細工で、オヤジだったら、オレだってこんな嫉妬してない
だろうし…。
「あいつオヤジじゃないけど、金は持ってるぜ。来てるセーターってアル
マーニの新作だもん」
さすがオシャレにうるさい弘幸は、彼の靴や持ち物をいちいちチェック
をして、オレを納得させくれようとしているのが、わかった。
でも、佳織のあの顔を見れば、客じゃないことが絶対的だった。
「そんなに気になるなら、聞けばいいじゃん」
いくら理屈を並べても、納得できないオレにイライラしたのか、弘幸はオ
レの腕をやっと放した。

そうだよな。
ここでウダウダ悩んでみても、仕方ないよな。
うん!
オレはそのまま躊躇することなく、佳織の座ってるテーブルを目指した。

「あら、勇哉くん!
そっか、学校ってこの近くなんだ。制服姿初めてだね」
テーブルの近くで、佳織がオレに気づくとホントに驚いたような顔で、オレ
を手招きした。
「彼、勇哉くん。すっごく私の好みな顔してるでしょ?」
オレを同席してる男に紹介しながら、彼女はメニューを渡してくれた。
オレにもここでお茶をしろって事かよ?
「おいおい、高校生だろ?
お前が年下好きなのは知ってるけど、やばくないか?
まぁ、彼がいいんなら、問題はないんだろうけど」
チラリとオレを見ながら、その視線にはっきりと威嚇を感じてしまっ
た。
あんまり彼女に関わるなよ!とでも言いたいように、オレを牽制してるの
が感じ取れる。
「さあ、どうなんだろ?」
佳織は、悪意のある男の言葉を素直にそのままの意味に思ったのか、オレを
上目遣いに覗き込んだ。
「問題ないよ。
で、彼は?」
「ああ、直樹。仕事仲間って所かな?」
佳織は、オレの事は勇哉くんで、彼の事は直樹と呼び捨てにしていた。
なんか、感じ悪いよ。
彼女の紹介に不満があったのか、直樹はクスリと笑った。
「それだけかよ?
一応元彼なんだけど、佳織にはそうじゃなかったんだ…。オレ、悲しい」
冗談交じりに泣き真似をしながら、直樹は佳織に微笑んだ。

 元彼?
それって、なんで仕事仲間になるんだよ?
どう考えたら仕事仲間なんだ??
「あら、すっごい昔の話を持ち出すのね。
つき合ってたかどうかも、わからないような関係じゃない。どうせならヤリ
友だったとかの方が適切だと思うけど」
おいおいおいおいおいっっ!
佳織ちゃぁん、ヤリ友って、ヤリ友って何?
「佳織!男ってのはデリケートなんだぞ!
そんな言葉を使うんじゃない!
それに、オレは佳織をヤリ友だなんて思った事はないぞ!じゃなきゃ同棲な
んてしないだろ?」
………同棲?
そりゃ、オレだって佳織がオレしか知らないわけじゃないってわかってた
よ。
でも、なんかこんなすぐに元彼とか、登場されるとかなりまいる。
「まぁ、だいぶ前の話で、今はホントに同じおミズ仲間なのよ。
彼はルージュって店のホストなの」
ホスト?!
「そう、で、今日は彼女にホストとして相談に乗ってもらってただけだ
よ」
ホストが元彼?いや、元ヤリ友か?
で、同棲までしてた関係。
同棲するって事はやっぱり直樹の言うとおり、ヤリ友なんかじゃなくて、彼
氏彼女、恋人関係だよな?
で、今はホストとホステスって関係?
ああ、訳わかんねぇ。
テンパってきた。
ホストとホステスの関係って、一体どんな関係だよ?
全然理解不能じゃん、ソレって。
説明になってないって!
「なんか彼困ってるぞ!
ちゃんとフォローしろよ、佳織。
オレ、もう帰るから」
佳織の肩をポンと叩きながら、直樹は席を立った。
そして姿が見えなくなるの確認してから、オレは佳織を見た。
「何が聞きたいの?何でも答えるよ」
佳織は全然悪びれた様子もなく、まるで数学の質問でも待ってるかのよう
に、平然としていた。
「今は、どんな関係なんだよ?」
自分でも驚く程、低い声になっていた。
佳織は小さく笑った。
「もしかして、妬いてる?」
なんかその余裕な態度が、よけいにオレをむかつかせた。
「そうだよ!妬いてるよ!悪いかよ?!
どうせ、オレはガキですぐに妬いてしまうんだ!」
佳織はうれしそうに、オレにゆっくりとさっき直樹に向けていた優しい笑顔
を向けた。
「妬かれるような事は、何もないよ。
今日だって、ただお話してただけだし。
それに、一緒に暮らしてたのも2年くらい前の話で、お互いにその後、何人
も恋人いたし、もちろん抱いた抱かれたって事もないよ。
 でも、うれしい。
勇哉くんが嫉妬するなんて」
2年も前の話?
そっか………。
そうなんだ。
でも、2年前の佳織ってすごいかわいかったんだろうな………。
出会っていなかったとしても、過去の佳織であったとしても、なんとなくオ
レの知らない佳織を知っている男が身近にいるってのは、やっぱり少し
きつい。
でも、2度と会うなとは言えない……。
オレだって、もしかした今まで簡単につき合って来た相手と偶然再会するこ
ともあるだろうし、そんな時に佳織が見かけないとも限らないわけだ
し…。
それに、今まではオレが束縛されるのを疎ましがっていたんだ。
どんな女とつき合っても、束縛されるのがうざくて別れることになったくら
いに………。
「まだ怒ってる?」
心配そうな、不安そうな声が耳をくすぐるように届いた。
佳織のこういう所が、ツボなんだよ。
全然男関係激しそうなのに、実際そうだったんだろうけど、そのくせして、
オレの言葉とかにいちいち反応して一喜一憂してくれる姿が、どうにも健気
でかわいいと、愛おしくなってしまう。
「怒ってないよ。オレも怒鳴ったりしてごめん。
佳織が楽しそうに喋ってたから、つい妬いちゃった。
直樹さんにも謝っておいてよ」
佳織は大きくうなずいた。
「良かった!
もう、フラれちゃうのかと心配しちゃった」
エヘヘと小さな舌を覗かせながら、無邪気に微笑んだ。
その言葉に、オレの方がドキリとしてしまった。
ちょっと感情的になっただけなのに、彼女には別れる別れない程の事だった
のか?
たった些細な喧嘩もできないって事かよ?






2004-2005©白雪姫-hime-