SWEET GIRL
SWEET GIRL

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スイートガール
 気が付いてしまった。
今度こそ、本気だ。
もう、これ以上待てない。
予定ではもっと先に迎えに行くつもりだったのに………。
 どんな男がいても、佳織はオレを愛してると信じていた。
オレがそうみたいに、アイツも淋しくて一人で待っていられないだけだと。
でも、他の男に抱かれてるのかと思うたびに、嫉妬する気持ちも確かにあ
った。
  オレじゃない胸に甘える佳織を想像するだけで、殺してやりたい独占欲
が芽生える時も………。
でも、オレにはできなかった。
 まだ、ちゃんとアイツの望む形で迎えられないと知っていたから。
現実的にちゃんと佳織一人養えるようになるまで、このままの関係でいた
いと思ったのは、オレの一方的な我が儘だったのだろうか?
 待っていてくれと、何度も言葉にしないと、伝わらないのか?
………多分、アイツは何を言っても信じやしない。
オレの言葉は彼女の耳に届くと、威力が半減してしまう。
 ホントはわかっていたのかもしれない。
いつか彼女が逃げてしまうのを。
でも、考えたくなかったし、認めたくもない。

 携帯のメモリ0番は永遠に佳織の番号を登録し続けるつもりなんだ。
ディスプレイを見つめながら、佳織のメアドで決定ボタンを押した。
メールを送れば返事をくれる。
電話をすればコールバックしてくる。
打てば響く、そんな関係に満足していたわけじゃないけれど、甘えていた
のは確かだ。
 綺麗な女も、お金持ちな女もオレを好きだと言ってくれるけど、佳織じ
ゃなければいけない。
気が付くと、佳織を求めるオレがいる。
オレを愛してくれる女がオレの好みの女なのに、なぜ、逃げようとする佳
織にこんなにも惹かれてしまうのか、わからないけれど、淋しい時や、悲
しい時は決まって佳織を思い出して会いたくなってしまう。
 オレに必要なのは佳織だと思い知らされたのは、ホストになってからだ
った。

思わせぶりなセリフや仕草、女はそんなオレの態度に金を払ってくれる。
  もちろん、中には本気でオレを愛してる客だっているのはわかっている
のに、佳織だけが欲しいのはなぜなんだろう?
答えは簡単だった、好きだから。
オレが好きなのはどんな客でもなく、佳織って人間だけだ。
なのに今、アイツをホントに失いそうな不安が心をかき乱している。
どれだけ離れていても、違う相手と夜を過ごそうとも、佳織はオレの事を
愛しているんだと信じていたのに………。
 直樹と同棲していた時ですら、こんなに不安にならなかったのに、勇哉
の存在がオレを脅かしている。
 あの若い情熱で迫られれば、よろめいてしまうだろう。
激しく、佳織だけを求めるような恋愛はもう、オレにはできない。
しがらみがたくさんあって、将来も考えなきゃいけなくて、恋愛だけにの
めり込めない今、勇哉の若さがうらやましくもある。
 佳織がオレの隣には戻らないと言った時に、強引にでも自分のモノにす
れば良かったのだろうか?
何の保証もない将来に、佳織を巻き込むだけなのに?





  「おはようございます」
スーツに着替えて出勤すると、後輩達がオレに挨拶してくる。
いつからNO1を守り続けているのだろうか?
もう覚えていないけれど、オレはこの辺りじゃ一番の老舗で、客層もかな
りの上ランクのEDENで頑張っていた。

もう、目指すホストもいなくなって、自分で店を出した。
経営者なのに、、まだ現役ホストとして働いている。
どんな結果を出せば納得するのかわからないけれど、オレはまだ満足して
いない。
NO1を守るだけじゃダメなんだ。
早く、上へと登り詰めなきゃ。
なのに、その目標が見えない。
手探りで、不確実な一歩を進みながら今日まで来てしまった。
こんな事を考える日は、決まって佳織に会いたくなる。
「今日は同伴じゃないんすか?」
「いや、入ってるからもうすぐ行くよ」
毎日毎日、何度もメシを食う。
メシだけならまだいいけれど、酷い時には出勤前とアフターで違う相手を
抱く事だってある。

「隆史!ごめん、待った?」
客の一人が店の前でまだ日が明るいのに、もうしっかりとメイクをして駆
け寄ってくる。
「時間通りじゃん、オレが早く来ただけだよ」
自然と笑顔がこぼれる。
もう職業病だよな、ココまでくれば。
「ホント?」
「ああ」
着飾った女の肩を抱きながら、夕食に行く。
「今日はね、イタリアンが食べたいんだけど、隆史は平気?」
「いいね、イタリアン。じゃあそうしよう」
同伴前のご飯は営業といえど、客にとってはデートだから、オレが支払い
をする。
まるでホントの恋人同士のようにエスコートして、会話を楽しむ。
 そして、彼女たちが喜ぶような会話、時には駆け引きすらして、わざと
怒らせてみたり、嫉妬させてみたりしながら、疑似恋愛を繰り返す。
 心のどこかでそれがホストの営業だとわかっている客もいれば、深みに
はまる女もいる。

店に着くと、同伴客以外にもうすでに3組の指名が入っていて、いちいち
その席に挨拶に出る。
もちろん、オレが他の女と同伴してるのを気付いていて、「仕事」だから
と割り切る客もいれば、あからさまに嫉妬してる客もいる。
生身の人間を相手にしてるんだから、セオリーやマニュアルなんて関係な
く、臨機応変に対応しなきゃならない。
 だけど、気が付いたら頭で考えるよりも本能で対応できるようになって
いた。
 相手によって、同じ場面でも違うセリフや態度が、自然と出る。
コレは営業病なのか、本来オレが持っていた特質なのかわからないけれど、
どうすれば女の子がよろこぶか、知っている。
 なのに…………。
佳織だけはオレの意に反して、怒ったり泣いたりするんだ。
「はぁぁぁ」
仕事も終わって、アフターの約束が入ってるにもかかわらず、オレはまだ
店のソファで休憩をしていた。
「どうかしたんですか?」
後輩の翔麻は売り上げNO3まで上り詰めたのに、今だにオレのパシリみ
たいに顔色を伺おうとする。
「いや、別に」
 一度は別れた二人がヨリを戻したのはオレがきっかけを与えたからだ。
そんなつもりはなかったのに、オレのせいで佳織と勇哉は再びつき合いだ
した。
 そして、もう手の届かない世界で、二人は恋愛している。
佳織はアレ以来、どこのホストクラブにも顔を出していないみたいだし、
噂すら聞かない。
 このまま、黙って奪われていくのか?
何もかもを投げ捨てて、佳織を求めれば、今なら間に合うのかもしれない。
 でも、できない。
アイツを取り返しても、また淋しい思いをさせるだけだから………。
他の女なら簡単にいくのに、どうしてわざわざ、佳織なんだろう?
あんなに世話のかかる女なんか、どこがいいのだろうか?
 自分でもわからないのに、思い浮かぶのは、泣き顔ばかり。
見飽きる程笑顔を見ていたのに、泣き顔ばかり思い出してしまう。
潤ませた瞳を見ると、すごく愛おしく、オレのせいで泣いている佳織はま
るで極上の麻薬のようにはまってしまう。
 もっと泣かせたい衝動と、抱きしめてあやしてあげたいジレンマ。
もう、アイツを泣かせるのはオレじゃない。
 その事実が許せない。
やっぱりオレにはアイツが必要なんだ。
どうしても、佳織じゃなきゃいけない。
 どうすれば戻って来るのだろうか?
だけど、やっぱり心のどこかでまだ信じている自分がいる。
佳織は今でもオレを愛しているんだと。
マジ、情けないよな。
  オレは佳織一人を養うために、頑張ってきた。
学生時代、若さ故の情熱でアイツをたくさん傷つけていたから、再会した
時は本気で幸せにしてやろうと思っていた。
何もかも、佳織が望む幸せをオレが手に入れて与えてあげようと………。
 そのために必要なのは確かな収入と、安定した未来。
だから頑張って働いた。
例えどんな相手にでも営業した。
そう、オレが高校中退になった原因である女ですら、営業をかけた。
ボロボロになるまで店に通わせて最後は知り合いのソープに売った。
 本来オレは、情なんてなかったんだ。
女なんていつでも自由に見繕えたし、一人に執着する必要もなかった。
そんなオレを変えたのは佳織だ。
  長続きした女は数人いるけれど、佳織だけは何度も別れを繰り返した。
そしてそのたびに、アイツのオレへの愛情の大きさを思い知ったんだ。
佳織以上に、オレを愛してくれる女なんていない。
いつもヘラヘラと笑っているだけに見える女なのに、その中に秘める情熱
は他の女の比なんかじゃない。
誰よりも激しく、誰よりも深くオレを愛してくれている。
誰も、愛し方も愛され方も教えてくれやしなかったけれど、オレの中で理
想とする恋愛は佳織との恋愛だけなんだ。
あんな風にオレを愛してくれる佳織を、オレも愛したいと思ったのが、始
まりだ。
 そう願った時、すでにもうオレは佳織を愛していた。
だから、あいつが安心して生活できるように、オレは準備をすることにし
た。
いつまでもホストなんかしていたら、佳織の心は嫉妬で焼け尽くされてし
まうのがわかっっていたから、早くもっと大きな経営者になるために、頑
張ってきた。
もっと、もっとビッグになってから、彼女を迎えようと…………。
  オレの店の名前は「perfume」だ。
パヒューム。
香水。
オレと佳織を付き合わせてくれたのも香水。
それに、カオリって名前ですら、オレには愛しくて、店名にするのはコレ
しかないと、だいぶ前から決まっていた。
  だけど、オープンセレモニーに佳織を呼ぶことはできなかった。
やっと一歩前進したのに、ソレを一緒に喜んで欲しい相手は、来なかった
………。
 引き裂かれそうな思いがする。
佳織は、今、どうしているのだろうか?
会いたい。
どうしても、会いたい。

 今度こそ、絶対に離さない。
まだ幸せにはできないかもしれないけど、もう2度と離さないから………。
あとがき
コットンボーイの途中だけど、カップリングアンケートのコメント等で
二人の続きが気になるとの意見が多かったので、先に更新しちゃいました
SWEET GIRLは一応コレだけです(笑
また、続きを書きたいとは思ってるけれど、今の所時間がなくて無理です。
コットンボーイの続きは、「ダブルボーイ」で、その後の佳織と勇哉
と隆史が絡んでます(今頑張って書いてます)
ではでは、またお会いできる事を祈って!!!!!!!
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誤字脱字:




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