いきなり始まったバトルロワイヤル?!
バイトする事を決めたオレは、弘幸と二人そろって出勤すると、そこに待っ
ていたのは修羅場だった。
「お前、オレの客取ったろ!!」
オレらの直の先輩に当たる武志さんが顔を見るなり、弘幸に口調も荒く言い
出した。
「はぁ?」
弘幸も訳がわからないとでも言いたげな感じで、一気に辺りの雰囲気が
悪くなった。
「とぼけんじゃねぇよ!」
弘幸の態度が気に入らないのか、武志さんは弘幸の襟首を掴み上げ、今
にも殴りかかりそうな勢いで拳を上げた。
「わっけわかんねぇ事言ってんじゃねぇよ!
だいたい、テメェの客なんていたのかよ?知らなかったぜ!」
弘幸は、振り上げられた拳の手首をがっちりと押さえながら、声色を下げ
て、怒鳴った。
「ちえりちゃんだよ!」
パンチを止められたまま、武志さんはまだその勢いを止める事なく、高圧的
な態度で弘幸を見上げている。
ちえりちゃんって、確か弘幸がアフターした女の名前じゃなかったっけ?
「ああ、誘われたから遊びに行ったけど、別にヤッてないぜ?」
弘幸も思い当たったらしく、熱くなっていた気持ちを落ち着けながら、
相手の手首を放した。
その途端、さらに腕を振り上げて、武志さんのパンチが弘幸の右頬にはまっ
てしまった。
あっちゃあ…、弘幸って切れると止まらないんだよな。
こいつって女の子には呆れるくらい優しいけど、男には容赦ないんだよ。
オレの心配をよそに、例にもれず弘幸は見る見る間に、顔色を変えなが
ら腰を落として、すかさずお礼の一発を武志さんの腹にぶち込んだ。
「ヤッてないって、言ってるだろ?
お前と違って女に不自由してないんだよ!!
いちいち遊びに行っただけで、言いがかりつけられちゃ、たまんねぇよ!
てめぇの女ならしっかり教育しとけよ!
向こうから誘って来たんだぜ!!!」
腹にくらった一発で少し前屈みになりながら、武志は顔を苦痛に歪めている。
だって弘幸って、中学の頃ボクシングジムに通ってたんだぜ……。
しかもクビになった理由がまた、ケンカで拳を使ったって事だったくら
い、ケンカっぱやいし。
ああ、ホント痛いだろうな…。
さらに弘幸は反撃して来ない武志に、もう一発お見舞いしてやろうと、拳
を握りしめた。
「そこまでにしとけよ。
せっかく掃除したのに、またグチャグチャにしやがって」
ため息混じりに、マスターの落ち着いた声が、弘幸の行動を止めた。
辺りを見回すと掃除をしていた他のホストたちも、遠巻きに、オレらの事
を見ていた。
うっっわお!
視聴率100%って感じ?
乱れたテーブルやいすをセッティングしながら、マスターは弘幸をたしな
めるように、言葉を続けた。
「説明しなかったオレらが悪いんだけど、他のホストの客と遊ぶ事も、電話
番号やメアドの交換も禁止されてるんだ。
アフターや同伴すると、指名変えにつながるだろ?あんまりルールがなさそ
うな仕事なんだけど、それなりには、やっぱり規則みたいなものはある
んだ」
なんじゃそりゃ?
メアドとか客の方から聞いてきたら、教えるモノじゃないのか?
携番はイヤだけど、メアドくらいなら別にいいと思ってたし、弘幸の言う
とおり、遊びに行くくらいは平気だと思ってた。
じゃあ一度指名されると、その客が心代わりをしないように、みんなで暗
黙のルールを作ってるって事になるんじゃ?
ソレって、なんか卑怯な気がする。
ホストが手抜きしてるって言うか、少しでも自分から離れる可能性を遠ざけ
てるって感じだよな。
「じゃあ、オレが悪かったんだよな?
すみませんでした」
なんとなく理不尽さを感じているオレの横で、弘幸は妙に?潔く、武志さ
んに謝った。
「………」
武志さんは無言で腹をおさえながら、チラリと弘幸を睨んでから、マスタ
ーと一緒になって、セッティングをし出した。
うーん、もう仲良くすることはできなさそうだよな…。
なんか根に持ってそうだし、この人。
ま、そりゃそうだよな。
どんな理由にせよ弘幸が悪かったのに、強烈な一発くらった上に、悪しき
様に罵倒されたんだから。
いやな予感がするよな。
いい予感ってのは当たる事が少ないくせに、なぜか悪い予感の的中率っての
は高い!って事をさっそく、トラブル発生?!な雰囲気になってしまっ
た時、オレは実感する羽目になってしまった…。
弘幸とオレはやっぱり指名なんて早々なくて、廊下に立ちながら、他の席の
ヘルプに行ったり、テーブル観察をしたりしていたんだけど、うらやま
しくも、弘幸に指名が入った!
「弘幸さん、場内指名入りました。13番テーブルお願いします」
ボーイに言われて、弘幸はため息をつきながら、その席に行った。
場内指名。
入店してすぐにお客様がホストを指名するのが本指名で、
まぁほとんどの客がいちいち指名を言わなくても、誰かの客だとボーイ
たちが知ってるんだけど、席についてから、新しく入ったホストとか、
今日はいつものホスト以外にも誰か呼びたくなったりした時に、かける
指名方法で、今回、弘幸は…なんと、武志さんのテーブルから場
内をもらっていた。
前言撤回!
うらやましくなくなったぞ!
だって、開店前のいざこざがあったのに、客が偶然にもその相手の弘幸
を場内するとは考え難い。
なるほど、だからため息をついてたんだ。
心配で、弘幸の様子を伺ってみると、客は上機嫌で、弘幸に水割りを勧
めていた。
弘幸も、今回は拒否もせずに、乾杯に応じているようだった。
このまま、何事もなく終わればいいんだけど…。
「勇哉さん、8番のヘルプお願いします」
うーん、弘幸が心配だけど、仕事だもんな!
仕方なく8番に行ったものの、どうも、弘幸が気になって仕方がない!
「勇哉くんだったよね?
先週初めてだったでしょ?どうだった?」
えっと…誰だっけかな?
うーん…。
「もう、すっごいヨッパゲてしまって大変だったんですよ!!」
誰だ?
この顔は見覚えあるぞ!
誰の客だっけ?
「そうなんだ?酔うとどうなるんだろ?
この前は、勇哉くんが酔う前に帰っちゃったから、今日はラストまでい
ようかな?」
「え?オレ酔わないようにがんばるつもりなのに…」
まぁ、名前なんて覚えてなくてもいいか。
とりあえず会話さえつなげれればそれで。
「あはは!それって飲まない宣言?
それって、先輩たちに目をつけられるよぉ」
いや、別に飲まない宣言じゃないけど。
「なんで、飲まないとニラまれるの?」
彼女はオレの質問に、驚きながら答えてくれた。
「だって給料システムで、ボトルを開ければ開ける程、お金になるじ
ゃない?
だから、自分の客のお酒はよりたくさん減らしたいわけよ!
もしかして、この店は売り上げ制じゃなくて時給なの?」
「え?」
そうなの?
じゃあ、自分のテーブルでヘルプが飲むと、それは全部担当のホストの
給料につながるって事?
うーん、売り上げ制とか、時給とか、全然決めてなかったような…。
普通のバイトって面接の段階で決めてるよな…。
「もしかして、決めてないとか?」
オレの顔から伝わってしまったのか、彼女は聞いてきた。
うなずくオレを見ながら彼女は呆れたように、言い捨てた。
「だめねぇ、欲がないって言うか。
最初に決めとかないと、損するかもよ?
まぁ、普通はお店から言い出すはずなんだから、ゴネればなんとかなる
けどね♪」
おお!
売り上げ制ってのは、顧客がいるホストには有利なシステムで、お客が
落としていく金額の何パーセントかが給料になるらしく、時給はふつう
に時給なんだけど、後、もう一つ口座制度ってのがあって、売り上げと
同じ感覚なんだけど、さらにランクアップして、固定客を掴めば、売り
上げ制度よりも割合がアップするらしい。
やっぱ、オレには時給が一番かな?
まだ客だっていないくらいだし。
給料システムについて、色々と教えてもらっている所に、NO2の京介
さんがテーブルに戻って来た。
「ごめんな、お待たせ!」
「お帰り、京介♪」
そうだ!
そういえば、京介さんのお客様だったんだ。
なんだか、直樹さんや京介さんの客ばっかりついてたような気もする。
「何の話してたの?」
京介さんが彼女の隣に座りながら、飲みかけで置かれたグラスに手を
つけた。
「ああ、ココの給料って時給と売り上げだよね?
まだ、決めてないって言ってたから、システムの説明してたのよ!
なんか、初初しくて楽しかったよ」
「ソレって、マスターの仕事なのに、さぼってたのかな?」
基本的に、指名してるホストがテーブルに戻って来ても、オレは席を立
たないようにと、ボーイさんから言われていた。
多分、たくさん飲めよって事だろうけど…。
「まさみは、売り上げ制の方が向いてそうだよな。なんか時給にする
と、その分しか働いてくれなさそう」
ニヤリとニヒルな微笑みをしながら、京介さんのセリフに、まさみちゃ
ん(やっと名前がわかった)は頬をふくらませながら、反論している。
そのときに、
ガタッッッッッッ!
と、何かが倒れる音が、フロアに響いた。
音の方へみんなの視線が集まった。
「あら弘幸くん、大丈夫?
酔ったのかな?」
弘幸が、床にゴロンと転んだままの格好でいるのを、笑いを含んだ声
で、場内指名をかけた女が、言った。
「おいおい、まだそんなに飲んでないじゃないか」
さらに輪をかけるように、武志が言葉を続ける。
あ!やばい!
また、弘幸がキレたらどうしよ。
心配しながら動向を見ていたら、近くの席に座っていた直樹さんが、弘幸に
腕を貸し、立たせながらフロアをグルリと見渡しながら
「しっつれいしました!!
おかげで、今いるお客様がお前のことを憶えたぞ!ちょうどいいから、
自己紹介しとけよ!弘幸」
ドッと笑いが起き、弘幸は頭を下げながら笑顔で、挨拶をした。
「ホントお騒がせてすみませんでした。弘幸です!以後清き指名をお願
いします!」
「選挙運動じゃないって!」
苦笑いしながら直樹さんは、弘幸の肩を抱き自分のテーブルに座らせた。
何事もなかったように、元のにぎわいに戻った途端に、まさみちゃん
は、直樹さんのテーブルを見つめながら、京介さんにつぶやいた。
「あの子、目がすわってた。たいぶ飲まされてるんじゃないの?」
京介さんもまだ、弘幸を心配そうに見ながらうなずいた。
「ああ、ボトル2本くらいおろしてたから、ほとんど弘幸が飲まされて
ると考えたら、やばいかもな?」
ボトル2本??
「あいつ、そんなに酒強くないのに………」
そりゃ多少は飲めるんだろうけど、ボトル2本なんて、そんなに飲ん
だりしたら、急性アルコール中毒とかにならないのか?
心配しながら弘幸に目をやると、ココからは後ろ姿しか見えなかった。
「勇哉さん、お願いします」
ボーイが、オレを呼びに来た。
「すみません、失礼します!ごちそうさまでした!」
まさみちゃんに、お別れの乾杯をして席を立つと、ボーイはオレを更
衣室まで行くように、言った。
「弘幸がかなりやばいから、今日も早上がりにするか?」
更衣室にはマスターがいて、モニターで店内を見つめていた。
「あ!やばい」
モニターを見ていたマスターが、オレの答えも聞かずに、スタスタと更
衣室を出てしまったので、オレは取り残されてしまった。
ぼんやりと、モニターが目に入る。
それと同時にフロアから「いらっしゃいませ!!」のコールが聞こえる。
あれ?
店内に姿を表した小太りな20代後半の女性をエスコートしながら、マ
スターは画面に向かって手を招いた。
え?
オレに来いって事だよな?
ってか、あの客、もしかしてちえりちゃんなんじゃ?
弘幸がアフターした例の女??
ああああああああ、イヤだ!
絶対、険悪ムードがもっとひどくなるぞ…。
武志って案外、執念深いよな、っったく!
すごい、いやぁな気分でフロアに戻ると、マスターから武志と弘幸が場
内をもらった13番にヘルプ行きだった。。。
ちえりちゃんはどうやら、弘幸と武志の二人を指名しているみたい
で、13番テーブルのホストとかぶってしまったので、ヘルプ参上!っ
て事態なのだ。
が、しか〜し!
この客が弘幸を指名したのは武志の陰謀で、その友達であるオレに対し
ては、どんな感情を抱いているのだろうか?
「いらっっしゃいませ!」
にっこりと営業スマイルで席に座ると、女は、オレには目もくれず
に武志の後ろ姿を目で追いかけていた。
うわ、もしかしてベタ惚れってやつですか?
「ちょっと武志さんが忙しいので、その間オレとお喋りでもしませんか?」
「そうね」
と言いつつも、彼女にはまったくその気はないみたいだ。
うーん、会話も弾まないので仕方なく散らかってるテーブルを整理した
り、グラスの水滴を拭いたりしながら、何か会話をさがすしかなかった。
すっげ、気まずい!
ただでさえ、弘幸を酔わせるいやな客なのに、会話すら進まないなん
て、最悪だ。
…………。
…………。
…………。
沈黙のまま、時間だけが過ぎる。
…………。
…………。
…………。
何か喋らないと、こんなに苦痛だとは思わなかった。
一応仕事だし、テキトウにやってるつもりはないんだけど、無言のま
ま、ただ減っていくグラスに水割りを作るだけで、何もできない事が。
やけに重たい時間がゆっくりと流れた。
いつまでこの席にいればいいのだろうか?
ボーイが呼びに来るのを心待ちにしていると、不機嫌な顔して武志が
戻って来た。
「お帰り、武志」
今までむっすりとしていた女は、目が線になるくら細めて笑顔を作り、
イソイソと、新しい水割りを作り始めた。
「どうかしたの?
何か怒ってる?」
不器用そうに作った水割りを差し出しながら、女は武志の変化にビクビ
クしているように見える。
「別に」
まるで時代遅れの亭主関白をはき違えた男みたいに、武志はぶっきらぼ
うに答えた。
何を怒っているのだ?
弘幸とダブル指名なのが、イヤだったとか?
まったく理由もわからないのだろう、女は武志の機嫌を取りたかった
のか、オレの前で弘幸の話題に入った。
「もっと弘幸に飲ませた方がいいの?
それとも、ボトルをおろそうか?」
なにぃぃぃぃぃぃぃ!
ソレってどっちにしても、弘幸に不利なんじゃないのか?
「ボトルをおろしたとしたって、ソレも弘幸に飲ませるつもりなんだろ?
どっちにしても、弘幸をつぶすつもりなんじゃないか!! 」
思わず言ってしまったオレより、このテーブルの主的存在の武志の方
が焦ったのか慌てて姿勢を正し、女に否定した。
「別に普通だよ。ボトルもおろさなくていい」
そう言うと、これでいいんだろ?とでも言いたげに、武志は恐る恐るオ
レを見た。
…………。
もしかしてこいつ、オレの事もビビッてる?
そりゃ、弘幸に一発でやられた情けない男だけど、オレにまでビビる
か、普通?
そんな武志を不信そうに思ったのか、女はさらに、オレをキレさせて
しまった!
「あなたねぇ、さっきから全然仕事してないし、挙げ句の果てにボトル
をおろすかおろさないかは、客の自由なのよ??
それを、何よ!それがホストとしての接客だとでも思ってるの?」
なんだとっぉぉぉぉぉぉぉ!!!
「このクソデブ!何わけわかんねぇこと言ってるんだよ!!
てめぇいいかげんにしろよな。
さっきから態度悪いのはてめぇだろうが!
武志以外のホストと喋りたくないんだろ?
遊ぶ気がないなら、来るなよなっ!」
ああ、止まらない。ったら止まらない。
「客だって言うなら、それなりに遊び方ってのを覚えてから来いっつうの!
ただ、飲んで金払うだけなら居酒屋でもいいじゃねぇか。それをわざわ
ざ高い金払って来てるなら、自分も楽しむ気持ちでいなきゃ無理に決ま
ってるだろ?」
オレの言葉に女は見る見る不細工な顔を真っ赤にさせながら、口をパク
パクさせて、何かを言ってるが、言葉になってない。
「何か言いたい事があるなら、はっきり言えよ!聞いてやらぁ」
「あんたみたいなペーペーじゃ話にならないわ!マスターを呼びなさい
よ!マスターを」
ふんっ!
「お前何してんだよ?」
いつの間にか、弘幸がテーブルの前に立っていた。
「弘幸の友達なの?ホントろくでもないホストばかりね!この店
は!!!」
「勇哉が何かしました?江美さん?」
弘幸は、ヒステリーを起こしてマスターを呼べと叫びまくる女に、優し
く丁寧に、呼びかけながら、彼女と一緒に再び席に座るように促した。
「お客様、新人のホストが大変迷惑をおかけしたようで…すみません。
コチラはお詫びと言ってはなんですが、どうぞお受け取り下さい。」
マスターも新しいボトルを持参して、オレを背中に隠すようにしなが
ら、客の女に謝っている。
ぬわんで!なんで!!
謝る必要があるんだ?
しかも悪いのは、この女なんだぞ!
わっけわかんねぇ!
「勇哉、ちょっと来い」
客が納得したのだろうか?
おとなしく、マスターが持って来たボトルを飲もうとしているのを確認
してから、オレはマスターに襟首を捕まれて、そのまま更衣室に連行された。
「何をしてるんだ…。
客を怒らせてどうする?」
「あんなの客でもなんでもねぇよ!
たんなる嫌がらせじゃないか!」
まだ、怒りが収まりきらないオレに、マスターは諭すように、ゆっくり
と言葉を重ねる。
「嫌がらせを軽く流せるようにならないと、接客ができているとは言えな
いんだ。
しかも、弘幸の方がはるかにお前より被害者なのに、アイツはちゃんと
仕事してるだろ?
なのに、その努力をお前が潰したんだぞ?」
「…………。
そうだけど、でも弘幸を理不尽にいじめてるだけの女に、それを煽って
る武志にむかついたんだ!」
まったく納得いかないオレに、呆れながらも、マスターは何度も何度も
言い聞かせた。
「お金を払って飲みに来てるんだから、みんなお客様なんだよ。
お前が、客の定義を決める権利なんてないんだからな」
そんなのわかってるさ。
でも、許せなかったんだ!!!
「ほら、佳織が来てるから、2番に行って来い」
全然不機嫌だったオレは、マスターに言われてモニターに目をやる
と、そこには佳織と和美ちゃんが写っていた。
いつから来てたんだろうか?
もしかして………。
オレの疑問は的中していた。
「いらっしゃいませ」
佳織の顔を見ると、佳織は優しくいたずらっぽい顔を作った。
「やっちゃってたねぇ。新米ホストくん」
やっぱり見られていたのね…。
「ま、確かに勇哉くんの言うとおり楽しむ気持ちって大切だと、私は思
うわよ」
「ありがとう、ナイスフォロー!!
自分でも間違ったことを言ったつもりはないけど、でも、マスターに
も注意されるし、ちょっと理不尽な気分だったんだ」
やっぱり佳織が大好きだ!!
「で、どうしてあんな事になってたの?」
和美ちゃんは、興味津々に目を輝かせながら聞いてきた。
「もしかして楽しんでない?」
オレが怒られるの…。
「まっさか!でも、興味はあるよね?」
佳織も和美ちゃんにうなずいた。
「…別にたいしたことじゃないよ」
と言ったものの、完全に酔っぱらいな弘幸がテーブルに顔を出した。
「あれぇ?和美ちゃんらぁ」
さっきよりも数段アルコールの入った弘幸は、ろれつもあまり廻らな
い感じで、ニコニコしながら、席についた。
「コレが原因か…」
ポツリと和美ちゃんのつぶやきに、佳織はまたまたうなずいた。
「コレしかないでしょうね。」
チラリとオレを横目で見ながら、そうでしょ?と目が言ってい
る…。
「だって、オレってば友達思いだから、つい…ね」
「友達思いならこんなに酔う前に、なんとかしてもらいたかったわ」
ため息混じりに、おしぼりとウーロン茶を頼みながら和美ちゃんは弘幸
の顔をソファにもたれさせた。
「いつになったら、みんなで楽しくルージュで飲めるんだろうね…」
佳織は笑いながら、洒落にならないような事を言った。
う〜ん、ホントいつになったら、そういう日が来るのだろうか??
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