マイ・フェア・ボーイ
マイ・フェア・ボーイ

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1プロローグ 2 遅いけど初恋なんだよ! 3 うれしはずかし初体験 4 どうしようか? 5 大変なんだよ?! 6 好きなんだそれだけ
7 やったね初指名 8 枕営業 9 悪魔がやって来た? 10 二人の行き違い 11 突然の別れ 12初恋は実らない 13 エピローグ
●●●
3 うれしはずかし初体験

「ホストォ?」
オレを心配しながら駅で待っていてくれた淳司と弘幸に、説明をしたら、
淳司はめずらしく驚いて超声を裏返していた。
「ああ、しかも元彼だってさ」
弘幸は、別の意味で感心を持っていたみたいだ。
「だから、アルマーニの新作を着てても、似合っていたんだ。
それに、あの一見好青年なルックスから、想像もできないようなフェロモ
ンは、ホストだったからなんだ…。
そっか…。」
いや、違うだろ?
今、そこに感心してる場合じゃないんだってば!
「で、佳織ちゃんの言う、ホストとホステスの関係って、どんな関係なん
だ?」
淳司は感心しまくってる弘幸を横目に、ちゃんとオレを心配してくれてい
た。
「いや、オレにもわかんない。ホストとその客って感じでもないし…。
なんだろ?」
やっと、その言葉に弘幸が反応を示した。
「そんなのその世界にいなきゃわかんねぇじゃないの?
いっその事お前もホストしてみれば?
どうせ、もうすぐ夏休みだし。」
オレがホスト?
ってか、そりゃ、弘幸が言ってる事はわかる。
確かに夜の世界に入ったら、佳織の行動とかだって理解できるだろうし、
直樹とやらの関係だって納得できるかもしれない………けど。
「お前自分がしたいだけだろ?
なんで、たかが女のタメにバイトしなきゃならないんだよ」
淳司は、呆れたように弘幸を睨んだ。
「いや、もちろんオレがしたいのはそうなんだけど、きっといい経験にな
ると思うんだ。
佳織ちゃんがどうとかじゃなくて、色々な女の事がわかりそうじゃん」

 結局弘幸のオシに負けて、オレは夏休みにバイトとしてホストしてみる
ことにした。
その為に佳織に連絡した。
「次の日曜に話そうだってさ」
電話を切って弘幸に伝えると、弘幸は満足そうにうなずいた。
こいつって、ホント女の事しか頭にないのだろうか?
って、疑問を抱きながらも、オレはとりあえず、理由はどうあれ、今度の
日曜に佳織と会える事がうれしかったけど。


 「弘幸くんが、ホストしたいの?」
「うん、でもどうせならオレもしようかな?って思ってるんだけど…佳
織はどう思う」
日曜の昼下がり、ファミレスでオレら3人はお茶してた。
佳織はピンクのセーターに白いフレアミニで、髪型は後ろに一つに束ねて
いた。
前も思ったけど、仕事じゃない時の服装ってかなりコンサバな感じで、と
ても夜ホステスをしてるようには見えなかった。
ただし弘幸から言わせると、直樹と同じようにフェロモンを全開だそう
なんだけど。
「別に、勇哉くんがしたいんなら反対はしないけど。でも、すごくしんど
いよ?」
いつになく真剣で、だけど感情を読みとれない佳織の表情からは、反対し
てるのか、賛成してるのか、わからなかった。。。
 ただ、高校生ってのは表向き内緒にしておくように言うと、オレらを表
通りに面したビルの4F に連れて行ってくれた。
ドアには、「ルージュ」と書かれている。
あれ?ココってそう言えば、直樹とかいう男が働いてる店じゃ……。
とりあえず、佳織の後について中に入った。
いくつかのテーブルがあって、ソレを囲むようにソファが並んであった。
それぞれのテーブルからはなるべく隣が見えないように、大きな花かごや、
ガラス細工の置物なんかが置かれている。
照明はカラオケボックスなんかとあまり変わらない程度の暗さだった。
入り口の真ん前は、バーカウンターになっているのだろうか?
バーの向こうには、たくさんの色鮮やかなボトルが並んでいる。
「川上いる?」
バーにいた男を呼び止めて、佳織が話しかけた。
「ちょっと待って下さいね」
そう言うと男は、店の中程まで行った。
「マスター、佳織ちゃんがお見えです」
マスターと呼ばれた男はチラリとこっちを見た。
「ああ、昨日言ってた件?」
佳織がソレにうなずくと、マスターはオレら二人を呼んだ。
ホントに簡単な面接を終わると、とりあえず一日体験をしてから、考えて
くれと言われた。
普通の面接だと、会社側が採用か不採用かを決めるのに対して、逆な雰囲
気がなんとなく、おもしろかった。
「直樹は今日同伴だったっけ?」
マスターは携帯を見ながら、うなずいた。
「今日は普通出勤らしいから、直樹を二人の教育係にする。それまでは、
ほかの奴らと一緒に店の掃除していてくれる?
ホストはホステスと違って、黒服がいないから掃除とかも全部自分たちで
するんだ」

さっきマスターを呼んでくれた男がぞうきんとバケツをくれた。
「オレは入って3日目なんだ。
同じ新人同士よろしく!武志です。」
浅黒い肌から、真っ白な歯がにっこりと微笑んだ。
テーブルをふいたり、ミネラルウォーターを水差しに入れたり、灰皿をテ
ーブルに置いたりと、とにかくたくさん仕事があった。
これだけでも、バイトになりそう。
とりあえず、掃除とテーブルセットを終えた頃に、直樹が出勤してきた。
「おはよう」
「おはようございます!」
「おはようっす」
夜の八時におはようって挨拶するなんて、まるで芸能界みたい!
「ああ、今日からだよな?
勇哉くんと、もう一人は?
源氏名を使うなら、それを教えて。」
源氏名、面接の時にも聞かれたけど、オレも弘幸も、別にそのままでいい
って事にした。
佳織曰く、本名でおミズに入ると、抜けられないってジンクスがあるらし
い。
でも佳織も、本名で入ってると言っていた。
まったく、あがる気がないらしい。
佳織らしいと言えばそうなんだけど、彼氏としては一抹の不安を感じてし
まうような気もする………。
「一応スーツを持って来たんだけど、勇哉くんはこっちのグッチで、弘幸
くんはベルサーチを着てくれる?」
渡されたスーツに袖を通すと、フワリと香水の香りがした。
「おいおい、何の香水かわかるか?」
「エンビィだと思うけど、コレって直樹さんの私物じゃないのか?」
うん、そうだよな。
香水の臭いが残ってるし…。
一体いくつスーツを持ってるんだろう?
「良かった、二人とも似合ってるよ。
佳織から電話もらって、二人に似合いそうなスーツを持って来たんだ」
更衣を終えた俺たちは、少し恥ずかしい気分だった。
いや、多分オレだけだな。
弘幸は、全然恥ずかしくなさそうだ。
「佳織ちゃんが、見立てたんですか?」
弘幸は、不思議そうな顔をしていた。
「ああ、勇哉くんとは面識あっても弘幸くんとは無かっただろ?だから佳
織に頼んだんだ。
それから、以降は君たちの事を呼び捨てにするからね。ほかの後輩もそう
してるし、イヤかもしれないけど、我慢してもらいたい」
まぁ、それが上下関係なんだろうから別にいいけど、それならやっぱり源
氏名とやらを付けておけばよかった…。

「実際に接客しながら覚えるのが一番なんだけど、最初に一通り、教えて
おくから席に座ってくれる?」
うながされるままにテーブルに座ると、直樹さんは黒いボトルを持って来
た。
「これはハウスボトルで、新規のお客様へのサービス!このボトルを飲ん
でもらうんだ。
だから、そんなに高いボトルじゃないんだけどね」
グラスに氷を入れてから、VSOPと書かれてある、そのボトルを開けた。
「だいたい指2本分くらいブランデーを入れるんだ。いわゆるツーフィン
ガーってやつね」
琥珀色した液体が、グラスの氷を伝わりながら、落ちていく。
「後はミネを入れて混ぜるだけなんだけど、ミネを注ぐ時、タマに氷に跳
ねる事があるから、そんなに慌てて注がなくてもいいから。
マドラーは、あんまり派手にカラカラ回さなくて適度で」
説明しながら、長い指を起用に動かして、水割りが仕上がった。
「やってみて。」
氷をグラスに入れて、いざボトルを掴んだ時に、ストップがかかった!
「待って、一升瓶じゃないんだから掴まないで、両手で注いで。それで、
ラベルがお客様の方を向かせてれば最高!」
なるほど、両手で注ぐんだな。

確かに、ボトルの先端を掴んで入れたんじゃ、居酒屋のオヤジだよ
な………、反省。
そして両手でボトルを持つと、不思議と力の入りが優しくなって、ポタポ
タと中のブランデーがグラスに入った。
おお、こうすれば入れすぎることはなさそうだ!
「OK! とりあえず水割りさえ作れれば後は、適当でいいんだ。
お客様がタバコを吸おうとしたら、ライターで火をつけてあげて、グラス
の中身が3分の1程度になったら新しく作り足す。の繰り返し。トーク
は……」
直樹は、優しい目を寄せて考えていた。
「タブーなのは年齢と職業かな。後は人間としての良識と常識で判断して
欲しい」
年齢と職業がタブー?
なんでだろう?
オレの疑問に、さすがフェミニストの弘幸が教えてくれた。
「だって女の子って、すごく年齢気にしてるじゃん。それに、職業って
色々あるだろ?
夜遅くにホストに飲みに来るんだから、それなりに収入がなきゃだめだ
ろ?」
収入がいいって事は…?
ああ、風俗とかおミズとか、あるいはエンコーとかって事か。
そりゃ、あまり触れられたくないよな、うん。
でも今更ながらに弘幸の事を尊敬してしまった。
さすが、女の子大好きと公言してるだけはある!
いつもこんな事に気を遣いながら、口説いてるんだ!!
それって、ある意味才能かも?!
「うん。そうなんだ。
気にしてない女の子もいるから、その辺は臨機応変によろしく」
直樹さんも少し感心したように、弘幸にうなずいた。
それから付け加えるように、軽く咳払いをして
「まぁ、今日はつぶされる覚悟さえしてれば、大丈夫だと思うよ」
ニッコリと微笑んだその目は笑ってなくて、そのアンバランスさに男のオ
レでもどきまぎしそうなくらい、綺麗なほほえみだった。
ああ、これがフェロモンと共通する部分なのか?
 っていうか、つぶされるって、何?
なぜに、つぶされるのだ?!
だって、お酒飲みに来るのが目的だろ?
飲ませるのが目的なのか?
どうして、つぶされるんだぁ???
わからねぇ!!!

そうこうする間に、一番最初のお客様が来店した。
途端に、全員揃って
「いらっしゃいませ!」
ファーストフード顔負けの元気よさで、みんなが来店を受け入れる。
なんか、思い描いていたホスト像と、違うような…。
もっとこう、「ああ、来たの?」みたいにクールな感じで、もちろん掃除
とかしてるのも意外だったけど。

 うわぁ、なんかドキドキしてきた。
そんなオレの緊張を見抜いたのか、マスターが耳元で一言
「最初は、そこからテーブルの様子を見ていればいいよ。どんなタイミン
グで水割りを作ってるかとか、会話のテンポとか…」
そう言われても、どうやって分かれ、と?
遠くから見てても、会話の内容がわかるわけでもないし、グラスの残量が
見えるかと言えば、薄暗い照明じゃほとんど見えない…。
「なんかさ、ワクワクするよな!
習うより慣れろって言うし、早く接客してみたくね?」
大きな目をクルクルと輝かせながら、弘幸はジャニーズばりのその顔を、
好奇心で満たしていた。
おれは、こいつのこの向こう見ずと言うか、女の事となるとすごい探求心
のある、と言えばいいのだろうけど、どうも女に執着しているような気
さえする、どうしようもない所がとても好きだった。
男同士でも、ちょっと女にモテるとひがまれたりするんだけど、弘幸はそ
れだけの努力をしているし、もちろん学校ではずば抜けたかわいい顔を
してるので、誰も太刀打ちできないからせめておこぼれを!と邪な気
持ちで、近づくヤツも多いみたいだ。
オレや淳司は、別にそこまで女に飢えてるわけでもなかったし、どちらかと
いうとモテる方だったから、意外と、3人のウマがあっていた。
が、しかーし!!
ホストって、そんなモテルとかモテないとかの甘いモンじゃなかった!
すっげぇ顔の悪い人でも人気があったり、男前なのに人気があまり無か
ったりと、点でバラバラ。
直樹さんは、顔も甘い爽やかな男前で、しゃべりの方も受けがいいのだろ
う、この店のNO1だと聞いた。良くテレビなんかで、NO1の写真を
パネルにして廊下や入り口に飾ってあるのを見るけど、この店はそんな
事をしていなかった。


 「じゃあ、そろそろついてみる?
最初の客は直樹の客だし、常連だからしゃべりやすいと思うよ」
マスターはアドヴァイスをくれながら、オレをテーブルに案内した。
「梓ちゃん、いらっしゃい!
今日からの新人ホヤホヤな勇哉くんです。
あんまりいじめないであげてね」
「初めまして、勇哉です。ご一緒させてもらいます」
梓ちゃんはうなずくと、グラスに氷を入れて、並々とブランデーを注い
だ。
「これを一気したら、それ以上はいじめないは」
え?
だって、それって全然水入ってないじゃん………。
ビールや焼酎とかだと飲めるけど、ブランデーってあまり飲んだ事がな
いんだよな………。
「困った顔してる。
仕方ないなぁ。ハーフにしてあげるよ。」
もう一つ開いたグラスに半分だけブランデーを入れると、半分水を足して
くれた。
おいおいおいおいおいおいおい!
それでも、研修で作った水割の何倍も濃いぞ!
でも、ここで飲まなきゃいけないんだよな…。
「じゃあ、いただきます!」
仕方なしに、だけど元気よく挨拶をしてから、一気に飲み干した。
ぐっわぁぁぁぁ。
喉が焼ける!
なんか食道に入っていくのが、わかるくらい熱い。
「はい、ご苦労様。
これ以上は飲まなくてもいいし、飲んでもいいし、好きにしてくれればい
いよ」
満足したのか、梓ちゃんはニッコリと微笑みながら、お水を入れてくれた。
なんだか、さっきので緊張が解けた。
そりゃ、緊張よりもあの喉を通る感覚の方が強烈だもんな。
酒の力ってすげぇぞ。
「直樹さんも、最初は飲んだんですか?」
オレの質問に直樹さん本人じゃなく、梓ちゃんが得意げに答えた。
「直樹は、ストレートで2杯も飲んだのよ!」
それに謙遜するように、直樹さんは言葉を続けた。
「オレなんか、まだ全然ダメだよ。
マスターの全盛期なんてアイスペールに並々と一気だったらしいから」
アイスペール?
オレは氷がたくさん入っているその器を見た。
ボトル2本は入りそうな大きさ…。
えぐい!
「あはは、マスターは酒豪だもんね。」
楽しそうに他のテーブルで接客しているマスターを、視線で捜しあてなが
ら、驚いてしまった。
なんか、そんなお酒に強そうに見えないのに、やるじゃん、マスター。
そんなこんなで、やっとまともに会話ができるようになった頃に、ボーイに
呼ばれてしまった。
「次は、15番テーブルに行ってもらえますか?」

15番テーブルには、3人で来店している女の人たちだった。
年齢は27.8位だろうか?
落ち着いた感じで、飲んでいる。
「初めまして、勇哉です」
「あら、かわいい子ね」
そこに座っていたのは、武志だった。
「彼、今日からなんですよ。」
「へえ、それじゃあ、武志も先輩になったって事ね」
確か、武志さんって3日前に入ったって言ってたから、この人たちは三日
以内に、来店してるんだよな?
「そうなんですよ!」
「じゃあ、後輩に水割りを作ってあげてよ。
武志好みでね」
………いやぁな予感。
だって、武志さんが薄い水割りを作りたかったとしても、お客様が望んで
るのは、きっとさっきの梓ちゃんと同じように濃いのじゃないんだろう
か?
人の不安をよそに、武志さんはグラスに普通の3倍ほどの濃さで作ってく
れた。
………あああああああああ。
やっぱり、そう来るのかよ?
「あはは、別に無理して飲まなくてもいいからね」
3人のうちの一人が、優しい言葉とは裏腹に飲めよな!と目で威嚇しなが
ら、オレをジッと見ている。
おいっっ!
言葉と態度が裏腹なんじゃないでしょうか?
はぁぁぁぁぁぁ。
最初に直樹さんが言っていた、つぶされる覚悟ってマジだったんだ。
「いっただきます!」
ホントはすげぇイヤなのに、ニコリとしながら、グラスを飲み干した。

いたる席で挨拶と称した、いじめにも似た一気をさせられて、佳織が来店
した頃には、おれはヘベレケ状態だった。

「勇哉さん、お願いします」
ボーイが、テーブルに着いてるオレを呼んだ。
「ご指名が入りました。7番テーブルです」
7番テーブルには、佳織とその友達の和美ちゃんが座っていた。
「いらっしゃいませ」
佳織はオレを見るなり、ボーイを呼んだ。
「冷たいおしぼりと、割ウーロンお願いしてもいいかしら?」
ボーイはうなずきながら、オレをチラリと見た。
「速攻、できあがりだねぇ」
和美ちゃんは、佳織とは昔からの友達らしく、同じお店で働いていて、仕
事が終わると、よく二人で飲みに行ったり、食べに行ったりしてる所を、
オレは何度も声をかけていた。
「勇哉くん大丈夫?
かなり飲まされたんでしょ?」
佳織のオレを気遣う優しい視線が、今のオレにはとてもありがたかった。
この席では、とりあえずあまり飲まなくてもいいだろう………。
「佳織から聞いてたけど、ホントにホストしてるとわね!
なんか、意外と似合ってるじゃない、スーツも」
「そうかな?」
いやぁ、和美ちゃんに褒めてもらえると、うれしいな♪
すっげえ美人で、ちょっと見、近寄りがたい雰囲気なんだよな。
ほんわかしてる佳織と、お友達だってのが不思議なくらい、クールだし。
褒められて機嫌よくしてる所に、弘幸がやってきた。
「いらっしゃいませ!
指名してくれたんだ?ありがとう!!」
「あら、こっちは全然酔ってなさそうね。
お酒強いの?」
佳織はおもむろに、弘幸に水割りを作り出した。
「いや、オレすっごい弱いんです!
だから薄目でお願いします………」
そう言えば、なんでこいつは酔ってないんだろうか?
「だって、勇哉くんがこんなに酔ってるのに、あなただけ酔ってないって、
釣り合い悪いじゃん、ねぇ」
佳織は、和美ちゃんに同意を求めながら、ニッコリと不敵な笑顔を作り、
弘幸にできたての濃い水割りを出した。
「いや、だってオレ酒の味わからないのに、せっかくのいいお酒がもった
いないでしょ?
どうせなら、おいしく頂いてもらった方がお酒も喜ぶと思うんですけど?」
なるほど!
こんな手で、こいつは一気を避けて来たんだな?
くっそ!
オレだって、そうしてれば良かった…。
「へぇ、私のお酒は飲めないんだ?」
それでも懲りずに、今度は和美ちゃんが弘幸に勧める。
 次に弘幸はどうやって断るんだろうか?
ちょっと、おもしろいかも?!
次の反論を楽しみにしていたオレの期待を裏切り、弘幸はペコリと両
手をテーブルについた。
「参りました!頂きます!」
ゴクリゴクリと喉をならしながら、その液体は弘幸の体内へと消えて行
った。
「うーん、酔ったら、介抱してくれる?」
「たった1杯で酔うかよ!!
しかも、お前まだこんなの薄い方だぞ!
他の席なんて、ほとんどストレートだったんだから」
「大丈夫だよ!ほら」
佳織は、ボーイがトレイを運ぶのを指した。
ボーイは、水差しと、おしぼりを2つ持って来た。
「おしぼりを首の後ろに当てると気持ちいいよ」
水差しに入っていたのはウーロン茶で、佳織はそのウーロンをグラスに半
分注ぎ、後は水を足した。
「それだけ胃を酷使した状態だったらウーロン茶もかなり刺激的なのよ。
だから、水で薄めて飲んだ方がいいの」
和美ちゃんが、ハテナ顔のオレと弘幸を見て、説明してくれた。


 へぇ、そうなんだ。
ウーロン茶って、刺激があるんだ!!
それに首に当ててる冷たいおしぼりも気持ちいい!!
なんか、じんわりと酔いが冷めそうな気がする。
うーん、酔った時の対処法も色々あるんだな。
そうして、このテーブルでは最初に弘幸が飲んだ水割り以外は、アルコー
ルを飲む事もなく、楽しく過ごしていた。
が!!!!!!!!!
「こんばんは!」
直樹さんがテーブルに登場すると、オレはボーイに呼ばれてしまった…。
「なんで?」
「佳織ちゃんは直樹さんと勇哉さんの二人指名なんです。で、今人数が足
りてないから、直樹さんがついてる間は、他のヘルプについてもらう事に
なるんです」
無表情のまま、ボーイは答えた。
あまりわけもわからないまま、オレは他のテーブルについた。
そこでまたたくさん飲まされて、せっかく醒めかけた酔いも復活してしま
った!
いや、復活どころかさらにパワーアップ!




2004-2005©白雪姫-hime-