出会いは最悪だった。
近所の人とも会話もなく、引っ越ししたばかりの私は仕事の帰りにコンビ
ニで、虚しく一人分の夕食を買った。
その帰り道、前方には若い男の子が携帯でお喋りしながら歩いている。
治安が悪いとか、幽霊が恐いとかじゃなくても、夜の一人歩きって、や
っぱり女としてうれしいモノじゃないから、その彼の声が頼もしく感じて
しまったのは、その直後に後悔に変わってしまった。
「今さ、オレつけられてるんだ」
深夜と言ってもまだ夜の11時。
今、この道を歩いてるのは私と彼だけ。
二人の距離は3メートルほど空いている。
コツコツと鳴り響くハイヒールの音に混ざって、彼の電話でのお喋りが軽
く聞こえる。
「うん、マジウザイから、ちょっと注意してくる。じゃあな」
そう言って電話を切った彼はおもむろに振り返り、私の方へと歩み寄って
来た。
「あのさー、こういうの困るんだよ」
キョロキョロと辺りを見渡したものの、やっぱり私しかいない。
じゃあ、私に話しかけてるんだよね、この子。
うーん、よく見ると男前。
いや、美形ってより、かわいい感じ?
色も白くて、少し長めな茶髪から覗く目も色素が薄いみたいで茶色かな?
暗いからよくわかんないや。
「聞いてる?」
「………困るって、何が?」
せっかくのかわいい顔を迷惑そうに歪めながら、怒っている彼。
初対面なはずだけど、どこかで見覚えがあるような気がするのはなぜ?
「ストーカーって言うの、わかってる?」
は?
「何で私がストーカーなのよっっっ!
失礼ね、家に帰る道なの。
だいたい、自惚れすぎじゃない?
あなたの後ろを歩いてたら、みんなストーカーになるわけ?!」
思わずむかついて、語調がきつく怒鳴るものの、言ってる間に気が付いた。
彼、芸能人だ。
テレビで見たことある。
確か、BEEN事務所の何とかってグループの一人。
「え?」
今度は彼が驚く番だった。
思い切り怒鳴られて、面食らっている。
口を半開きにして、ポカンとしているその表情ですら、かわいらしい。
「ごめん、私、君の名前知らないけど、芸能人だってのはわかった。
怒鳴ったりして大人気なかったね、でもいきなりストーカー扱いされたら、
やっぱり気分悪いよ。
とりあえず、私はあなたのファンでも何でもなくて、ただ、ホントに帰宅
途中なの。
だから、もういいかな?」
ね?最悪の出会いでしょ。
この後日、またコンビニで彼に再会したとき、きちんと謝ってくれて、ホ
ントは誠実な子だなぁって思ったの。
それから、私たちは何となく仲良くなって、今に至る。
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