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クリスマスドリーム
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少し早いプレゼント 正しイヴの処方箋 クリパ・コンパ

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少し早いプレゼント
〜隆史編〜 
「もういいっ!!」

薫子は彼の腕に絡めていた自分の腕を勢いよくはずすと、そのまま回れ右をして、今まで歩
いた道を駆け出した。
「薫子!!おいっ!!」
なんで、私はそうなんだろうか?
毎回毎回、肝心な時に喧嘩してしまう。
今日だって明日のイブのために、二人でお揃いのプレゼントを買うつもりだったのに…。
でも、アイツが悪いんだから!!
せっかくクリスマスイブは二人で、楽しくパーティしようと思ってたのに、バイトなんか入
れてさぁ。
9時半からデートって何よそれ?って感じじゃない!!

ああ、せっかくの楽しいムードがブチ壊しよっ!!
イライラしながら、歩いていると、不意に誰かにぶつかってしまった。
ガチャン!
と、派手な音をたてて、携帯が落ちた。
「あ、ごめんなさい………」
薫子は慌てて、相手の落とした携帯を拾い、その人に渡そうと下から目線で相手を追った。

うわ…。
むせかえる程の香水の匂いに、ブラックのロングコートの下からチラリと見えるのはダーク
カラーのスーツ。
見るからにホストって感じだよね。
どんな顔してるんだろ?

嘘??
思わず息を飲んでしまった。
だって、柔らかそうな少し脱色された髪から覗く瞳は、鋭い三白眼。
うっすらと笑みすら浮かべている唇の薄い事。
芸能人顔負けの美形だ。
化粧なしで、ここまで男前って人生の中で見た事ないかも?

つい、見とれてしまって、拾った携帯をギュッと握りしめていた薫子に、ホストはきつい印
象の顔とは正反対の優しいテノールで話しかけた。
「ありがとう、拾ってくれて」
あっ、がっしりと握りしめていた携帯を慌てて薫子はホストに渡した。
「急いでいたみたいだけど、大丈夫?」
「別に急いでいたわけじゃ…。
ただ、イライラしてたから足早になってただけなんです。ホントごめんなさい」
ああ、恥ずかしい。
きっと私、アイツに対する怒りで凄い形相して歩いてたんだわっ。
「女の人はあんまりストレス貯めちゃダメなんだって。
段々、眉間にシワが出来るそうだよ。
せっかくかわいい顔してるのに、笑ってる方がいいじゃん」
………。
さすがホスト!!
歯の浮くようなセリフをしゃあしゃあと言えるよ。
でも、かわいいって言われたのって何年ぶりかしら?
アイツとつき合い出してから、もう数年。
そりゃ、最初の頃はアイツだってかわいいだの、好きだの色々とうれしい事も言ってくれた
けど、今じゃトンとご無沙汰。
私だって、タマには気の利いた言葉の一つくらい欲しいわ。

「あなたこそ、急いでいたんじゃないの?
ごめんなさいね」
「いや、実はドタキャンされたんだ」
そう言いながら、スーツの内ポケットから彼はパール光沢のある上品なチケ
ットと取り出した。
「何それ?」
「店のオーナーさんが気が早くてさ、今日からクリスマスパーティしてるん
だけど、それの前売りパー券。
お客様の一人が予約してくれてたから、取ってたんだけど来れなくなったって連絡あってさ。
そうだ!もし時間あるなら来ない?」
え?
だって、ホストクラブってかなり高そうだし、今日はプレゼント買うためにいくらか多めに
財布に入れて来たけど…。
いくらくらいするんだろ?
このチケット。
彼が持っているチケットを覗き込むと25000円と明記されている。
「ごめん、ステキな誘いだけどちょっと無理だわ…」
私が言いたい事を察してくれたのか、彼はニッコリと微笑んでうなずいた。
「コレ、君にプレゼントするよ。
どうせ払い戻し効かないんだし、活用した方がいいじゃん」
そんな!!
いくらなんでも初対面の人からこんなプレゼントをもらうなんてできないわよ。
私だって、それくらいの常識を持ち合わせている。
薫子は左右に首を振って、曖昧に断った。
「じゃあさ、携帯を拾ってくれた御礼なんてどう?
オレにとってこの携帯は仕事のすべてだからさ…それ以上の価値があるんだ」
う〜ん、こんな男前に強引に誘われるなんて、気持ちがいいわ。
薫子は彼の好意をありがたく受け取る事にした。
「じゃあ、行かせてもらいます」
「お連れ致します」
彼はまるで騎士がお姫様にするように私の手を自分の手で少し持ち上げるようにして小さく
一礼をした。
触れた指先が冷んやりとしていた。
なんだか、すごくくすぐったい気持ち♪
「私、薫子って言うんだけど、貴方はなんて名前なの?」
手をつないだまま、彼は店へと誘導してくれた。
「へぇ、薫子ちゃんって言うんだ。ステキな名前だね。オレは隆史だよ。」
ビルのエレベーターに乗って、4階につくと、クラシックな趣の重厚なドアを開けて、彼は
レディファストで私を中へと誘ってくれる。
なんか、ホントすごいなぁ。
こんな風にレディ扱いされるのって、凄く気持ちがいい。
「いらっしゃいませEDENへ!」
中に入ると、そこはまるで別世界。
暗く落とされた照明に、スポットライトを浴びるように設置されたピアノの生演奏がクリス
マスソングを奏でていて、数え切れない程のロウソクが主な室内照明になっている。
ピアノの横に置かれている大きなツリーも部屋を明るくするのを手伝ってい
るようにチカチカとその存在をアピールしている。
「凄いね、高級レストランにでも来た気分だわ」
「そう言ってもらえたら、裏方さんも喜ぶよ。
昨日まで普通に営業してたから、半日でクリスマス仕様にするの大変みたいだったから」
入り口から、ドアまで隆史くんはエスコートをしてくれた。
薫子がコートを脱ごうとすると、スッと背後に立って、コートを優しく受け取って、サンタ
の衣装を着たボーイさんに渡す。
「ちょっと、くつろいでてくれる?
オレもコート脱いでくるから」
うすぼんやりとした明かりの中で、彼の美貌はさらに際立って見えた。

まもなく、彼は両手にカクテルの入ったグラスを持って戻ってきた。
「クリスマスカクテル。
甘めらしいから、飲みやすいと思うんだけど、お酒は大丈夫?」
「うん、大丈夫」
薫子の返事を聞いて、隆史はグラスを目前まで持ち上げるとニッコリと笑顔を作った。
「君の瞳に乾杯!!」
ゲッ!
かなりベタなキザなセリフ。
どうしよう、もしかしたら私とんでもない所へ来たのかしら?
ちょっとひいてしまった薫子を、クスクスと笑いながら、隆史は優しい目をした。
「びっくりしただろ?
オレだって真顔でこんなセリフ言わないって!!
あんまり緊張してるみたいだったからさ、笑ってもらおうと思ったんだけど、ひかせちゃったみたいだな」
なんだ、そうなんだ。
びっくりした………。
ずっとあんな調子で会話されたんじゃあまりに寒すぎて、時間をもてあましてしまう。
 でも、凄いなぁ。
緊張してる事を見抜いて、それをほぐそうとしてくれるなんて、やっぱり彼
ってホストなんだよね。
「ありがとう、大丈夫だよ。
今はまだ緊張してるけど、すぐに慣れるから」
「そっか。じゃあ今度こそ、ホントに乾杯!」
隆史くんの持っているグラスに、薫子の持っているグラスを合わせた。
そのままグラスを口に運ぶと、甘酸っぱい味が広がった。
女性客用に作られた甘いカクテル。
サービスの一つ一つが、女性の事を十分に考えてるのが伺える。
「なんか、想像していたのと違って、みんな楽しそうだね」
やっと、薄暗さにも目が慣れて、落ち着いて辺りを見回すと、どのお客さんも楽しそうにして
いる。
「そりゃ、パーティだしさ。
薫子ちゃんも楽しんでくれたら、うれしんだけど」
「そうだね!
せっかくプレゼントしてもらったのに、楽しまなくちゃもったいないよね!」
勢いを付けるために薫子は、カクテルグラスをグイッと飲み干した。
「お酒、飲めるんだ。
じゃあ、水割りにする?
ハウスボトルだから、心配しなくていいよ」
隆史くんは片手をあげて、ボーイに合図を送ると、すぐにトレイにボトルと水割りセットが
運ばれた。
「隆史くんてさ、普段でもそんなに優しいの?」
こんなに至れり尽くせりじゃ、彼女も幸せだろうな・・・アイツとは大違い!!
「薫子ちゃんの彼氏は冷たいの?」
隆史くんは私の薬指にはめられた恋人リングを指しながら聞いた。
目ざといなぁ。
こんな所にチェック入れるなんて。
「別に冷たくはないんだけどね…」
気が付いたら私はすっかり彼のペースに引き込まれて、今まで友達とかにも愚痴った事のな
いような相談をしていた。

「…で、今回はせっかくのイヴなのにバイトを入れてしまったんだ、彼氏」
「そうなのよ、まぁ、仕事だから仕方ないってわかってるんだけどね、でもつき合いが長く
なると段々ラブラブムードってなくなって、馴れ合いになってしまうから、
せめてイベントくらいはって思ったんだ………」
「なんか、耳が痛いなぁ。
オレも数年前に、同じ事したんだ。
ホストってさ夜から仕事だから、全然デートなんてする時間もなくて……。
しかも、こんな日に休んだりしたらお客様に『彼女います!』って宣言してるみたいだしね」
薫子の意見に、一つ一つうなずきながら、時折自分の意見を言ってくれる隆史。
「で、彼女とはどうなったの?」
「あはは、ふられちゃった。
おかげで、毎年淋しいクリスマスを送るはずだったんだけど、意外と仕事が
楽しくて、なんとかなってる」
ふられちゃったって…そんな。
「それくらいの事で終わっちゃったの?」
薫子は自分が彼氏と喧嘩した事も棚に上げて、隆史の経験談を聞いた。
「それだけじゃないよ、色々あったんだけどね。
でも、今薫子ちゃん『それくらい』って言ったじゃん。じゃあさ、彼氏の事も許してあげたら?」
あら、切り替えされてしまった…。
わかってるのよ。
自分でも、些細な事で切れてしまったなって。
でも楽しみにしてた分、アイツはそうじゃなかったのかな?って思うとくやしくて。
「男ってさ、やっぱり最後には女の人の面倒を見てあげたいって思ってるんだよ。
だから、第一に働く事を考えてる彼氏って、本気で薫子ちゃんが好きなんだと思うよ。
今頃きっと、携帯電話を持って悩んでるよ。
どうやって、謝ろうか」
隆史は、自分のポケットから携帯を取り出して、困ったような表情を作り、
物まねをして見せた。
それが、リアルにアイツと重なってしまって、薫子は思わず吹き出してしまった。
「あはは!そうかも!!」
アイツと隆史くんは全然顔は違うし。比べる方が失礼なくらいなんだけど、でもやっぱり同
じ男としての意見って有り難いなぁ。
「でもさ、男の子って意地っ張りなんです」
携帯をパタンと閉じて、ポケットにしまいながら、隆史くんは今度は真面目な表情を作った。
「どういう意味?」
「悪いとわかっていても、素直に謝れないんだな、コレが」
ああ、なんとなくわかる。
アイツって、いつもそう。
私を怒らすだけ怒らせておいて、すごく反省してるみたいに、シュンとした
顔してるくせになかなか謝らない。
結局、拗ねてるアイツの姿がかわいくて、ついつい私から許してしまう。
「仕方ないっか。今回も私が折れてあげるとしようかな」
薫子の言葉に、うれしそうにうなずきながら隆史は最後にもう一言付け加えた。
「今後はわからないけど、せっかくのクリスマスだもんな。
どうせなら仲良く楽しくした方がお得だよな」
薫子は大きく隆史の意見に賛成しながら、席を立った。
「そろそろ帰るは。アイツに電話してあげたいし。
今日はありがとうね、すごくスッキリした」
店を出て、エレベータが4階まで上ってくるのを待ちながら、隆史は唇だけ
を動かして、感情のないニヒルな笑顔を作った。
「また喧嘩したり、イライラしたらココにおいでよ。いつでも待ってるから」



隆史くんが私にくれたプレゼントはパー券なんかじゃなくて、素直になって些細な事を許せ
るような気分と、やっぱり私にはアイツが一番だって認識した事かもしれない。
そして、最大のプレゼントは………。

「もしもし薫子だけど、明日バイト終わってからでもいいから、デートしようね」


アイツとの仲直り!!





         終わり あとがき クリスマス企画第一弾!お気に召していただけましたでしょうか? 隆史への伝言やメッセージなんかはキャラ掲示板でうけつけてます♪ 隆史もよろこぶのでどんどんカキコして下さいね。 明日は貴方をルージュのパーティへと誘います。 またドリーム小説になってますが、お嫌いな方はそのまま無記名で お願いします。 それでは、ステキなイブを!!
2004年のクリスマス企画で、ドリーム小説になってました。
ホスティシリーズ
ホスティボーイもよろしく♪




2004-2005©白雪姫-hime-





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